米ドル高・円安終了の目安は

米ドル高・円安が続いている。この米ドル高・円安は、遠巻きに見る、言わば「鳥の目」の見え方と、近づいてみる、「虫の目」の見え方では違いがありそうなので、今回はそれについて述べてみたい。

まずは「鳥の目」の見え方。図表1は、米ドル/円の5年MA(移動平均線)かい離率だ。これを見ると、1980年以降の米ドル/円は、過去5年の平均値である5年MAから±30%の範囲内を循環してきたことがわかるだろう。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率 (1980年~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

足元の米ドル/円は5年MAをまさに30%上回ろうとしている。今までの経験からすると、米ドル高・円安は最終局面にあると言えそうだ。それが、遠巻き、「鳥の目」からの米ドル高・円安の見え方ということになるだろう。

ちなみに、足元と同じように、5年MAかい離率が±30%前後まで拡大したのは、今回と同じプラス方向では1998年と2015年、そして今回とは逆のマイナス方向では1988年、1995年、そして2011年などがあった。プラス方向へのかい離は米ドル高・円安の行き過ぎ、マイナス方向へのかい離は米ドル安・円高の行き過ぎだった。

我々は既に歴史として知っているが、このように同かい離率が±30%前後まで達したところは、結果的には行き過ぎ相場の転換点だった。ただ渦中にいるとむしろ逆で、ここまで行き過ぎた相場が広がると、それは「行き過ぎ」とするこれまでの物差しが役立たない未体験の相場が展開しているのではないかとの見方が強まった。

これまでにそれは特に米ドル安・円高において顕著だった記憶が強い。1995年に1米ドル=80円で米ドル安・円高が転換したケース、2011年に1米ドル=75円で米ドル安・円高が転換したケースはともに、「これは構造的な円高でさらに50~60円まで米ドル安・円高になるだろう」といった意見が増えたが、結果はそうはならず、結局米ドル/円は、「鳥の目」から見たら、これまでと大きく変わらない範囲での循環が続いた。

さて、米ドル高・円安に対してもっと近づいて、「虫の目」で見てみよう。2022年3月以降、ほんの半年程度で30円以上も米ドル高・円安が進んだ動きは、米金融政策を反映する米2年債利回りと高い相関関係で展開してきたものだった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と米2年債利回り (2022年3月~)
出所:リフィニティブ社データをもとにマネックス証券が作成

要するに、「鳥の目」から見ると、いつ終わってもおかしくないところまで行き過ぎた米ドル高・円安となっているが、そこまで米ドル高・円安を引っ張ってきたのは40年ぶりのインフレに直面した米国が、インフレ対策で利上げを積極化したことだった。以上からすると、いつ終わってもおかしくない米ドル高・円安が、ついに終わるのは米利上げが終わる時が目安になると考えるのが基本だろう。