アリスタ・ネットワークス[ANET]は、2004年に設立され、米国カリフォルニア州に本社を置くネットワーク機器・ソフトウェアのリーディングカンパニーです。大規模なクラウドデータセンターやAIデータセンター、企業向けキャンパスネットワークを結ぶ超高速イーサネットスイッチおよび制御ソフトウェアを開発・提供しています。

通信機器市場では長年シスコシステムズ[CSCO]が絶対王者として君臨してきました。しかし同社はデータセンター向け、中でも100~800ギガビット程度の超高速帯域市場においてはシスコを逆転し、世界トップシェアを握るまでに成長を遂げました。現在では、生成AIの学習や推論を行う数万基規模のGPUクラスタを相互接続するAI専用通信インフラにおいて、世界中のハイパースケーラーから最も選ばれる基幹ベンダーとしての地位を確立しています。

ハードウェア販売に留まらずストック型収益も拡大

展開する製品は、大きく分けてデータセンター向け高速スイッチ、企業向けキャンパスおよびルーティング製品、そしてネットワーク管理ソフトウェア基盤の3つから成ります。

データセンター向け高速スイッチ

主力はデータセンターおよびAIインフラ向けの高速スイッチ群であり、これが全体の65%~70%前後を占めています。この中核分野では、数万基規模のGPU同士を相互接続するAIファブリック専用スイッチ「Etherlink」シリーズや、業界最高水準の転送容量を誇るフラッグシップ機「7800シリーズ」が急速に売上を伸ばしており、AI向け製品単体の売上高だけでも全社売上高の約3割に迫る規模に拡大しています。これらは毎秒800ギガビットから次世代の1.6テラビットという膨大なデータ通信を、ごくわずかな遅延とパケットロスゼロで処理し、AI半導体における計算効率の最大化に貢献しています。

企業向けキャンパスおよびルーティング製品

二つ目の柱として成長しているのが、一般企業のオフィスや工場、データセンター間を結ぶキャンパスおよびルーティング領域で、全体の15%~20%を占めます。同社はコグニティブ・キャンパス構想を掲げ、データセンターで培った高品質な技術を企業の基幹網やWAN(Wide Area Network、広域通信網)、さらには買収したベロクラウドの技術を活かしたSD-WAN領域へと広げています。

ストック型収益基盤

そして残りの14%~16%は、ソフトウェアや保守サポートによるリカーリング(経常的・反復的)収益で構成されています。ネットワーク自動化・可視化プラットフォームである「CloudVision」などのソフトウェアをサブスクリプション形態で提供しており、ハードウェアを納入した既存顧客の機器更改やライセンス更新に伴って、安定した高収益が毎年積み上がる構造となっています。

顧客集中度は高いが、分散も進む

顧客基盤は、ハイパースケーラーからグローバル金融機関、新興AIプロバイダーまで多岐にわたります。最大の顧客は、マイクロソフト[MSFT]やメタ・プラットフォームズ[META]、アルファベット[GOOGLE]などに代表される「クラウドおよびAIタイタン」で、全体の約48%を占めます(マイクロソフト26%、メタ16%)。主要顧客の設備投資計画の変動が同社の業績に直結するリスクをはらんでいますが、AI向けEtherlink製品の累計導入企業数が100社以上に急増しているほか、エンタープライズ市場の開拓が進んだことで、顧客基盤の分散化と裾野の拡大が進んでいます。

そして、「エンタープライズおよび金融機関」が32%を占めます。ミリ秒単位の通信速度が収益を左右するウォール街の大手証券会社や銀行、フォーチュン500に名を連ねる大手企業が、社内基盤の刷新に向けて同社製品を採用しています。そして残りの約20%を占めるのは、コアウィーブのような急成長中の「新興AI専業クラウド(Neo Clouds)や特化型プロバイダー」です。

強み:ファブレス体制と、汎用半導体の活用技術でシェア獲得

同社の事業構造における最大の特徴は、自社で製造工場や半導体微細化設備を持たないファブレス体制と、汎用半導体(マーチャント・シリコン)の活用にあります。従来のネットワーク機器大手は、莫大な費用と3年から4年の歳月をかけて自社専用の半導体(ASIC)をゼロから設計・開発し、自社工場で組み立てる垂直統合モデルを採ってきました。

これに対し同社は、ハードウェアの製造を受託製造企業(ODM)に委託し、通信処理を司るスイッチング半導体にはブロードコム[AVGO]などの専業メーカーが開発する最先端チップを採用しています。半導体メーカーが新世代チップを発表すると、同社はわずか数ヶ月から半年足らずで自社スイッチへ実装して製品化できるため、通信規格が100ギガビットから400ギガビット、800ギガビット、そして次世代の1.6テラビットへと進化するすべての局面において、競合他社に先駆けて最速の機器を市場へ投入し続けてこられました。

