日本銀行(日銀)は9月18日、政策金利を1.25%に引き上げることを決めました。金利上昇が、住宅ローン、預金、債券、保険、株、投資信託などに、どのような影響を与えるのかを解説します。
金利上昇は「住宅ローン」にどのような影響がある?
住宅ローンの金利タイプには、変動金利と固定金利がありますが、利上げによってどちらも影響を受けます。
特に注意したいのは、変動金利を利用している人です。半年ごとに金利が見直される仕組みで、政策金利の変化がすぐ反映されやすいのが特徴です。
変動金利型の住宅ローン金利は「短期プライムレート(優良企業にお金を貸し出す際の金利)」をもとに、金融機関ごとに定めた割引幅を差し引いた金利です。割引の大きさは金融機関によって違うので、契約時の利率は金融機関によって異なります。
短期プライムレートは長らく1.475%でしたが、2024年・2025年に引き上げられ、2026年8月3日からは2.375%です。今回9月の利上げを受け、更なる引き上げが想定されます。
変動金利で住宅ローンを借りている場合、金利上昇に伴って返済負担が上がります。返済額がいくら増えるのかを確認し、必要に応じて返済計画や生活費の見直しを行いましょう。
一方、固定金利型の住宅ローンの場合、既存の契約者にとっては無風です。利上げがあっても、契約時の金利が返済期間中は変わらないからです。
ただし、これから新たに借り入れする際の固定金利の水準には影響します。全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」の金利(最低値)は、2026年9月時点で3.46%(融資率9割以下)。10月以降はより高い金利になりそうです。
金利上昇は預金、債券、保険、投資信託にどのような影響がある?
普通預金・定期預金
2026年8月から、大手銀行の普通預金金利は年0.4%に引き上げられました。9月の利上げを受け、更なる引き上げが想定されます。定期預金は、年1.5%を超える商品が増えています。今後は2%前後の商品が出てくることが予想されます。
個人向け国債
個人向け国債は国が発行する債券です。保有中、半年に1度利息が得られ、満期になると元本が戻ってきます。金利が満期まで一定の「固定3年」「固定5年」と、金利が半年ごとに見直される「変動10年」の3つのタイプがあります。2026年9月募集分の「固定3年」は年1.96%、「固定5年」は年2.24%、「変動10年」は年1.95%となっています。
個人向け国債は、国が買い取る「中途換金制度」があるため元本割れはありません。よって、日本一安全な資産といえます。価格変動もしない商品でもあります。いわゆる「無リスク資産」ですが、無リスクで年2%を超える金利収入が得られる時代となりました。
なお、3タイプの中で変動10年は金利が一番低いですが、金利が半年ごとに見直される点に注目です。金利上昇が続くならば、半年ごとに自動的に利率が見直され、利息が増えます。特に何も手続きしなくても、保有しているだけで利息が増えるので手間もかかりません。金利はインフレを抑制するために上昇していきますので、変動10年はインフレ対策としても有用です。
新窓販国債
個人が購入できる国債にはもうひとつ、「新窓販国債」という国債があります。法人やマンションの管理組合などの団体でも購入可能。半年に1度利息が受け取れ、満期まで保有すれば元本割れしません。満期は2年・5年・10年の3タイプで、金利はいずれも固定金利です。
2026年9月募集(10月発行)分に関しては、2年の応募者利回り(新発債を購入して償還日まで持ち続けた場合の利回り)は年1.672%、5年は年2.171%、10年は年2.943%まで上昇しています。
新窓販国債はいつでも売却ができますが、売却価格はその時の市場価格によって変わるため、売却損(または売却益)が発生することがあります。債券の金利と債券価格の間には、シーソーのような関係があります。つまり、市場金利が上がると債券価格は下がり、市場金利が下がると債券価格は上がる仕組みになっています。
たとえば、金利が2%の債券を持っているとします。市場金利が3%になったとしたら、以後は利率が3%の債券が発行されることになります。そうなれば、誰もが利率2%の債券よりも利率3%の債券を欲しいと思うでしょう。利率2%の債券の魅力が薄れ、欲しい人が減り、債券価格が下落します。
新窓販国債には国の買取制度がないので、中途解約する場合の元本保証はありません。
社債
企業が発行する債券を社債といいます。社債の魅力は、国債よりも高い金利が見込めること。今後も市場金利が上昇していけば、発行される債券の利率も高くなっていくでしょう。
社債は一律の中途換金制度がないため、売却時の時価や市場環境によって元本割れや売却ができなくなるリスクがあります。今後も市場金利が上昇していく中で、中途換金する場合は元本割れする可能性が高いでしょう。
満期まで保有すれば元本が戻ることになっていますが、万が一発行した会社が破綻するようなことがあれば、元本が戻ってこない可能性はあります。
投資信託(債券に投資する商品)
投資信託は、投資家から集めたお金をファンドマネージャーが運用してくれる金融商品です。投資先は株、債券、不動産(REIT)、金などさまざまで投資信託ごとに異なります。
金利上昇によって、ネガティブな影響があるのは債券に投資する投資信託です。国内債券に投資する投資信託を保有している場合、円金利が上昇すると、基準価額(投資信託の値段)は値下がりする傾向にあります。投資信託を通じて債券に投資をしている場合は、金利上昇は向かい風になります。
円建ての保険
円建ての保険を販売する保険会社は、将来の保険金の支払いに合わせて、運用を行います。円建ての保険は、保険料も保険金も「円」であることから、ALM(アセットライアビリティマネジメント)の一環で、円建ての資産で運用することになっています。債券運用が主体なので、日本国債が主な運用先になります。
運用環境が改善されれば、生命保険会社が契約者に対して約束する運用利回り「予定利率」が引き上げられる可能性があります。予定利率が上がると、これから新たに契約する人が支払う保険料の負担が減ります。また、積立利率連動型保険の場合は、積立利率が引き上げられ、将来受け取れる解約返戻金や年金額が増加する可能性はあります。
既存の契約者にとっては、予定利率の引き上げの影響は原則ありません。基本的に保険は、住宅ローンの「固定金利」と同じです。保険の予定利率も契約した時点で提示された利率から変わることはないからです。
金利上昇は株(または株に投資する投資信託)にどのような影響がある?
