株安と円安が連動した1998年=2026年との違い

円安阻止を目的とした日米協調介入が前回実施されたのは、1998年だった。当時、株価は下落傾向が広がっていた(図表1参照)。日本の不良債権処理の遅れが懸念され、大手金融機関の経営破綻が相次ぐ中で株安が広がり、それとともに円安も続いた状況は、客観的に見ると日本の金融危機を懸念したキャピタルフライト(資本逃避)が起きていた可能性がある状況だっただろう。

【図表1】米ドル/円と日経平均(1997~1998年)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

1998年以来となる円安阻止の日米協調介入が2026年7月末に実現した。ただし、同じ円安阻止の日米協調介入局面でありながら、株価の方向性は1998年当時とはほとんど真逆の状況となっていた。いうまでもなく最近は、円安の一方で株価は最高値の更新が続いたわけだ(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と日経平均(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「日本経済を強くしないと円安は変わらない」は正しいのか

日本単独での円安阻止に苦労する中で、米国からの協力が実現したという意味では1998年と2026年は基本的には同じだろう。ただ、「為替介入はあくまで対症療法に過ぎない。円安の流れを変えるためには日本経済を強くすることが必要だ」との意見は、株安が広がっていた1998年には違和感のないものの、株価の最高値更新が続いていることなどからすると、この2026年には疑問符が付くのではないか。

株価は、経済の強さを示すバロメーターの1つだろう。その株価が大幅に上昇する中で、「日本経済を強くしないと円安の流れは変わらない」ということに、果たしてなるのだろうか。

円安の流れを変えるために必要なことは何か?

2026年にかけて、株高が続く中でも止まらない円安の主因となったのは、基本的には日本の長期金利上昇だった(図表3参照)。この長期金利上昇は、日本の財政規律への懸念を受けた動きとみられた。その意味では、長期金利上昇と連動した円安も、財政規律への懸念の影響が大きく、「日本経済を強くしないと円安は是正されない」ということとは違うのではないか。

【図表3】米ドル/円と日本の長期金利(2025年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

「介入のような対症療法ではなく、日本経済を強くしないと円安の流れは変わらない」という主張を展開するメディアは、その一方で高市政権の積極財政を無責任と否定するケースが多いように感じる。ただこれまで見てきたことからすると、そもそもどちらも間違いなのではないか。

米国の円安阻止協調、1998年とは意味が違う

最近になって、ベッセント財務長官を筆頭に、米政府から日本に対して円高を促す政策を要請する発言が増えているが、その基本は金融緩和と財政拡張で脱デフレを目指したアベノミクスからの転換ということだ。別の言い方をすると、アベノミクスの継続が、今の株高にもかかわらず円安が止まらない状況をもたらしているという意味になるだろう。

止まらない円安は、日本の政治がアベノミクスを十分に総括しないままだった影響が大きかったのではないか。その結果、世界の主要通貨の1つである円の下落が止まらないことの悪影響を懸念し、米国などから内政干渉的な政策転換の要求が出るという状態になっているのが、2026年の日米協調介入が、前回の1998年の介入と大きく異なる点ではないだろうか。