冬にかけても過去最大級の強いエルニーニョ現象が続く見込み
10月28日、気象庁が、東京地方で「木枯らし1号」が吹いたことが発表しました。木枯らし1号とは、秋から冬へと季節が移り変わる時期に、西高東低の冬型の気圧配置のもとで初めて吹く、強い北寄りの風のことです。いよいよ冬の訪れを感じる季節となりました。
ところで、2026年の冬は例年より暖かくなる可能性が指摘されています。その背景にあるのが「エルニーニョ現象」です。エルニーニョ現象とは、太平洋の赤道付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなる現象です。この現象が発生すると、日本では冬の気温が高くなりやすい傾向があります。
気象庁が10月9日に発表した「エルニーニョ監視速報」によると、2026年の春から続いているエルニーニョ現象は、9月に過去最大の強さとなりました。さらに、冬にかけても過去最大級の強いエルニーニョ現象が続く見込みとされています。
実際に、気象庁が10月20日に発表した3ヶ月予報では、11月から2027年1月にかけて、全国的に気温が平年より高くなると予想されています。エルニーニョ現象の影響で日本付近には寒気が流れ込みにくく、2026年の冬は暖冬となる可能性が高まっています。
暖冬は日経平均株価にマイナス?冬の気候と株式市場の関係とは
冬の寒さは私たちの暮らしだけでなく、景気にも影響します。冬が寒ければ、暖房器具や冬物衣料などの売れ行きが伸び、個人消費を押し上げることが期待されます。一方、暖冬になると、こうした冬物商品の需要が伸び悩む可能性があります。
それでは、株式市場についてはどうでしょうか。暖冬になりやすいエルニーニョ現象が発生した年は、株価も上がりにくいのでしょうか。今回は、エルニーニョ現象と株価の関係を確認したうえで、冬の寒さが株価にどのような影響を与えるのかを検証します。
エルニーニョの冬は株価が上がりにくい、は本当?
まずは、エルニーニョ現象が発生した冬の株価を調べました。
東京証券取引所が第2次世界大戦後に取引を再開した1949年以降で見ると、エルニーニョ現象が発生した冬は、直近の2026年2月までに20回ありました。
この20回について、前年12月から翌年2月までの冬の期間における日経平均株価の騰落率を平均すると、プラス4.3%となりました。一方、エルニーニョ現象が発生していない冬の平均騰落率は、2026年2月までのデータでプラス4.2%でした。両者に差はほとんどみられません。つまり、エルニーニョ現象が発生した冬だからといって、株価が上がりにくいという傾向はないようです。
冬の直前にあたる11月についても調べてみました。エルニーニョ現象が発生した冬の前年11月の平均騰落率はプラス1.4%、それ以外の年の11月はプラス1.1%でした。こちらも大きな違いは見られません。こうして見ると、エルニーニョ現象が発生したからといって、冬の株価が低調になるとは言えないようです。
ただし、ここで注意したいことがあります。エルニーニョ現象が発生すると日本では暖冬になりやすいものの、必ず暖冬になるわけではありません。実際の冬の寒さは、その年によって異なります。次に、エルニーニョ現象の有無ではなく、実際の気温と株価の関係を調べました。
東京の気温と日経平均株価の関係を分析、冬は寒い方ほど株価は上がりやすいのか
実際の冬の寒さと株価には、どのような関係があるのでしょうか。
今回は、過去の東京の気温と日経平均株価の関係を調べました。分析では、12月、1月、2月の各月について、平均気温を基に「特に寒い」「例年より寒い」「例年並み」「例年より寒くない」の4つに分類しました。そして、それぞれの月の日経平均株価の騰落率を平均したものが図表1です。
注2: 東京の月間平均気温を基に分類。12月の「特に寒い」は7℃以下、「例年より寒い」は7℃超8℃以下、「例年並み」は8℃超9℃以下、「例年より寒くない」は9℃超。1月と2月の「特に寒い」は5℃以下、「例年より寒い」は5℃超6℃以下、「例年並み」は6℃超7℃以下、「例年より寒くない」は7℃超。
注3: 表中の数値は、該当する月の日経平均株価の騰落率の平均。
出所: 気象庁、日本経済新聞社のデータを基にマネックス証券作成
12月と1月:「適度な寒さ」が日経平均の追い風に