この機敏なハードウェア展開と並ぶ強みが、独自開発のネットワーク基本ソフト「EOS(Extensible Operating System)」による運用のシンプルさと圧倒的な信頼性です。競合他社が買収や製品カテゴリーの拡大に伴って複数の異なる基本ソフトを抱え、顧客側に機器ごとの個別検証や複雑な設定管理を強いてきたのに対し、同社は創業以来すべてのスイッチで完全に同一のバイナリコードが動作する単一OS設計を貫いています。これにより、小規模な拠点網から数十万基のGPUが連動する超大規模AIクラスタに至るまで、まったく同じコマンド体系で一括管理することが可能となっています。

さらにEOSは、中央メモリデータベース「SysDB」を中心として各機能が独立して稼働するため、特定のプロトコルに不具合が生じてもOS全体が停止せず、通信パケットの転送を維持したままミリ秒単位で自己修復し、通信を停止させずに基本ソフトの更新を完了できる無停止アップグレード(SSU)を実現しています。通信障害が莫大な計算停止損失に直結するAIインフラにおいて、この高い可用性は顧客を強力に引きつける参入障壁となっています。

超高速イーサネット領域で圧倒的トップシェア

この強みによって、同社の市場でのポジションは確立されたものとなっています。イーサネットスイッチ全体(企業向けネットワーク・キャンパスLAN含む)では、依然としてシスコシステムズ[CSCO]が約35%のトップシェアを握る最大の競争相手となります。同社のシェアは約14%ですが、技術革新のスピードと運用のシンプルさを競争力として着実にシェアを拡大しています。

市場をデータセンター向けに絞ると、そのシェアはシスコが約27%、同社が23%とシスコに肉薄しています。さらに高速領域(100G/400G/800G)では、シスコが約20%であるのに対し、同社は約45%の圧倒的シェアを獲得しています。

AIデータセンター向けで最大の競合となるのが、エヌビディア[NVDA]です。エヌビディアは、買収したメラノックスの独自規格「インフィニバンド(InfiniBand)」や自社製イーサネット製品「Spectrum-X」を展開し、GPUとネットワーク機器を一体化した垂直統合型のパッケージ提案で攻勢を強めています。

これに対し同社は、業界のオープン規格を推進する「ウルトラ・イーサネット・コンソーシアム(UEC)」の中核として、標準イーサネット技術によるAI通信の高速化を主導しています。単一ベンダーによる独自仕様での囲い込みを回避し、将来にわたって多様な半導体やアクセラレータを自由に選択したいハイパースケーラーにとって、オープン規格をベースに最高峰の通信性能を提供する同社の製品群は、長期的な投資先として最も信頼される選択肢となっています。

成長投資を最優先:利益率の高さが魅力

研究開発に力を注いでいる同社ですが、シリコンバレーの優秀なエンジニアを惹きつけるため、年間数億ドル規模の株式報酬を付与しています。同社は機動的に大規模な自社株買いを行っていますが、これは発行済株式数を大きく減らすことを目的としたものではなく、株式報酬に伴う希薄化を相殺するために行っています。そのため実質的な発行済株式数はほぼ横ばいで推移しています。配当も行っておらず、稼ぎ出したお金は研究開発(R&D)投資や、AI需要の急拡大に伴うサプライチェーンへの資金供給を最優先としていることがよくわかります。

ただ、株主を無視しているわけではありません。株価の大幅な上昇に伴い、2021年11月および2024年12月にはそれぞれ「1株を4株に分割する」株式分割を実施しました。1株あたりの購入単価を引き下げ、幅広い投資家層の売買参加を促し、株式の流動性を維持しています。

PERなどからみた株価水準は、決して割安と言える水準ではありませんが、ハイパースケーラー向けのAI通信需要の急拡大を踏まえると、割高とも言えない水準です。売上総利益率は63%、営業利益率は43%、純利益率は38%と高水準で、ROEは31%、ROIC(投下資本利益率)は27%と高い資本効率を示しています。バランスシートも実質無借金状態を維持しており、収益性と財務の安全性は業界最高峰と言っても過言ではありません。強固なファンダメンタルズを考えると、過熱感が解消された現在の調整局面は、中長期の上昇トレンドを見据えた押し目買いを狙うタイミングであると考えられます。

【図表】アリスタ・ネットワークス[ANET]とS&P500の株価推移比
出所:Bloombergより筆者作成
※S&P500およびアリスタ・ネットワークス[ANET]株価は2014年6月30日を1とした数値