9月の配当取りアノマリーとは?高配当利回り株の値動きとメカニズム
例年、8月のお盆が過ぎるころから、株式市場で注目を集めるテーマの1つが「9月の配当取り」です。今回は、配当取りに向けて高配当利回り株がどのように推移するのか、「9月の配当取りアノマリー」について解説します。高配当利回り株に投資するタイミングを考えるうえでも参考になるものです。
9月の配当取りとは、9月末に配当を予定している企業の株式を権利付き最終日までに保有し、配当を受け取る権利を得ることです。日本では3月期決算企業が多く、その半期にあたる9月末に中間配当を実施する企業も少なくありません。2026年の場合、配当を受け取るためには、9月28日(月)の権利付き最終日までに株式を保有している必要があります。
一方、その翌営業日は「権利落ち日」となり、この日に株式を購入しても今回の配当を受け取ることはできません。そのため、配当を受け取りたい投資家の買いが権利付き最終日に向けて増えれば、高配当利回り株の株価を押し上げる要因となります。そして、権利落ち日以降はそうした買い需要が一巡することに加え、配当を受け取る権利がなくなることから、株価が下落しやすくなるとみられています。こうした権利付き最終日前後に見られる株価の季節的な傾向が、「9月の配当取りアノマリー」です。
実際に、高配当利回り銘柄は9月の権利付き最終日前後でどのように推移しているのでしょうか。本稿では過去のデータを用いて、その値動きの特徴を検証しました。
高配当株は権利付き最終日付近に向けて上がる?
図表1は、9月の権利付き最終日前後における高配当利回り銘柄の平均的な株価推移を示したものです。2021年から2025年までの5年間について、それぞれの年の権利付き最終日前後における予想配当利回り4%以上の銘柄の株価推移を算出し、その5年間の平均を求めました。
単年度の動きではなく、過去5年間を平均することで、例年の9月の配当取りアノマリーにどのような傾向が見られるのかを確認します。
注2:母数はTOPIX500構成銘柄
注3:配当利回りに用いる配当は日本経済新聞社の今期配当額予想を用いる
注4:各年で8月末時点で配当利回りが4%以上の銘柄に等金額投資した場合の配当権利付き最終日前後のリターンを算出して、権利付き最終日=0%となるように基準化した平均リターンを過去5年間平均して累積している。超過パフォーマンスは、TOPIX500構成銘柄に等金額投資した場合のリターンを引いた超過分を求めて過去5年間を平均して累積している
出所:QUICK Workstation Astra Managerを用いて、マネックス証券作成
分析対象は、流動性を考慮してTOPIX500構成銘柄のうち3月期決算企業としました。各年の8月末時点で予想配当利回りが4%以上の銘柄を抽出し、9月の権利付き最終日を0日として、その前後の配当収益込みの株価リターンを算出しています。さらに、各年の高配当利回り銘柄の平均リターンを求めたうえで、2021年から2025年までの5年間を平均しています。
過去5年のデータから見えた「9月の配当取りアノマリー」
データ検証:権利付き最終日に向けた上昇とその後の下落
図表1の赤線は、予想配当利回りが4%以上の高配当利回り銘柄の累積リターンです。権利付き最終日が近づくにつれて、おおむねリターンの水準を切り上げており、配当取りを意識した買いが株価を押し上げている様子がうかがえます。一方、権利付き最終日を通過した後はリターンが低下する傾向も見られます。
青線は、母集団であるTOPIX500構成銘柄全体の平均リターンと比較した累積超過リターンです。こちらも権利付き最終日が近づくにつれて改善し、権利付き最終日前後を境に低下しています。つまり、高配当利回り銘柄は権利付き最終日に向けて市場全体を上回る傾向が見られる一方、その後は相対的に弱含む傾向が確認できます。
なお、権利付き最終日後のリターン低下は、単純に「配当落ち」だけを表しているわけではありません。本分析では配当収益込みのリターンを用いているため、配当による収益はリターンに反映されています。それでも権利付き最終日後にリターンが低下していることから、配当を受け取る権利を得た後に売却する投資家の動きなどが、株価の重しとなっている可能性も考えられます。
9月の配当取りアノマリーの正しい捉え方
9月の配当取りアノマリーについて整理すると、高配当利回り銘柄が「権利付き最終日まで一貫して上昇し、翌営業日の権利落ち日から一貫して下落する」というほど明確な動きではない点には留意が必要です。ただし、日々の振れを伴いながらも、権利付き最終日が近づくにつれて高配当利回り銘柄のリターンが改善する傾向は確認できます。