金利上昇は、一般的には株価の下落要因です。金利が上がると、インフレ抑制・景気抑制につながるためです。また、金利が上がると、価格変動リスクの小さい債券で相応のリターンが得られるため、価格変動リスクの大きい株を売って(株価下落)、債券を買う動き(債券価格上昇)も出てきます。
ただし、金利上昇によって上がる株もあります。その筆頭が銀行株です。金利が上がると、銀行は貸出金利と預金金利の差である「利ザヤ」が広がり、収益が増えます。また、金利上昇は保険株にも追い風です。保険会社は契約者から預かる保険料を運用するわけですが、「順ザヤ(運用利回りが予定利率を上回る)」が拡大すれば、利益の成長につながります。
そうした見通しから、投資家からのお金が集まりやすく、株価が値上がりする傾向にあります。
金利上昇に応じて、大手銀行の株価は上昇しています。以下の図は、日本国債10年、TOPIX、メガバンク3社の株価の推移です。
日本国債10年金利とメガバンク3社の株価は、連動していることがわかります。また、メガバンク3社の株価は、マイナス金利を解除した2024年3月辺りから急上昇し、足元の動きをみるとTOPIXの上昇率を大きく上回って推移しています。
銀行株は高配当銘柄が多く、増配や自社株買いなど株主還元も積極的なので、収益改善→株主還元→株価上昇のトレンドになりやすい特徴があります。
ただし、金利が高くなりすぎると、お金の借り手が減っていきますので、収益は青天井で上がっていくわけではなく、どこかでピークは訪れます。とはいえ、しばらくは株式市場を牽引していく可能性は高いのではないでしょうか。
個別銘柄に抵抗がある人は「セクターETF」を活用しましょう。セクターETFとは、テクノロジー、ヘルスケア、金融など、特定の業種や産業に絞って投資できる上場投資信託です。1つの銘柄で特定の業種や産業全体に分散投資ができます。
お金は目的・時期に適した商品で貯める
金利のある世界になったこともあり、債券投資の魅力がアップしています。日本経済新聞の報道によると、ネット証券では個人向け国債の販売額が急増しているとのこと。
無リスクで年2%を超える金利収入が得られる個人向け国債は利用する価値があるものの、インフレを超えるようなリターンは期待しづらい部分があります。
しかし、インフレを超えるようなリターンを狙うために、株(または株に投資する投資信託)に全ての財産を投じるというのもリスクが高すぎる場合もあります。株式市場は頻繁に暴落しますし、日本で生活をしていく以上、安全資産は欠かせないからです。
世の中に完璧な商品はありませんが、上手く組み合わせることで、将来に備えながら資産の形成と防衛ができます。筆者は目的・時期に合わせて適した資産・金融商品・制度で貯めることを推奨しています。時期は「短期」「中期」「長期」と3つに分けています。
短中期のお金は、流動性・安全性を重視して現預金、個人向け国債などを保有するのが良いでしょう。
長期のお金は「10年以上使わない将来のためのお金」です。お金を使うまでに時間の余裕があるので、「収益性」を重視して、インフレ率を超えて増える可能性が高い株(または株に投資する投資信託)を利用するのがベターです。その際、投資で得られた利益(値上がり益・配当金・分配金)にかかる税金がゼロになるNISAやiDeCoを活用し、効率よくお金を増やすことを目指しましょう。
インフレ・金利がある世界がデフォルトの時代になりました。昔の常識は今の非常識。常に脳をアップデートして、新時代を生き抜いていきましょう。
※本記事で紹介した個別銘柄については、あくまでも参考として申し述べたものです。投資の最終決定は各自の責任でお願いいたします。

