購買力平価との関係から考える2つの「異常相場」
足下の米ドル/円は、日米の消費者物価を基に算出した購買力平価を5割も上回っている(図表1参照)。これほど購買力平価から大きくかい離した米ドル高・円安は、少なくとも1973年の変動相場制度移行後には見られなかった。その意味では、過去に前例のない「異常な円安」と言えるだろう。
ただし逆方向に、購買力平価を米ドル/円が5割も下回ったのは、1995年4月に1米ドル=100円を超える円高となり、「超円高」と呼ばれた局面にあった。その意味では、この1995年にかけての為替相場の動きも、「異常な米ドル安・円高」と言えるだろう。ではそれはどのように終わったかというと、G7による協調介入がきっかけだった。
購買力平価との関係でいえば、1995年の「異常な米ドル安・円高」に匹敵するのが足下の「異常な円安」と言えるだろう。これまで見てきたように、1995年の「異常な米ドル安・円高」は、G7協調介入などをきっかけに反転した。これに対して、足下の「異常な円安」は、7月末からの日米協調介入でも、それだけでは円高への反転には不十分との見方がまだ多いようだ。
「異常な円安」をもたらした異次元緩和や財政規律の低下
「異常な円安」の始まりは、2022年から米ドル高・円安が一気に150円を超える動きになったことだった。その米ドル高・円安は、日米金利差(米ドル優位・円劣位)拡大によって基本的に説明できるものだった(図表2参照)。つまり、「異常な円安」の始まりは、当時「異次元緩和」とされた日銀の低金利政策継続に伴う日米金利差拡大の結果だった。
金利差拡大は、その後日銀が利上げに転じたことなどにより縮小に転じた。2025年半ば頃から、米ドル/円は金利差縮小を尻目に上昇に向かった。それを説明できそうなのは、日本の財政規律への懸念を受けた長期金利の上昇だった(図表3参照)。そしてその状況は、最近まで続いた。
「異常な円安」は日本経済衰退化の結果なのか?
2022年以降、ドル円相場が150円を超える円安局面が繰り返されると、これは日本経済の衰退化による構造的な円安との見方も出てきた。ここで日本経済の衰退化のを象徴する指標の一つとなったのは、いわゆる「デジタル赤字」などを含む貿易・サービス赤字だったが、2022年に急増した後は縮小傾向となった(図表4参照)。
「異常な円安」が続くと、どうしてもそれを正当化する理由があるのではないかと考えてしまうのは想像できる。ただ、足下で確認する限り、「異常な円安」の理由とされた金利差は縮小し、そして貿易・サービス赤字も縮小した。それでも、高市政権の財政規律への懸念が払しょくできなければ円安は止まらないのか、介入のような対症療法では止まらないのか。
G7協調介入で反転した1995年の「異常な米ドル安・円高」
冒頭で紹介した、購買力平価からのかい離率が「異常な米ドル安・円高」となっていた動きは、客観的にはG7協調介入で止まり、反転に向かった。介入をきっかけに反転するほどの「異常な米ドル安・円高」だったということではないか。
さて、購買力平価との関係でいえば、1995年とは真逆の「異常な円安」が足下で展開しているようだ。その反転には、日米協調介入だけでは足りないというのは、果たして本当なのだろうか。