これは、配当取りを意識した買いが権利付き最終日の直前だけに集中するのではなく、それより前から徐々に株価に織り込まれている可能性を示しています。また、権利付き最終日を通過した後も、配当取りを目的とした投資家が一斉に売却するわけではないため、権利落ち日を境に明確に上昇と下落が分かれるとは限りません。
したがって、9月の配当取りアノマリーは、特定の日を境に株価が反転する現象というよりも、権利付き最終日が近づくにつれて高配当利回り銘柄が相対的に選好されやすくなる季節的な傾向として捉えるのがよいでしょう。
9月の配当取りで注目したい「出遅れ高配当株」、参考4銘柄も
「出遅れ高配当株」を抽出する3つのメイン条件
なお、高配当利回りを軸とした投資戦略については、本連載7月29日付の記事「今こそ注目したい、出遅れ高配当株投資」にて銘柄スクリーニング手法を詳しく解説しています。
いま一度、スクリーニング条件の整理と結果は次のようになります。
なお、②[株価]騰落率の条件は「対3ヶ月前・~5.0%」と条件をやや緩めました。これは足元にかけて相場全体がややリバウンドしていることが理由です。
メインの条件は以下の①~③で、出遅れ高配当利回り株を選別します。
①[指標]予想配当利回り:4.00%~、
②[株価]騰落率:対3ヶ月前・~5.0%、
③[指標]PBR:~1.50倍
「①予想配当利回り4.00%以上」は、高配当利回り銘柄を抽出するための条件です。「②株価騰落率(対3ヶ月前)5.0%以下」は、出遅れの基準として、過去3ヶ月間で株価が上昇していない銘柄を選別しています。さらに、「③PBR(株価純資産倍率)1.50倍以下」は、株価が企業の純資産に対して過度に割高と評価されていない銘柄を選ぶための条件です。
PBRが低い銘柄は、企業価値に対して株価が相対的に割安と評価されている可能性があります。一方で、PBRが高い銘柄は、すでに将来の成長期待が株価に織り込まれているケースも少なくありません。そこで今回は、高配当利回りであることに加え、株価が過度に割高ではない銘柄に絞ることで、株価の下値リスクを抑えながら、今後の見直し余地も期待できる銘柄を抽出しました。
中間配当や業績・流動性も加味した実践的な絞り込み
そして、9月の中間配当も期待する戦略として、④3月期決算企業で、⑤中間配当の実施が予想される企業という条件も加えています。
さらに、財務面や業績面でも一定の条件を満たす企業に絞るため、⑥実績ROE5%以上、⑦今期コンセンサス営業利益増益率3.0%以上(コンセンサス3人以上)、⑧来期コンセンサス営業利益増益率3.0%以上(コンセンサス3人以上)の条件を加えています。
最後に、流動性を考慮し、⑨東証プライム市場上場企業のうち、⑩時価総額800億円以上の企業を対象とし、⑪金融業(銀行業、証券・商品先物取引業、保険業、その他金融業)は分析対象から除外しました。
野村不動産ホールディングス(3231)ほか参考4銘柄
これらの①~⑪の条件で行ったスクリーニング結果を図表2に示しています。銘柄は予想配当利回りの高い順に並べています。銘柄選別の参考にしてみてください。
市場:東証プライム、業種:水産・農林・鉱業・建設・食料品など、時価総額:800億円~、決算期:3月
[詳細条件]
[指標]予想配当利回り:4.00%~、[株価]騰落率:対3か月前・~5.0%、[指標]実績ROE:5.00%~、[今期コンセンサス]増益率(営業利益):3.0%~・3人以上、[来期コンセンサス]増益率(営業利益):3.0%~・3人以上、[指標]PBR:~1.50倍
なお、第2四半期での中間配当が予想されるのかは、別途チェックしている
出所:マネックス証券ウェブサイト マネックス銘柄スカウター(2026年8月10日時点)
銘柄スカウターでのスクリーニングの条件設定について
ここからは補足的な説明です。読者の皆さんが投資候補として銘柄を検討する際に、ご自身で銘柄スクリーニングする方法を紹介します。皆さんが投資銘柄を探す際に、その時点で最新のデータでスクリーニングが可能になります。
マネックス証券ウェブサイトの「銘柄スカウター」を利用できる方は、銘柄スカウターの「10年スクリーニング」について、実際の銘柄スクリーニングの入力項目は以下の通りとなります(図表3)。
また、中間配当が予想されるのかの確認は、「銘柄スカウター」個別銘柄のページの「四季報を見る」のタブの「業績/株主構成」で確認ができます。ご参考ください。

