今回は神経内科医という多忙な仕事をしながら、ブログで投資や節約術などを発信している個人投資家のちゅり男さんにインタビュー。15年前に50万円から株式投資を始め、資産1億円を突破。「自分の判断を過信せず、常に株式市場に居続けること」をモットーにインデックス投資を継続しています。ちゅり男さんに、これまでの投資歴や資産形成のポイント、堅実な投資スタイルにこだわる理由をうかがいました。
 
●ちゅり男さんプロフィール●
愛知県在住の個人投資家。本業は神経内科医。30代後半で、妻と子ども2人(小学生・保育園児)の4人暮らし。「神経内科医ちゅり男のブログ」やTwitterで投資関連の話題や初心者も実践できる投資や節約術、人生を豊かにする本や健康情報を配信。

医学生時代に元手50万円から投資デビュー

――投資に興味を持ったきっかけについて教えてください。

子どもの頃、父親が日本の個別株に投資していたんです。買った株の話を時々してくれることもあり、投資に興味を持つようになりました。そんな中、2008年にリーマン・ショックで株価が暴落したので「これはチャンスだ」と思い、アルバイトで貯めた50万円ほどを元手に日本株を購入しました。

――どのように投資を学びましたか?

欧米の著名投資家等が書いた翻訳本を中心に20冊ほど買い込んで勉強しました。ウォーレン・バフェット氏やジム・ロジャーズ氏、ジェレミー・シーゲル氏らの本を読破し、自分に合う投資スタイルを模索していろいろ試してみましたね。

マーク・ミネルヴィニ氏の「成長株投資法」にもチャレンジしたのですが、日本の銘柄で実践するにはなかなか難しいものがあり…、かつ当時の私は医学生だったので、ずっとチャートを見ているわけにはいきませんでした。そこで、自分に合うのは長期スパンで行うバリュー株投資だという結論に達したのです。

「一度買って、保有し続ける」インデックス投資に開眼

――長期目線でのバリュー投資からスタートした後はどんな投資戦略を取ってこられましたか?

投資を始めた最初の3年間は日本株が中心です。銘柄分析なども自分なりに行いましたが、自分で立てた予想と実際の株価の動きが合致しないことが多く、投資のプロではない自分の判断を過信すると大やけどになると痛感しました。

そうした中で2010年頃に山崎元氏やカン・チュンド氏の書籍でインデックス投資の存在を知り、「なるほど、こういうやり方があるのか」と感銘を受けてインデックス投資に切り替えました。当時は今のように全世界分散投資が可能なファンドはなかったので、複数のファンドを組み合わせてポートフォリオを組みました。

――インデックス投資に魅力を感じた理由を教えてください。

資本主義経済は理論上、長期的に成長を続けていきます。したがって株式市場は一時的に低迷しても、いずれは持ち直し成長基調に戻ります。インデックス投資はそうした市場全体に投資するものですから、「一度買ったら保有し続ける」ことが理に適った行動だと思いました。

一方で、個別株には株価下落や経営破綻のリスクがありますから、保有し続けるというわけにはいきません。出口の見極めもなかなか難しい。株価が購入時の2倍になって、「さすがにもう上がらないだろう」と考え売却すると、さらに上昇したといったこともありました。そんな経緯もあり、私自身はインデックス投資が向いていると判断したのです。3万円ぐらいの積立から始め、徐々に金額を増やし、月にもよりますが10万円の積立をすることもありました。

自分の予測は当てにせず、株式市場に常に居続けることを重視

――これまでの投資歴の中での失敗談や気づきはありますか?

リーマン・ショックで株価がかなり下がった時、「そろそろ底だろう」と思って数銘柄を買い増しました。しかし、購入後も株価が下がり続けて損切りを余儀なくされました。投資を始めたばかりで金額が小さかったため大けがには至りませんでしたが、この経験から、資金を投入するタイミングの重要性や、暴落の底を読むことは不可能であることを学びました。

2013年頃には、リーマン・ショック後の大底からだいぶ株価が回復していたので、「そろそろ利益を確定しよう」と株式の大半を売却しました。ところが、その後も株価が上昇し続けたため値上がり後に同じ銘柄を買い直すことになり、結果的には失敗だったと思います。以降は自分の予測を当てにせず、常に株式市場に居続けることが重要だと考えるようになりました。

――株式市場に居続けるために必要なことは何だと思われますか。

大事なことが3つあります。1つ目は「守ること」。生活防衛資金を確保した上で、余剰資金で投資することが大事です。我が家の場合、生活防衛資金は妻の口座で管理しています。それによって、「投資でもっと増やしたい」と感じても資金移動できない仕組みになっているのです。2つ目は「コストを意識すること」。私は長期目線で投資していますので、できるだけ低コストの商品を選ぶようにしています。3つ目は「分散すること」。1つの銘柄に資金をつぎ込むようなリスクの高いことはせず、常に分散投資するようにしています。

長期保有の恩恵で、現在の資産は1億超え

――現在のポートフォリオを教えてください。

メインの投資対象は、世界中の投資家から購入され、資産規模や流動性も申し分ないETF(上場投資信託)を選んでいます。

現在のポートフォリオの主力は米国ETFで、投資額ベースでは新興国を含む全世界の株式に投資する「VT(バンガード・トータル・ワールド・ストックETF、ベンチマークはFTSE グローバル・オールキャップ・インデックス)」の比率が最も高くなっています。2番目に多いのが米国株の「VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF、ベンチマークはCRSP USトータル・マーケット・インデックス)」で、この2銘柄が投資額の約8割を占めます。

それ以外に、新興国の株式を対象とした「VWO(バンガード・FTSE・エマージング・マーケットETF、ベンチマークはFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ中国A株トランジション・インデックス)」、「QQQ(インベスコ・QQQトラスト・シリーズ1、ベンチマークはナスダック100指数)」、米国の高配当株に投資する「VYM(バンガード・米国高配当株式ETF)、ベンチマークはFTSEハイディビデンド・イールド・インデックス」などのテーマ型ETFも保有しています。

――個別株も保有されていますか。

個別株も一部保有していますが、今は個別株への新規投資をしていないので、年々インデックスファンドやETFの割合が高まっています(2022年6月時点で90%以上)。

他につみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)、2人の子どもたちのためにジュニアNISAを活用しています。児童手当の半分を預貯金、残りを投資信託で運用しています。具体的には、全世界株式型や米国の代表的な指数に連動する投資信託などです。子どもたちが中学生ぐらいになったら、預貯金と投資信託で運用していた分の結果を見せてあげたいと思っています。そういったことをきっかけに子どもたちが投資に興味を持ってくれたら嬉しいですね。

――直近(2022年6月現在)での投資残高についてお聞かせください。

私名義の投資資産の残高が約1億円といったところです。ロシアのウクライナ侵攻や米国の利上げに伴う株価急落の影響を受けていますが、投資期間が長かったおかげで、トータルでマイナスに転じることはなく、おおむねプラス20から80%程度のリターンになっています。

>>>>後編では「『億り人』以降もインデックス投資を継続、ブレない投資戦略の理由」をお届けします。

※本インタビューは2022年6月23日に実施しました。
※本内容は、個人の経験に基づく見解であり、当社の意見を表明するものではありません。
※投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断と責任でなさるようにお願いいたします。