先日、葛飾北斎の晩年の代表作「八方睨み鳳凰図」を実際に観る機会がありました。88~89歳で描かれたとされるこの大作は、天井いっぱいに翼を広げた鳳凰が、どこから見上げてもこちらを見つめているように感じられる、不思議な迫力を持つ作品です。
北斎は90歳まで生きた、江戸時代には稀有な長寿の画家でした。それでも、「あと五年、いや十年生きられたら真の画工になれるのに」と願い、「一点一画が生きるようになる境地を目指した」と伝えられています。
北斎は、生涯をかけて何を追い求めていたのでしょうか。その答えは分かりません。しかし、「まだ足りない」と言い続け、理想を追い求めた姿勢そのものが、時代を超えて私たちの心を打つのだと思います。
昨日、ある方から「会社の方向性や目指す姿を語るときは、小学生にもわかるように」というアドバイスをいただきました。その言葉を聞いたとき、不思議と北斎のことを思い出しました。難しいことを難しく語るのは、それほど難しくありません。本質を見失わず、誰にでも伝わる言葉にすることは、思っている以上に難しいものです。
今は、誰もが簡単に発信できる時代です。SNSは、考えや人柄などを伝える有用な手段でもあります。一方で、リーダーの発信に触れたとき、私が知りたくなるのは、その人がどれだけ忙しかったかではありません。どんな景色を目指しているのか、です。そして、そのために何をするのか。リーダーという立場だからこそ、その思いが伝わる発信であってほしいと、私は思います。
北斎は80歳を超えても、「まだ足りない」と思っていました。私も、まだまだ道半ばです。私たちは何者でありたいのか。どこに向かいたいのか。そのために何をするのか。そして、それをどう伝えるのか。これからも、考え続け、磨き続けたいと思います。
