モトリーフール米国本社– 2026年10月18日 投稿記事より

メモリー半導体業界は歴史的に、製品の差別化が難しいコモディティ市場であり、これまで好況と不況のサイクルを繰り返してきました。新たな技術の登場によって需要が急増すると価格は急騰しますが、その後、新たに供給が拡大することで需給のバランスが崩れ、最終的には価格の急落を招くことが多いのです。

マイクロン・テクノロジー[MU](以下、マイクロン)が急成長しているにもかかわらず株価が冴えない理由の一つはこの点にあります。本稿執筆時点でコンセンサス予想に基づく同社の2027年度(2027年8月期)予想株価収益率(PER)は、5倍強にとどまっています。現在のスーパーサイクル(長期的な好況局面)もいずれ終わりを迎えると予想している投資家もいます。

マイクロンは韓国のSKハイニックス[SKHY]およびサムスン電子と並び、DRAM半導体で世界3大メーカーの一角を占めています。現在、同社はDRAM市場で約24%のシェアを持ち、前四半期(2026年度第4四半期)には売上高の73%をDRAMが占めました。また、同社はNANDフラッシュメモリ市場でも15%のシェアを有し、前四半期には売上高の26%を占めました。メモリー需要が供給を大幅に上回るなか、DRAMおよびNANDの価格の上昇を主因として、マイクロンの売上高は急増し売上総利益率も大きく上昇しました。

AI特需でメモリー半導体が供給不足、価格上昇は長期化へ

現在のメモリー半導体市場は、人工知能(AI)インフラの構築にけん引されています。非常に高価なグラフィック処理装置(GPU)やAIアクセラレーターなどの半導体の性能を最大限に引き出すには、高帯域幅メモリー(HBM)と呼ばれる特殊なDRAMと組み合わせて実装する必要があります。それがなければ、GPUやAIアクセラレーターはデータの処理の待ち時間が長くなり、不稼働時間が増加します。

同時に、AIモデルのトレーニングでは膨大なデータを、フラッシュメモリで構成される大容量のソリッド・ステート・ドライブ(SSD)に保存する必要があります。メモリー半導体大手3社はHBMに注力し、経営資源の多くを振り向けています。その結果、メモリー業界全体で供給不足が発生し、従来型のDRAMとNANDの価格が急上昇しています。

一方、HBM需要に対応するのは容易ではありません。メモリー半導体メーカー各社は、GPUや中央演算装置(CPU)など先端ロジック半導体の製造に使われる極端紫外線(EUV)露光装置という限られた設備を確保するため、供給をめぐって競争しているからです。同時に、HBMの製造には通常のDRAMの3倍を超えるウェハー生産能力が必要になります。そのため、HBMへの生産シフトが進むほど、一般的なDRAMの供給は圧迫されやすくなります。そのためSKハイニックスは、2027年に業界で史上最大の需給逼迫が発生し、DRAMの供給不足は少なくとも2030年まで続くと予想しています。

中国勢の台頭で市場に供給過剰懸念、マイクロンは長期契約で対抗

とはいえ、投資家の間では、中国からの新たなメモリー半導体の供給によって、市場は予想よりも早く打撃を受けるのではとの懸念を強めています。中国のメモリー半導体メーカーであるCXMT(未上場)は、DRAM市場のシェアを、2025年第2四半期の4%から2026年第2四半期には10%に拡大しました。

同社は、2026年後半に新しいアーキテクチャーを採用したデータセンター向けメモリー製品を投入する計画です。この製品が米国のデータセンターで採用される可能性は低いものの、他の地域では利用が認められ、市場への供給増につながる可能性があります。

さらに懸念材料となっているのが、韓国の業界専門誌による報道です。それによると、2029年はメモリー市場に大量の新規供給が発生し、2030年までに「スーパーサイクルが終了して、下降局面に入る可能性がある」とのことです。

マイクロンをはじめとするメモリー半導体メーカーは、この業界には循環リスクがあることを十分認識しています。そのため、これまでに例のない長期契約を結んでいます。マイクロンはDRAMとNANDの両方について26件の戦略的顧客契約(SCA)を締結しており、2030年までの売上高のおよそ35%をカバーしています。長期契約によって、メモリー半導体業界特有の価格変動や景気循環の影響を一定程度和らげる効果が期待できます。しかし、2030年は韓国の業界専門誌が予測する「メモリー市場が失速する時期」とも重なります。

長期契約が2030年代まで延長、株価上昇の追い風に

こうした背景から最近、投資銀行キーバンクのアナリストから注目すべき重要なニュースが伝えられました。メモリー半導体の顧客企業が現在の契約を2030年以降まで延長する意向だというのです。アナリストは、パソコン大手のHP[HPQ]とIT機器大手デル・テクノロジーズ[DELL]がマイクロンとのSCAを2031年まで延長したとみています。さらに重要なのは、グーグルの親会社アルファベット[GOOGL]がメモリー各社との長期契約を、2035年まで延長する交渉を進めていると伝えたことです。

メモリー半導体のサイクルは2035年まで続かないかもしれませんが、今回の動きは、現在の好況が市場の予想よりはるかに長く続く可能性を示す好材料と言えます。一方、キーバンクは短期的な見通しとして、DRAM価格が前四半期比で15~20%、NAND価格は20%強上昇すると予想しています。また、マイクロンが顧客に、SSD価格の値上げ(前四半期比+40~45%)を提示していると指摘しています。

短期的にメモリー価格の急上昇が続き、株価が割安なことからマイクロンは自社株買いを実施しています。また、メモリー半導体のサイクルは予想をはるかに上回る長さで続く可能性があり、AI銘柄の押し目を拾う好機だと考えられます。

免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Geoffrey Seilerはアルファベットの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、アルファベット、HP、マイクロン・テクノロジーの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、情報開示ポリシーを定めています。