ヘッジFが円買いへ大転換=「鉄壁の155円」割れ主導の可能性

ヘッジFの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、9月15日時点で買い越し(米ドル売り越し)が12万枚まで急拡大した(図表1参照)。9月に入り、米ドル/円は日米協調介入などでも割れなかった「鉄壁の155円」を大きく割り込み、一時152円まで一段安となったが、それにはこのようなヘッジFなどの円売りから円買いへの急転換が大きく影響した可能性がありそうだ。

【図表1】CFTC統計の投機筋の円ポジションと米ドル/円(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

7月末、日米の通貨当局が1998年以来の円買い協調介入に出動した際、急激な米ドル安・円高を受けて、投機筋の円ポジションも売り越しが急縮小したものの、買い越しに転換するまでには至らず、その後は円売り越し再拡大に向かった。これが、協調介入でも「鉄壁の155円」を割れなかった大きな要因と考えられた。では、協調介入後に円売りを変えなかったヘッジFなどの投機筋が、9月に入ると円売りから円買いに転換したのはなぜか。

協調介入後と9月以降の違いは120日MAとの関係=米ドル/円

協調介入後と9月以降の米ドル/円を取り巻く状況の違いに120日MA(移動平均線)との関係があった。協調介入後の米ドル/円は一時120日MAを割れたものの、間もなく120日MAまで反発したのに対し、9月の米ドル/円は120日MAを大きく割り込むところとなった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円と120日MA(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

120日MAは、ヘッジFの損益分岐点とみられている。その意味では、協調介入後の米ドル/円は一時120日MAより米ドル安・円高となったものの、すぐに120日MAまで戻ったことで円売り取引を続けることになったのに対し、9月は120日MAより大きく米ドル安・円高になったことから円売りから円買いに転換したと考えると、辻褄は合うのではないか。

ヘッジFの円買い積極化はベッセント戦略との連携か

それにしても、CFTC統計の投機筋の円買い越しが10万枚以上に拡大したのは、2025年7月以来になる。そして、円買い越しの10万枚以上の拡大は、2025年1月にベッセント氏が米財務長官に就任して以降の他にはなかった(図表3参照)。

【図表3】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2005年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

以上のように見ると、9月に入ってからのヘッジFなどの突然の円買い積極化は、120日MAとの関係というテクニカルな理由とは別に、ヘッジF業界出身のベッセント氏の戦略と連携した可能性もあるのではないか。

8月末頃から、ベッセント財務長官は、「日本はリフレ政策をやめるべき」「日本政府に円高になるような政策を期待する」などとの発言を繰り返すようになった。こうした一連のベッセント発言を受けて円高見通しを強めたことで、ヘッジFが円買いを積極化した可能性も注目される。

「レートチェック」の目的はヘッジF円買い取引の損失転落回避か?

ただ、米ドル安・円高は152円台で一巡すると、先週(9月14日週)は日米の金融政策発表などを受けて一時158円まで米ドル高・円安に戻る展開となった。これは、日米金利差(米ドル優位・円劣位)が再拡大、また日本の長期金利上昇が再燃したことで、ヘッジFにとっても米ドル売り・円買いの手掛かりがなくなったことが影響したのではないか(図表4参照)。すでに見てきたように、9月15日時点で12万枚以上と大幅に拡大していた円買い越しの調整に伴う円売りは、158円までの米ドル高・円安を後押しする一因になった可能性もありそうだ。

【図表4】米ドル/円と日米金利差(2026年8月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ただ、こうした円安に歯止めをかけるところとなったのが、日本の当局による為替介入の前段階とされる「レートチェック」についての報道だった。「レートチェック」観測は1月23日に米ドル/円が160円に接近したところで浮上、そして実際に160円を超えると日米当局による円安阻止の為替介入が行われた。そうしたこれまでの経験からすると、9月18日の158円台での「レートチェック」観測は、一般の予想より早いタイミングだったのではないか。

ヘッジFの損益分岐点と見られる120日MAは、9月18日現在で159.4円だった。これより米ドル高・円安になると、ヘッジFの円買いポジションは損失に転落する可能性があったのだろう。そう考えると、158円台での「レートチェック」は、ヘッジFの円買いポジションの損失転落回避が目的だったのではないか。