なぜ三村財務官は「日米通貨同盟」と表現したのか

通貨同盟の代表例は、「欧州経済通貨同盟」のユーロ圏だ。この特徴は、複数国の通貨を単一通貨のユーロに統一し、金融政策を担う中央銀行もECB(欧州中央銀行)に権限を集中させたことだろう。

三村財務官が「日米通貨同盟」と表現したのは、さすがに米ドルと円を単一通貨にするとか、日銀とFRB(米連邦準備制度理事会)の上に統一中銀を新設し、そこに日米の金融政策権限を集中させるという意味ではないだろう。あくまで、今回の円安阻止を巡る日米協調が、過去に例のないほど強いことを比喩する意味で使ったとの理解になっているようだ。

ただ、それではなぜ「通貨同盟」という表現を使ったのか。今回の日米協調合意の内容を、最も詳細に知る立場にある三村財務官があえて「日米通貨同盟」と表現したのは、三村財務官自身この日米合意が「通貨同盟」のように感じられたということがあったのではないか。

条件付きの円安阻止=金融・財政政策も含む「日米同盟」か?

今回の円安阻止の日米協調は、トランプ米大統領が言うように、「円安で困っている日本に米国が協力した」ように見える。また、ここに至るまでも、「1月のスイス・ダボスでの会談でベッセント財務長官から片山財務大臣は、日本の長期金利上昇が米国に連鎖しているとして強く叱られた」という類の話が多かった。要するに、協調と言いながらも、日本に対して米国の立場が圧倒的に有利だったのだろう。

そうしたことを経た上での日米協調が、トランプ米大統領が言う友好国・日本を助けるためのものだっただけとは考えにくいのではないか。普通なら、「条件付きの円安阻止協力」であり、その条件は為替介入という通貨政策だけでなく、金融・財政政策も含まれている可能性があるのではないか。そうであれば、それはまさに「日米通貨同盟」の印象になりそうだ。

円買いを判断したベッセント=「高市ショック」回避に自信?

一部報道によると、1月のダボスでの片山財務大臣との会談で、ベッセント財務長官は「高市総理はトラスのようになるのではないか」と、かつて財源が曖昧なままで減税策を発表、通貨・債券・株の「トリプル暴落」を起こした英国の首相に重ねて懸念を示したという。

その「高市ショック」リスクのある円を「友情」で買うことは、投資のプロ中のプロであるヘッジファンド業界出身のベッセント長官ならありえないだろう。そうであれば、円を買うことにしたのは、逆に言えば、上述の「トラス・ショック」再来の「高市ショック」回避の自信が出てきたからではないか。

その自信、円などの日本「トリプル暴落」回避が為替介入だけでできるとベッセント氏が判断したということはあるだろうか。そうではなくて、そもそも「高市総理はトラスのようになるのではないか」という懸念があったなら、「財源の曖昧なままの減税」が二の舞になるリスク、「高市ショック」回避に自信ができたからではないか。

日本の総理の政策に対する外国の反対は、基本的には内政干渉となる。ただ、それが日米通貨同盟の中での円安阻止目的のものなら、許容される余地が広がりそうだ。日米通貨同盟とは、円安阻止の条件で、日本の金融・財政政策に対する米国の干渉の度合いが大きく広がったとの意味があるのではないか。