米金利の「レジームチェンジ」仮説:FOMC日の影響の逆転と実質金利主導の上昇
・2021年ごろまでの長期低下局面では、10年債利回りの下落幅の大半(約699bp中610bp)がFOMC(米連邦公開市場委員会)前後3日間に集中していた。しかし、2021年以降の金利上昇局面では、非FOMC日にファンダメンタルズ要因で上昇し、FOMC日にはむしろ低下する傾向が目立った。
・直近はFOMCへの過度な期待が剥落し、FRB(米連邦準備制度理事会)が「データ依存」で市場動向を重視する姿勢の下、FOMCイベントで金利が上昇する反応も見られる。FRBは「追加利上げをせずとも長期金利上昇が金融引き締めを進める」と評価しており、この評価が市場に浸透している。
・金利上昇はインフレ期待ではなく実質金利が主導している。悪い上昇要因(インフレ・財政懸念・中央銀行の独立性懸念)に加え、AI関連を中心とする旺盛な資金調達需要・設備投資といった良い上昇要因も作用している。
政策対応とタームプレミアム、巨額の起債・国債供給がつくる地合い
・米財務省は短期国債の発行拡大と長期債買い戻しを組み合わせる施策を検討・実施している。過去のオペレーション・ツイスト同様、景気への効果は限定的だがタームプレミアム抑制には一定の効果が見込みやすい。ただし30年利回り5%超のような局面では「時間稼ぎ」的色彩が強く、持続性は限定的になりやすい。
・米社債の起債は2026年8月中旬時点で約2.5兆ドルのペースで、年内は4兆ドル超が視野。米国債の大量発行(防衛・安全保障・国内財政支出など)と併せ、国と企業の資金需要が同時多発的に膨らむ年であり、長期・超長期の社債はクレジット上乗せで魅力的な利回りを提示し、国債利回りにも上昇圧力がかかりやすい。
・海外投資家の対米証券投資では、中長期の米国債と社債のフローが相互に代替し、為替ヘッジコストを含む相対妙味で配分が変わる。グローバルな金利連動性が強く、米国内だけのオペレーションでは効果が波及・希薄化しやすい。
フローの行方と市場シナリオ:MMFからの回帰、株からのローテーション、分散の重要性
・米国株には資金が大きく流入しており、債券の大量供給を吸収するには株からのローテーションやMMF資金の回帰が焦点となる。MMF残高はGDP比で約25%と高く、今回は金利上昇で債券から現金へ退避した資金の性格が強く、追加フローは株よりも債券へ戻りやすい余地がある。
・想定シナリオは二つ。(1)良好なローテーションで債券需要が立ち上がり金利が安定。(2)供給超過で金利が高止まりし、株が高金利に耐えられず失速、景気も変調。ただし(2)でも景気悪化局面では金利が低下に向かうため、債券は一定の投資妙味を保ちやすい。
・実質金利は潜在成長率を上回っており、過去(2000年、2009年)と同様のストレス接近を示唆する。生成AI起点の生産性向上で潜在成長率が上振れするかがカギであり、バリュエーションと業績の持続性を見極めつつ、分散を意識したい局面だ。

