長期下落トレンドへの転換が試されている米ドル

1月23日、米当局は日本の当局に追随する形で、円安けん制の「レートチェック」に動いた。これを受けて米ドルの総合力を示す実質実効レートは5年MA(移動平均線)割れに向かった(図表1参照)。

【図表1】米ドル実質実効レートと5年MA(1995年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

2011年から続いてきた米ドル実質実効レートの上昇トレンドは、この5年MAに基本的にサポートされてきた。その意味では、米ドル実質実効レートの5年MA割れは、長期トレンドの下落への転換の可能性を感じさせるものでもあった。

米ドル実質実効レートは、トランプ政権が発足した2025年1月に天井を打つと、その後は大きく下落が進み、テクニカルに見ると最近は長期下落トレンドへの転換が試される水準まで下落していた。それは対円で続く「歴史的米ドル高」の印象とかなり違うものだろう。

米国「レートチェック」後に急増した投機米ドル売り

米当局の「レートチェック」を受けたこのような米ドル急落を主導したのは、投機筋の米ドル売りだった。ヘッジファンドの取引を反映するCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(非米ドル主要5通貨=円、ユーロ、英ポンド、加ドル、豪ドルの5通貨で試算)は、「レートチェック」後に売り越しに転換すると、約1ヶ月で売り越しが20万枚以上に拡大した(図表2参照)。

【図表2】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2026年1月~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

米ドル売り越しがこのように20万枚を超えたのは、2000年以降でも3回しかなかった(図表3参照)。つまり「レートチェック」をきっかけに投機筋の米ドル売り越しはわずか1ヶ月で過去最高に迫るほどの急拡大となったわけだ。

【図表3】CFTC統計の投機筋の米ドル・ポジション(2000年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

ベッセントの米ドル売り介入否定=協調介入もユーロ売り

「レートチェック」がきっかけとなり、投機筋は米ドル売りに殺到し、米ドル実質実効レートは長期下落トレンドへの転換が現実味を帯びるようになっていた。そうした中で、米通貨政策の責任者であるベッセント財務長官は、「断じて米ドル売り介入は行っていない」と発言した。米ドル急落が進みかねない状況となったことを受けて、弁明に追い込まれたようにもみえる。

7月末、日米当局は1998年6月以来の円買い協調介入を行ったとみられている。ただ米当局の為替介入は、1998年の米ドル売りではなく今回はユーロ売りだったようだ。これまで見てきたことからすると、米当局が米ドル売り介入を行った場合、それは円安是正にとどまらず米ドル急落を引き起こしかねないことへの警戒が影響したのではないか。

危うい米ドルの地合い=米ドル「自滅」はあるか?

テクニカルに見ると、米ドルはすでに新たな下落トレンドに入った兆しが見られる。例えば、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルの5年MAかい離率は三角持ち合いとなっていたが、トランプ政権発足からその上放れが始まったように見える(図表4、5参照)。それはユーロや豪ドルに対して新たに米ドル安の余地が広がり出した可能性を示している。

【図表4】ユーロ/米ドルの5年MAかい離率(1980年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成
【図表5】豪ドル/米ドルの5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

このような新たな米ドル安の兆しが、2025年のトランプ政権発足以降増えてきたのは、やはりトランプ米大統領の国際秩序を揺るがす行動を受けて米ドル離れが広がった影響が大きいのではないか。そうした中で、すでに米当局が米ドル売り介入できないほどに米ドル自体の地合いが危うくなっているなら、この先それが表面化することに伴う米ドルの「自滅」が円安から円高へ転換するきっかけになる可能性もあるのではないか。