中東情勢の緊迫化で相場は投げ売り状態

中東情勢の緊迫化で日経平均は急落している。イスラエルのイラン本土への直接攻撃は、想定シナリオのひとつではあったが、それが実現する確度は低かった。はっきり言って、超ネガティブ・サプライスである。今後、泥沼の報復合戦、第五次中東戦争に発展する可能性も(低いものの)捨てきれず、相場が投げ売り状態になるのも無理はない。

日経平均は一目均衡表の雲の下限(3万6500円程度)が次の下値目途

3月に「目先ピーク」とストラテジーレポートで指摘して以降、一貫して弱気を述べてきた。「今週の相場展望『日経平均の今週の予想レンジは3万8000円~3万9500円』」でも、

  • 相場の地合いは悪化しており、下値を探る展開
  • 日経平均では一目均衡表の雲上限が第一段階の下値の目途だろうが、おそらくこの水準は割ってくる

と述べた。実際に、雲の上限を割り込み、昨日は75日移動平均で下げ止まるかに見えたが、あっさりそこも下回った。チャート的には一目均衡表の雲の下限(3万6500円程度)が次の下値目途だろう。

【日経平均株価 一目均衡表】
出所:マネックス証券サイト

それを割り込めば、あとは3万5000円の大台くらいしか目途らしい目途はない。日経平均の水準ごとの予想PERは以下の通り。3万5000円まで下げて、ようやくフェアバリューといった感じだ。

まさに「上昇100日、下げ3日」を地で行く相場である。こういう展開になると、もはや理屈ではないので、行くとこまで行って相場が自律反発するのを待つほかはない。

今回ばかりは「落ちてくるナイフ」はつかめない

僕はよく、「落ちてくるナイフ」をつかみに行くが、今回ばかりは見送ったほうが正解だと思う。

なぜなら中東情勢が仮に短期で収束、落ち着いたとしてもすぐには戻らないだろうと思うからだ。理由は2つ。

  1. 相場の常道として「一度、大きく壊れてしまうとなかなか戻りにくい」という特徴がある。その理由は(何度も書いているが)「値段の調整はついても玉(ポジション)の調整には時間がかかる」からだ。加えて、近年ではリスクパリティなどの兼ね合いもあって、なおさらリスクオフの時間が長引く可能性がある。
     
  2. ファンダメンタルが悪すぎる。日本株は「内憂外患」の状態だから、中東情勢が片付いても地合いは悪い。「外患」は前々回指摘した米国株の割高さ。「内憂」は国内のデフレ脱却が危うくなりかけていることだ。小売りの決算にみられる値上げ一巡の流れが続けば、完全なるデフレ脱却が遠のきかねない。詳しくは、日経電子版「広木隆のザ・相場道(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB164N20W4A410C2000000/)」に詳しく書いたのでご参照ください。