味の素(2802)や花王(4452)などに見る、意外な企業の半導体関連技術
意外な企業が半導体製造工程に関与するケースも増えており、こうした企業は「隠れ半導体関連」などと呼ばれている。
代表的な例として、味の素(2802)はアミノ酸製造で培った技術を活用した絶縁材「ABF」で世界シェアほぼ100%を誇る。花王(4452)は洗浄ノウハウを活かしたウエハや基板の洗浄材に強みがある。衛生陶器大手のTOTO(5332)はセラミック技術を活かしてウエハを裏から固定する静電チャックを主力製品としている。
そこで、今回は化学セクターの「隠れ半導体関連」銘柄をピックアップする。
半導体向け材料で独自の強みを持つ化学メーカー4社
日産化学(4021)
同社は農薬の国内トップメーカー。半導体の露光で使われる材料でも存在感を増している。半導体の微細化のための露光ではEUV(極端紫外線)露光が不可欠となる。EUV露光により、半導体の線幅を2ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下にすることも可能になるが、EUVに対応する露光装置はオランダのASML社が世界でただ1社。このEUVリソグラフィ(半導体回路を描く露光技術)では、近年「下層」が重要との認識が広がっている。これまでの3ナノまでは従来方式で対応できたが、さらに細くすると不良品の比率が高まる。レジスト(感光性樹脂)の下層に膜を形成することで、レジスト感度や密着性が向上し、歩留まりが改善するほか性能も担保できるという。同社はEUV下層膜で世界トップシェアを握っているとみられる。最先端向けに膜厚1ナノの超極薄塗布が可能な材料を顧客に提案しているとの報道もある。
日本化学工業(4092)
化学薬品の老舗メーカー。工業薬品を国産化して成長し、リンやバリウム製品も展開。先端電子部品向けなどで業容を拡大している。
電子材料用の原料や、純度の高い炭酸バリウムを手掛けている。主に積層セラミックコンデンサ(MLCC)に使われるチタン酸バリウムの原料に用いられる。MLCCは電気を蓄えたり放出したり、電気の流れを整えたりして電流を制御する電子部品。セラミック製の誘電体層と金属の電極層を交互に何層も積み重ねた構造をしている。小型ながら大容量を実現できる。スマートフォンなどの性能向上に貢献しているが、近年ではデータセンターをはじめとしたAIサーバー向けの需要が増加している。AIサーバーなどの大容量化を支えているのがMLCCの機能性材料であるチタン酸バリウムだ。チタン酸バリウムは比誘電率が1000~20000と高いことで、セラミックコンデンサの大容量化に大きく貢献している。比誘電率とは、その物質が電界に対してどれだけ分極しやすいか(どれだけ電荷を蓄えられるか)を表す指標。真空を1とする。物質の誘電率を真空の誘電率で割って求める。
MLCCは誘電体層の材料となるチタン酸バリウム粉末と電極層の原料となる金属粉末を交互に積層し、高温で焼き固めることで積層構造を作っている。MLCCが貯めることができる電気の容量である静電容量を増やすためには、誘電体層を薄くして積層数を増やす必要がある。比誘電率の高いチタン酸バリウムの重要性が今後さらに増すことになる。
同社では2026年8月にチタン酸バリウムの生産設備増強を発表している。福島第1工場(福島県)内で2027年度中に実施する。
三菱瓦斯化学(4182)
基礎化学品や機能性化学品の生産などを手掛けている。半導体の製造工程に使われるBT材料などの将来性が高い。BTは、B成分(ビスマレイミド)とT成分(トリアジン樹脂)を主成分とし、付加重合させた樹脂の総称で、同社独自の技術により開発された。
BT材料は、半導体チップを搭載する基板であるサブストレート(板状の材料)に使われている。表面に電子回路を形成する銅張積層板(配線基板の土台)や、銅張積層板との組み合わせ、または単体でプリント基板を多層化する目的で使われるプリプレグ(中間材料)として製造・販売されている。
サブストレートの材料として必要な特性は(1)半導体が動作時に発する熱に耐えられるだけの耐熱性(熱による反りを含む)(2)誤作動や不良を引き起こさないための優れた電気絶縁性(3)半導体用途に見合った高い信頼性、などがある。従来、サブストレートの材料は高価なセラミックが主流だったが、同社は、セラミックに引けを取らない薄さ、耐熱性、電気絶縁性を実現したBT樹脂の開発に成功した。セラミックに比べ安価なうえに、加工もしやすいというメリットがある。
BT材料は上記の特徴に加え、耐薬品性や耐摩耗性にも優れている。同社の電子材料事業の大半を占める主力製品だ。一昔前まではスマートフォンなどのモバイル機器向けが主力だったが、AIデータセンターの普及により、AIサーバー向け用途の需要が急増している。特に半導体パッケージの3D(積層化)など、構造変化が追い風になっているようだ。
三井化学(4183)
総合化学メーカー。半導体の製造工程で使われる保護膜「ペリクル」で世界トップシェアを誇る。先端半導体の線幅は3ナノ(ナノは10億分の1)メートルなど極細になる。これに対応するにはEUV(極端紫外線)露光装置が必要になるが、前述のとおりEUV露光装置はオランダのASML社が世界で唯一製造している。半導体回路にはわずかな埃(ほこり)の付着も許されない。このEUV露光装置で半導体ウエハに回路を描くときに原版にほこりが付くのを防ぐ役割を担うのが「ペリクル」である。正確に回路を描くには高い透過率が必要となる。2027年には現行モデルより透過率を高め、寿命も延ばした新製品を投入すると報じられている。
