米国中間選挙とは

2026年11月3日に米国で中間選挙が行われます。中間選挙とは、4年に一度の大統領選挙の中間に実施される選挙です。連邦議会では、任期2年の下院議員435議席すべてと、任期6年の上院議員100議席の約3分の1が改選されます。

大統領自身は改選されませんが、選挙結果は政権後半の政策運営を大きく左右します。米国では、大統領が行政を担う一方、議会が法律の制定や税・歳出に関する権限を持っています。このため、大統領が掲げる減税や新たな財政支援も、その実現には議会との調整が欠かせません。原則として、法案は上下両院で同一の内容を可決し、大統領の署名を経て成立します。

米中間選挙の最大の焦点

中間選挙は、政権発足から約2年間の政策や実績に対する有権者の評価を測る機会と位置づけられます。最大の焦点は、大統領の所属党が上下院の多数派を確保できるかどうかです。野党がどちらか一方でも多数派を握れば、追加の政策を進めるうえで、野党との妥協がより重要になります。また、上院は閣僚や連邦裁判官などの人事承認にも関わるため、その選挙結果は立法以外の政権運営にも影響します。

投資家にとって重要な点

投資家にとって重要なのは、選挙の勝敗によって、その後の政策の内容や実現可能性がどう変わるかです。仮に与党・共和党が上下院で過半数を獲得した場合には、トランプ米大統領が掲げる減税や政府支出の拡大は企業業績を支える可能性があるでしょう。一方で、財政赤字の拡大やインフレ懸念を通じて金利上昇につながるケースも考えられます。

2026年は選挙前の段階で過去平均を大きく上回る水準にある

政策面の影響を考える前に、まずは過去の中間選挙年に、米国株がどのように推移してきたかを確認しましょう。

図表1は、過去の中間選挙年におけるS&P500株価指数の推移を、前年末を基準に比較したものです。1934~2022年の23回の平均(紺線)を見ると、秋口まではおおむね前年末近辺で推移し、その後、年末にかけて上昇する傾向が確認できます。ただし、個々の年の動きには大きなばらつきがあり、中間選挙年に共通する値動きと捉えることはできません。

2026年の動きも、こうした過去平均とは異なります。春先に下落する場面はあったものの、その後は人工知能(AI)関連銘柄を中心に堅調に推移したことで、図1の直近時点である10月23日には前年末比11.4%の上昇となっています。2026年についていえば、選挙前の段階で過去平均を大きく上回る水準にある点が特徴です。

【図表1】中間選挙年における1年間のS&P500株価指数の推移
出所:各種資料よりマネックス証券作成

このため、過去の平均的な値動きでは、年末にかけて上昇していることだけを根拠に、2026年も同様の上昇を期待することには慎重さが必要です。過去の値動きは参考になりますが、今後の株価を考えるうえでは、足元の企業業績や金利環境、政策への期待がどの程度株価に織り込まれているかも確認する必要があります。

中間選挙後の1年間は、米国株が堅調に推移

では、選挙年の年末までではなく、選挙日をから1年間では、どのような結果となっているのでしょうか。次に、過去の中間選挙後のリターンを確認します。

1950~2022年に実施された19回の中間選挙について、選挙日から翌年同日までのS&P500株価指数の騰落率を確認すると、平均上昇率(図表2青破線)は14.8%であり、その他の年の同様の期間における平均上昇率7.3%(図表2灰点線)を上回っています。過去の実績からは、中間選挙後の1年間は、米国株が堅調に推移してきたことが読み取れます。

ただし、上昇率には約1%から約31%まで幅があります。また、それぞれの時期には景気や金融政策、企業業績なども変化しており、この結果だけで、中間選挙の終了が直接的な株高をもたらしたとは言い切ることはできません。しかし、あくまでアノマリーではありますが、過去19回の中間選挙後1年間のリターンがすべてプラスであった点は特徴的です。

【図表2】中間選挙後1年間のS&P500株価指数の騰落率
出所:各種資料よりマネックス証券作成

選挙前後の値動きにも注意

一方で、注意しておくべき点もあります。過去のデータから、1年後の株価は平均的には上昇する傾向がうかがえたものの、株価変動の大きさを示すボラティリティが大きいこともわかりました。

【図表3】中間選挙年とその他の年の月別ボラティリティ
出所:各種資料よりマネックス証券作成

図表3は、日次騰落率から計算した月ごとのボラティリティを年率換算し、過去の同じ月の中央値と比較したものです。中間選挙年では、7~10月のボラティリティがその他の年を上回り、特に10月は18.2%と、その他の年の12.4%との差が目立ちます。

