GW介入局面と異なり、今回は急減した投機円売り
7月末からの日米協調の円買い介入を前後して、投機筋の円売りポジションが急減したようだ。投機筋の代表格であるヘッジファンド(以下ヘッジF)の取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、為替介入が行われる前の7月28日時点では売り越しが16万枚だったが、為替介入が行われた後の8月4日時点では4万枚となり、1週間で4分の1に急激に縮小した(図表1参照)。
投機筋の円売り越しは、GWに日本の通貨当局が単独で米ドル売り・円買い介入を行った際にも縮小したが、その時は最大で10万枚から6万枚への売り越し縮小にとどまった。同じ為替介入をきっかけとした円高への反転局面ながら、今回は投機筋の円売りポジション減少が大きくなったのはなぜか。
GWの為替介入局面との違いは米ドル/円の120日MA割れ=円売りが損失に転換?
為替介入をきっかけに米ドル/円が急落したのはGWと今回で同じだったが、違ったのは120日MA(移動平均線)との関係だ。前者では米ドル/円は急落したものの120日MAを大きく割れるに至らなかったのに対し、今回は大きく割り込むところとなった(図表2参照)。
120日MAは、ヘッジFの円売りポジションの損益分岐点の目安と見られている。今回、米ドル/円が120日MAを大きく割り込んだことで円売りポジションの損失が拡大し、このため処分も急拡大したということではないか。
米ドル/円の120日MAは、8月7日現在で159.6円。これまで見てきたことからすると、ヘッジFの円売り本格再開は、米ドル/円がこの120日MAを上回ることが1つの条件になりそうだ。逆に、120日MAより米ドル安・円高での推移が続くようなら円売りは限られ、むしろ状況次第では円買い拡大に動く可能性もあるのではないか。
ユーロ売り・米ドル買いも損失転換含みの状況に
ところで、日米協調介入の前後で、ユーロ/米ドルはユーロ高・米ドル安に比較的大きく動き、8月7日現在で1.157米ドルの120日MAを突破しそうな展開となった(図表3参照)。この中で、投機筋のユーロ売り越しは、7月28日時点の7万枚から8月4日時点では5万枚に縮小した(図表4参照)。
ユーロ売り越しの縮小は小幅に過ぎないものの、120日MAを超えてユーロ高・米ドル安に動く可能性が出てきたことにより、ユーロ売りポジションが損失に転換する懸念が浮上したことから処分に動き出したということではないか。
この先、ユーロ/米ドルが120日MAを大きく上回るようなら、ユーロ売りポジションの損失拡大を回避するために処分を急ぐことで、ユーロ買い・米ドル売りが増える可能性があるのではないか。
空前の米ドル「買われ過ぎ」の修正本格化となるか?
以上で見てきたことは、米ドルのポジションにも大きな変化をもたらす可能性がある。投機筋の米ドルのポジションは、最近にかけて記録的な大幅買い越しとなっていた(図表5参照)。ただしこれまで見てきた120日MAとの関係を参考にすると、対円ではすでにその米ドル買いは損失に転換し、対ユーロでも損失への転換含みの状況となった。
この先、米ドル買いポジションの損失拡大の可能性が広がるなら、米ドル「買われ過ぎ」の修正と相まって、米ドル売りが急拡大する可能性に注意が必要かもしれない。

