2026年8月に入り中国でロボット業界を象徴するような出来事がありました。中国で人形ロボットを作っている、ユニトゥリー・ロボティクス(Unitree Robotics)が8月19日、上海証券取引所の「科創板(STAR Market)」に上場したのです。公開価格は1株150.8元。それが上場初日の終値では845元まで上昇しました。公開価格の約5.6倍、上昇率にすると460%です。初日終値ベースの時価総額は約3418億元、円換算では7兆円台に達しました。
もちろん、これはかなりの期待が株価に織り込まれた数字です。その後、株価は大きく調整しており、ロボット関連株への期待の大きさと同時に、過熱感にも注意が必要です。それでも、投資家がこれほど熱狂したという事実そのものが、「ロボットが次の巨大産業になるかもしれない」という市場の期待を象徴しているように思います。
「人型ロボット」と聞くと、まだSF映画の世界のように感じる方も多いかもしれません。ところが、ロボットそのものは、すでに僕たちの日常に静かに入り始めています。
先日、地方のホテルに宿泊した時のことです。夕食後のお膳を運んでいたのは、スタッフの方ではなく配膳ロボットでした。最初は、「便利になったな」くらいに思っていたのですが、ホテルのスタッフの方から話を聞いて、少し見方が変わりました。
配膳ロボットを導入した最大のメリットは、単なる効率化だけではないそうです。ホテルで働く方々も高齢化しています。重いお膳を持って、厨房と客室の間を一日に何度も往復する。若い人でも大変な仕事です。それをロボットが代わりに運んでくれる。スタッフの方は、「身体への負担がずいぶん減りました」と話していました。
その話を聞いて、「なるほど、ロボットの本当の価値はここにあるのかもしれない」と思いました。人間から仕事を奪うのではなく、人間がやらなくてもよい重労働や反復作業を引き受けてもらう。僕はこれが、ロボット普及の一つの大きな方向性になると思っています。
現在ホテルで働いているのは、料理を運ぶことに特化したロボットです。しかし次の段階では、もっとさまざまな仕事ができる人型ロボット=ヒューマノイドが入ってくるでしょう。実際、日本でもすでに動き始めています。
JALグループなどは2026年5月から、空港業務で人型ロボットを活用する実証実験を始めたそうです。将来的には、手荷物の積み込みから機内清掃まで、さまざまな仕事への活用を想定しています。これは非常に重要な動きだと思います。
日本はこれから、人口減少と高齢化によって人手不足がますます深刻になります。ホテル、物流、空港、工場、建設現場、介護施設……。こうした現場でロボットが人間の代わりに重い物を持ち、危険な作業を行い、単純作業を繰り返してくれるようになれば、社会全体の生産性はかなり変わってくるはずです。
そして、その先には介護や接客、さらには一般家庭があります。少し複雑な気持ちもありますが、それほど遠くない将来、僕たちはロボットと一緒に働き、ロボットに家庭を支えてもらうようになるのでしょう。
僕自身も年齢を重ねて、「いつか介護が必要になった時、自分を支えてくれるのは人間ではなくロボットかもしれないな」と考えることがあります。そう考えると、ヒューマノイドは決して遠い未来のテーマではありません。
そんなことを考えていたところ、先日、非常に気になるニュースを目にしました。警視庁では、警察官の定員4万3619人に対して3,060人の欠員が生じているというのです。人手不足などを背景に、110番通報を受けてから現場に到着するまでの時間にも徐々に影響が出ていると報じられています。このニュースを見て、僕はある映画を思い出しました。
『ロボコップ』です。1987年に公開されたSF映画で、人間と機械が融合した警察官「ロボコップ」が犯罪者と戦い、街の治安を守るという物語でした。当時は完全なSFだと思って見ていました。しかし、約40年たった今、人型ロボットが歩き、走り、荷物を持ち、複雑な作業をするところまで来ています。もちろん、明日から交番にロボット警察官が座るという話ではありません。
ただ、夜間の巡回、施設の監視、危険地域への立ち入り、災害現場での捜索など、警察官や消防士が行っている仕事の一部をロボットが担う未来は、決して荒唐無稽ではないと思います。
20年後、街を歩いていたら、「まさか本当にこんな時代が来るとは思わなかったな」と、笑っているかもしれません。そして、その変化は意外にも、すでにホテルで僕のお膳を運んでくれた一台のロボットから始まっているのかもしれません。