中間選挙年の中央値は、11月に15.4%、12月に14.7%へ低下しています。ただし、いずれもその他の年より高い水準です。選挙前後で値動きが落ち着く傾向はみられるものの、その他の年と比較すれば、指数の変動率は相対的に大きい傾向にあったと示唆されます。選挙後も値動きの大きい展開となる可能性に留意が必要でしょう。

米国中間選挙の結果:議会構成によって、株価・金利の動きはどう推移するか

米国中間選挙の結果によって、その後の株価や金利の動きに違いはあるかどうかも確認します。図表4では、1962~2022年の中間選挙16回を、選挙後の議会構成に応じて3つに分類しました。大統領の所属政党が上下両院で多数派となったケースをA、野党が下院、大統領の所属政党が上院で多数派となったケースをB、野党が上下院で多数派となったケースをCとしています。

【図表4】中間選挙前後の株価と米10年国債利回り:議会構成別の推移
出所:各種資料よりマネックス証券作成

上段は選挙当日を100としたS&P500株価指数、下段は同日を基準とした米10年国債利回りの変化幅です。選挙前約2ヶ月から選挙後約半年までの推移を示しており、太線は各ケースの平均、細線は個々の選挙に対応しています。

中間選挙後の株価と金利の推移

株価の平均推移を見ると、3つのケースはいずれも選挙後約半年の時点で基準日を上回っています。もちろん、選挙前から持ち直しているケースもあり、上昇が選挙当日を境に始まったわけではなく、また、選挙後に株価が下落する局面を経験した年があることも、細線から確認できます。

一方、金利の平均変化幅は、株価ほど明確な方向感を示していません。選挙後約半年の時点では、Aが約3bp、Bが約29bp、Cが約8bpの低下となっています。ただし、株と同様に平均線の変化が小さいことは、個々の年でも金利が動かなかったことを意味するものではなく、例えばCでは、同じ期間に100bpを超えて上昇した年と低下した年の両方が確認できます。

加えて各ケースの観測数はAとBがそれぞれ4回、Cが8回に限られ、景気やインフレ、金融政策の違いも含まれています。このため、平均値の差だけから、特定の議会構成が株高や金利低下をもたらすとは判断できませんが、過去の傾向を踏まえると、選挙後半年の株式相場は上昇傾向にあり、金利は横ばい圏で推移していたと言えます。

結果次第で財政政策の内容が大きく変わる可能性がある

今回の選挙を評価するうえでも、過去の平均推移に加えて、選挙結果によって政策の内容や実現可能性がどう変わるかを確認する必要があります。特にトランプ米大統領は今回の中間選挙で共和党が上下両院で勝利した場合には、米国民の成人全員に1人当たり5,000ドル(日本円で79万円程度、1ドル158円で試算)の支給を表明しています。

事前の予想や情勢評価では、野党の民主党が上下両院で有利といった報道も見られます。そのため、結果次第で財政政策の内容が大きく変わる可能性が指摘できるでしょう。足元の局面では、金利が財政不安によるリスクプレミアムを背景に上昇しているといった分析もあり、結果がどちらに転んだとしても金利は過去のサンプル以上に変動する可能性が指摘できます。

次の焦点は米中間選挙の選挙結果と政策、金融経済のファンダメンタルズにも留意すべき局面

本稿では、過去の中間選挙年とその翌年の動向をまとめました。あくまで傾向であり、過去の値動きが今回も当てはまるわけとは限らないといった前提が必要ですが、株式については堅調に推移した実績が示されました。

筆者の評価では、中間選挙といった政治イベントの不確実性が消化されたことで、投資家のリスクオン姿勢が高まった一因となった可能性もあると考えています。今回の中間選挙で言えば、共和党が事前予想に反し、健闘する場合には向こう2年間の政策運営がスムーズに進み、一方で野党・民主党の盛り返しにより、個々の政策の議会承認が難航するといったケースが想定されます。

その上で、選挙結果は重要なポイントですが、足元ではAIへの過剰投資やその原資となる企業財務の安全性への懸念、あるいは根強いインフレ率に対応するため、政策金利が高止まりしている点など、選挙以外の外部要因も大きな市場インパクトを持っています。中間選挙のアノマリーとして、前述の傾向を参考にしながら、従来以上に経済動向のファンダメンタルズにも注意を払う必要がある局面だと言えるでしょう。