緊急事態宣言が明け、1ヶ月ほど経ちます。街を歩く人の姿が増え、外食、旅行、飲酒を楽しむ姿も見かけるようになりました。カフェにいる人が多くなり、コンビニのイートインも稼働しているのを見ると、随分と生活が元に戻ってきたと実感します。
コロナ禍では、外出や外食、飲み会、旅行、レジャーがしにくくなり、交際費や娯楽、被服及び履物などへの支出が例年より5%以上減っていました。この今まである意味「我慢」していた支出を我慢しなくて良い状態に変わると心配なのが、「支出増」です。この支出増に、私たちはどのように向き合うと良いでしょうか。
増えてしまった支出は、元に戻すのが難しい
コロナ禍では、減った支出があれば、増えた支出もありました。目立ったのは、自宅で過ごすための家具家電、外食を我慢するための少し良い食材、デリバリーなど。マスク、消毒薬などのような日用品代も支出が増えました。
これらはコロナ禍では必要なものとして増えてしまった支出ですが、緊急事態宣言が明けたからと言って簡単に減るものではありません。マスクや手指の消毒などは、感染予防としてこれからしばらく必要とされるでしょう。飲食店もテイクアウト、デリバリーなど営業形態を転換した部分もあり、これらも残っていくと思います。
そしてこのような生活様式に慣れてしまった私たちは、それらへの支出もしながら、今まで控えていたモノやコトへの支出も喜んですることになります。つまり、流れに乗ったままでいると、支出は必然的に増えていくのです。
今は「リベンジ消費」などと言い、今まで控えていた支出を再開させるという商戦も行われています。経済が活発化するためには必要なことですが、家計の維持を考えると、支出が増え過ぎないよう注意しなくてはなりません。
家計管理は現状に合わせてアップデートを
コロナ禍で増えた支出がなかなか減らせないように、家計で当たり前に増えてしまった支出もなかなか減らせなくなってしまいます。アフターコロナの解放感で簡単に支出を増やすと、それが家計の当たり前になってしまうこともあるので、気を付けたいものです。
支出の流れが変わるとき、例えば家族構成の変化や転居のような環境変化、今回のような緊急事態宣言の解除などでは、支出の記録を付けることが大切になります。当たり前で地味なことですが、今の支出の流れがどうなっているのかを知るには一番良い方法です。
そして、記録を振り返り、「今の暮らし方」で必要と言える支出、そうではない支出を見極めていきましょう。暮らしに必要なものも変わってきていますから、「新しい家計を作る」くらいの気持ちでも良いでしょう。
家計を守るときに大切なことは、収入の中で支出が収まることです。以前と収支が同じである、収支バランスが理想の割合である、ということは必要ではありません。収入の中で支出が収まりつつ、ご家族の必要とするモノ、コトへしっかりとお金をかけることができ、さほど必要ではない支出は節約する姿勢が大切です。
コロナ禍では、感染防止の観点からもキャッシュレス決済が増えましたし、ネットショッピングに頼ることも多かったでしょう。感覚的に「お金を払った」「支出を管理する」が後回しになるような状況でもあったように思います。そのあたりを是正していきましょう。支出のコントロールや決済の仕方などは、現状に合わせ、アップデートしていくのです。
消費・浪費・投資を基本にバランスを取る
家計管理は、どのような状況であっても基本は変わりません。多くの家計管理にあるように、費目別で管理をしていくと、食費が増えた、交際費が下がったなど費目による支出割合の変化が見えるでしょう。
しかし、私が勧める「家計の三分法」では、費目による支出割合の変化はさほど重要視しておらず、家計の三分法で理想的な割合を守れていれば支出の仕方は問いません。家計の三分法とは、支出を「消費(生きるために必要な支出)」「浪費(いわゆる無駄遣い)」「投資(貯金、金融投資、自己投資など)」の3つに分類することで、その理想的な割合は「消費:70、浪費:5、投資:25」です(世帯年収800万円程度までのご家庭)。
この「消費」「浪費」「投資」それぞれの中身は、食費、交際費、日用品、交通費などといった費目で構成されているのですが、その配分については、時代や環境、家族構成などその時の状況に合わせて変化させれば良いと考えています。
「今まで我慢したからこれ買ってみよう」というような、一時的な支出は、計画的であれば問題ありません。ずるずると増えてしまっている支出が、どのような意味を持つ支出なのかが問題なのです。
5%を超えてしまう「浪費」になっているのであれば、支出の削減を検討すべきですし、「消費」で削減できないものだと思えば、他の費目を下げてバランスを取りましょう。いかに帳尻を合わせていくか、工夫しながらコントロールをしていくことが大切です。
自分なりの新しい基準で家計全体のバランスを考え、それに向かってコントロールすることを目標にしていきましょう。そうすると、アフターコロナで支出が増えがちな今を、乗り越えられると思います。