12月の結果を見ると、「例年より寒い」月の平均騰落率がプラス3.0%と、4つの分類の中で最も高くなりました。一方、「特に寒い」月はプラス0.5%、「例年並み」はプラス1.0%、「例年より寒くない」はプラス1.0%でした。
1月についても、「例年より寒い」月の平均騰落率がプラス3.5%と最も高くなりました。一方、「特に寒い」月はプラス0.9%、「例年並み」はマイナス1.2%、「例年より寒くない」はプラス2.8%でした。
このように、12月と1月は、例年より寒い月に株価が好調となる傾向が見られます。適度な寒さは冬らしい消費を促し、企業の売り上げにもプラスに働くことが、株価の好調につながっているのかもしれません。
厳寒の悪影響と意外にも堅調な「暖冬」
ただし、寒さが厳しすぎる「特に寒い」月では、株価の上昇率が小さくなっています。厳しい寒さによって外出を控える人が増えたり、大雪で交通機関が乱れたりすると、買い物や外食などの消費活動が鈍ることも考えられます。こうした影響が、株価の上昇を抑える一因になっているのかもしれません。
一方、注目したいのは「例年より寒くない」月です。12月はプラス1.0%、1月はプラス2.8%と、いずれも株価は上昇しています。暖冬になると冬物商品の需要は伸び悩むかもしれませんが、外出や旅行、レジャーなどの消費にはプラスに働くことも考えられます。暖冬だからといって、必ずしも株価にマイナスとは限らないようです。
ところが、2月については少し異なる結果となりました。「特に寒い」月の平均騰落率がプラス2.9%と最も高く、「例年より寒い」月はプラス1.6%、「例年並み」は0.0%、「例年より寒くない」はプラス0.3%でした。
では、2月に限っては、寒ければ寒いほど株価にとって良いのでしょうか。実は、2月は月末にかけて気温が上がり、春の暖かさを感じる日も増えてきます。そのため、月間の平均気温だけでは、冬の寒さの厳しさを十分に捉えられない可能性があります。そこで、2月については、別の角度からも調べてみました。
2月の気温から読み解く株価の傾向と、エルニーニョ現象が与える冬相場への影響
2月の最低気温(0℃未満の日数)と日経平均の騰落率分析
2月の最低気温が0℃未満となった日数に着目し、【図表2】を作成しました。月間平均気温ではなく、実際に寒さが厳しかった日が何日あったのかを基に、4つに分類して日経平均株価の騰落率を比較しました。
注2: 東京の2月の最低気温が0℃未満となった日数を基に分類。「特に寒い」は5日以上、「例年より寒い」は3~4日、「例年並み」は2日、「例年より寒くない」は0~1日。
注3: 表中の数値は、該当する月の日経平均株価の騰落率の平均。
出所: 気象庁、日本経済新聞社のデータを基にマネックス証券作成
その結果、「例年より寒い」月の平均騰落率がプラス3.1%と、最も高くなりました。一方、「特に寒い」月はマイナス0.1%、「例年並み」はプラス1.2%、「例年より寒くない」はマイナス0.3%でした。
つまり、例年よりも寒い日がある程度多い2月は株価が好調となる一方、寒さが厳しすぎても、逆に暖かい日が多くても、株価はそれほど好調ではありませんでした。2月についても、12月や1月と同じように「例年より寒い」くらいが、株価にとっては好ましいのかもしれません。
エルニーニョ現象(暖冬)が今後の株式市場に与える影響
今回の分析では、エルニーニョ現象の有無によって冬の株価に大きな違いは見られませんでした。一方、実際の気温に着目すると、例年より寒い月に株価が好調となる傾向が見られましたが、2月を除くと例年より寒くない月でも株価は上昇しており、暖冬が必ずしも株価にマイナスとはならないことが分かりました。
さて、2026年の冬はエルニーニョ現象の影響で、例年より暖かくなる可能性が高まっています。12月と1月については、「例年より寒くない」場合も平均騰落率は底堅いことから暖冬が予想される2026年の冬も、年末そして2027年1月に向けて株価の上昇が期待できるかもしれません。
もちろん、株価は企業業績や金利、為替など、さまざまな要因によって動くため、冬の寒さだけで株価を予想することはできません。それでも、暖冬だからといって株価にとってマイナスとは限らないという点は、年末に向けた株式市場を考えるうえで注目したいところです。

