政策と値動きの目安
トルコリラ/円は今週に入り下落が拡大、一時は日中の取引時間中に8円台半ばまで続落となった。ただその後は一転して10円まで急反発する場面もあった(図表1参照)。そこで今回は、トルコリラ安は一段落したか否かについて考えてみたい。
トルコリラ急落が広がったのは、すでに改めて説明する必要がないかもしれない。トルコの物価上昇率は前年比で20%程度にも上っている。物価、「モノ」の価値の上昇は、相対的に通貨価値の下落といった意味になる。そんな通貨価値の下落を回避するためにはその通貨の金利を上げる必要があるわけだが、トルコでは今月にかけて逆に3回連続の利下げを行った。
こうした中、名目金利からインフレ率を引いた実質金利は大幅に低下しているので、実際的にはトルコリラを下落させる政策を行っていると言える。通貨安は、輸入物価上昇を通じて普通は物価上昇、インフレを悪化させる。
「物価の番人」である中央銀行が、物価上昇が続く中で利下げを行うことは普通ありえない。ところが、それをやらない中央銀行の責任者は解任されてきたのが最近にかけてのトルコだった。その意味では、皮肉ではなく、実際的にはインフレと通貨安を目指した政策になっていたと言えるだろう。
そんな通貨安、トルコリラ下落が転換するのは、利下げから利上げへの転換が最初の目安になるだろう。それとともに、下がり過ぎた通貨は、反発へ転換する手掛かりを探すのが基本的な習性なので、それももう1つの目安となる。
トルコリラ暴落一巡のプライスアクションの特徴としてとくに以下の2点に注目したい。1つは、これまでの場合90日MA(移動平均線)を3割以上下回ると底打ちしたということ(図表2参照)。そしてもう1つは、安値から大きく反発することで、いわゆるチャート的に長い「下ヒゲ」が出現したということ。
今週9円割れから一転トルコリラ急反発となったのは、無茶苦茶とも言える政策の中でも、すでに短期的な「下がり過ぎ」の限界に達しつつあることを示している可能性がある。
もう1つ、当面の底打ちに共通したプライスアクションは、上述のように「長い下ヒゲ」。例えば、その週の安値から、週末終値が1円以上の反発となる「長い下ヒゲ」が出現した場合、それは当面3ヶ月以上の底打ちの確率が高かった。
以上のように見ると、トルコリラ下落が一段落するかの目安は、利下げから利上げへの金融政策の転換、そしてプライスアクションとしては、トルコリラ/円の週末終値が週内の安値から1円以上といった具合に比較的大きく反発するかに注目してみたい。