日米金利差などで説明できる範囲を超えた米ドル/円急落
米ドル/円の短期的動きを比較的うまく説明できるのは日米金利差(米ドル優位・円劣位)だ。今回の米ドル/円急落は、日米金利差が急縮小する中で起こった(図表1参照)。その意味では、日米金利差縮小が米ドル安・円高が急拡大するきっかけになったと言えるだろう。ただ、さすがに1週間程度で約7円もの米ドル/円急落は、日米金利差縮小で説明できる範囲を大きく超えている。
同じようなことは、日本の長期金利との関係でも言えそうだ。一時163円まで進んだ米ドル高・円安は、日本の財政規律への懸念を受けた長期金利上昇との相関性が注目されることが多かった。その長期金利上昇は、ベッセント米財務長官による「日本はリフレ政策をやめるべき」などの発言を受けて一段落した。その意味では、財政規律への懸念が一服したことが、円高への反転のきっかけになった可能性があった。ただし、その後の急激な円高は、長期金利低下では全く説明できないものだった(図表2参照)。では、突然の米ドル/円急落をもたらした米ドル売り・円買いの中心は何か。
貿易・サービス赤字を大きく上回った為替介入=需給は相当な米ドル余剰?
日本の通貨当局による2026年の為替介入額は、これまで確認されただけでもすでに27兆円以上に達し、これまでの年間介入額の最高額を大幅に更新した(図表3参照)。これだけの大規模な米ドル売り・円買い介入でも円安の流れが変わらないことを国際収支で説明するのは困難だ。
例えば、国際収支の中で需給的な円安要因と考えられる貿易・サービス収支の赤字は、2025年は4兆円、過去最高の2022年でも21兆円だった。つまり、2026年の米ドル売り・円買い介入額はこれまでの段階で貿易・サービス赤字を大きく上回った可能性がある。その意味では、貿易・サービス赤字と為替介入の関係で見ると、為替需給は相当な米ドル余剰になっている可能性もある。
それでも最近まで米ドル安・円高の進行が限られていたのは、米ドル余剰が吸収されたためであり、その中心は短期売買を行う投機筋の米ドル買い・円売りだろう。そうした投機筋が、これまで日米協調介入でも割れなかった米ドル/円が155円を割れたことにより、抱えこんだ米ドル・ポジションの処分を本格化したことが、金利差などで説明できる範囲を超えた米ドル急落をもたらした主因ではないか。
需給を変えるほどの日本の介入=円安転換の始まりか
年間の介入額が10兆~20兆円程度に達することもある日本の為替介入は、カネとモノの流れで決まる為替需給を変える効果がある。これまでも、大規模介入が行われた前後では、円高から円安へ、またはその逆の円安から円高へという長期トレンドの転換が起こってきた(図表4参照)。
そうした日本の為替介入でも、膨大な投機マネーの勢いを止めることは簡単ではない。ただ買い切り、売り切りではない投機マネーの影響は、長期的には為替需給に対してニュートラルである。為替介入により米ドル余剰になった為替需給を投機マネーが吸収し、それを吐き出すことで歴史的な円安が転換に向かい始めた可能性がありそうだ。

