1998年と2007年

FOMCの「最初の利下げ」予想の後ずれが続いている。3月の「ドット・チャート」では、年内3回の利下げ見通しが維持されたが、その後も強い米景気が続き、インフレ是正にも足踏み感がでてきたことなどから、5月1日のFOMCを受けて「利下げは年内1回あるかどうか」という見方になってきた。

これまでのところの「最後の利上げ」は2023年7月。このため「最初の利下げ」が7月以降になる場合は、「最後の利上げ」から1年以上経過することになる。1990年以降の利上げから利下げへの転換は主に5回あったが、平均すると10.8ヶ月だった(図表1参照)。その意味では、「最初の利下げ」が1年以上後になった場合、平均より遅いペースということにはなりそうだ。

【図表1】米国の主な金融政策の転換(1990年~)
*注.ベージュは利上げ。グレーは最後の利上げから最初の利下げまでの間隔
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成 

ただし、「最初の利下げ」が「最後の利上げ」から1年以上後になった例がこれまでになかったわけではない。2007年9月の利下げは、「最後の利上げ」から15ヶ月目のことだったし、1998年9月の利下げは「最後の利上げ」から18ヶ月目、つまり1年半もかかっていた。その意味では、今回の「最初の利下げ」が年内に行われず、2025年以降にならない限り、あくまでこれまでに経験した範囲内の「遅い利下げ」に過ぎない。

「最初の利下げ」が利上げ終了から1年以上も後になった「遅い利下げ」、1998年9月と2007年9月は、ともに利下げのきっかけが「××ショック」だった。前者は大手ヘッジファンドの経営破綻に端を発した「LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)ショック」、そして後者は後に信用バブル崩壊と呼ばれることになった動きの始まり「サブプライム・ショック」だ。

高金利長期化の歪み

これらを受けて米国株が急落に向かう中で「最初の利下げ」が行われた(図表2、3参照)。以上のように見ると、「遅い利下げ」に伴う高金利の長期化の歪みが「××ショック」をもたらす一因だった可能性は注目される。

【図表2】NYダウの推移(1997~1998年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成
【図表3】NYダウの推移(2006~2007年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券作成  

これまでのところ、米景気は予想以上に強い状況が続いている。1~3月期の米実質GDP伸び率(速報値)は前期比年率で2%を下回り、事前予想より弱い結果となったものの、足元の4~6月期について、定評のあるアトランタ連銀の経済予測モデルのGDPナウは5月2日に更新した予想が3.3%と高い数字だった。こうした中で、利下げ予想が後ずれするのは当然だろう。

ただし利下げが遅くなり、高金利が長期化することにより、その歪みが「××ショック」、株急落等をもたらすことで、それまでから一変し急に利下げに現実味が出てくるというシナリオも頭に入れておく必要はあるのではないか。