以前にもここで書きましたが、私は民放ドラマが好きです。とはいえ最近はゆっくり観る時間もなかなか取れません。先週末、長い海外出張から帰国し、久しぶりに自宅でゆっくり過ごす時間ができたため、録りためていた(ストリーミング時代においては廃語でしょうか…)2026年春クールのドラマを一気に観ました。

その中で、これまでのドラマとは少し違う余韻を残したのが『月夜行路』でした。最近のドラマは、医療、刑事、弁護士といった専門職をテーマにしたものが多くあります。どれも人を救う仕事であり、その救いは分かりやすいものです。病気を治す、事件を解決する、誰かの権利を守る。視聴者も達成感を得やすい構造になっています。一方で『月夜行路』が描いていたのは、少し違う種類の救いでした。

文学ミステリーなのですが、私には「自己」を描いているように映りました。登場人物たちは迷い、悩み、過去を抱えながら生きています。そんな彼らに寄り添うのが、文学や歴史、そして文豪たちが残した言葉です。 

文学は病気を治すことも、問題を解決することもできません。しかし、人を前に進ませる力は持っているのかもしれません。考えてみれば、私たちも日常の中で似た経験をしています。誰かの何気ない一言を何年も覚えていたり、一冊の本に励まされたり、歴史上の人物の生き方に勇気をもらったりすることがあります。誰かの物語を通じて、自分自身の人生を見つめ直すこともあります。

実は私は、子どもの頃から本を読むより、外で遊んだり人とおしゃべりしたりする方が好きでした。情報も自分で調べるより、人に聞いた方が早いと思っていたくらいです。そんな私が、このドラマをきっかけに文学に興味を持ったのは少し意外でした。

『月夜行路』が伝えたのは、「あなたはあなたのままで良い」ということでした。人にはそれぞれの物語があり、それぞれの歩み方があります。誰かと比べる必要はなく、自分の人生を生きればよい。人は合理性だけで生きているわけではありません。だからこそ、時代を超えて物語が読み継がれ、語り継がれてきたのでしょう。私も、これからも、自分の物語を自分らしく紡いでいきたいと思います。