キオクシアホールディングス(285A)が半年足らずで9.8倍に値上がりした理由

2026年の株式市場は折り返し地点を過ぎました。2026年前半のマーケットの関心はキオクシアホールディングス(以下、キオクシア)(285A)に集中しました。キオクシアの株価が大きく上昇したことが主因です。

2026年の大発会(1月5日)のキオクシアの株価は始値が11,350円でした。その後、6月22日に112,700円まで上昇し、現時点における最高値を付けています。半年足らずで9.9倍に値上がりしました。時価総額は60兆円に達し、トヨタ自動車(7203)や三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)を抜いて東証プライム市場で時価総額首位となりました。

時価総額がこれほど大きな企業がごく短い期間で株価が10倍に上昇することはきわめて珍しい現象です。そのカギはNAND型フラッシュメモリを製造するキオクシアの事業構造にあります。

キオクシアの主な製品はNAND型フラッシュメモリです。韓国のサムスン電子、SKハイニックスと並んで世界シェアのトップ3に位置づけられています。NAND型フラッシュメモリもそうですが、半導体チップの製造は、トヨタ自動車や本田技研工業(7267)、パナソニック ホールディングス(6752)のような一般的なメーカーとは少し事業の特性が異なります。

半導体チップの価格は市況で決まる

一般のメーカーは土地、工場、機械などの設備を持ち、従業員を雇って材料を調達して製品を作ります。そして完成した製品を販売して収益を立てます。キオクシアもここまではまったく同じです。異なっている部分は販売する製品の価格です。

通常のモノづくり企業では、販売価格はある程度一定しています。売れ行きが芳しくなくて売れ残りが生じて値崩れすることもありますが、通常はメーカーの希望する小売価格があり、販売した台数の多い少ないによって年間の売上高が決まります。

しかし、キオクシアのような半導体チップメーカーは市況産業に属します。半導体チップの価格は市況で決まり、その時々の需要家のニーズと供給側のメーカーの製造能力によって変動します。完成したチップの価格は上昇することもあれば下落することもあります。

キオクシアの主要製品であるNAND型フラッシュメモリの価格は、2025年後半から大きく上昇しました。AI(人工知能)の進化が加速しており、作業を自動で進める「エージェントAI」が急速に普及するとの見方から大容量データを高速で処理する必要性が高まり、フラッシュメモリの使用数量が急速に増えるとの見通しがこれまでになく強まりました。

ハイパースケーラーによる巨額のデータセンター投資が相次ぎ、それが巡り巡ってフラッシュメモリの価格を押し上げています。2025年後半はメモリ価格が2倍以上に急騰しました。2026年に入っても勢いは止まらず、年初から6割近く上昇しています。

フラッシュメモリの販売数量が伸びて、販売価格も急騰し、これがキオクシアの業績を大きく押し上げています。会社側は予想を出していませんが、市場では2027年3月期の最終利益の見通しが5兆円を超えるとみています。前期の実績は5544億円なので、利益も10倍近い伸びが予想されています。

「第2のキオクシア」が出現する可能性

キオクシアの株価高騰とその背後にある収益の急変は、多分に市況産業という特殊な環境によって生じたと見られます。しかしそれだけのメモリ需要が存在するという状況に現代社会は直面しているのも事実です。

私たちは「第4次産業革命」とも呼ぶべき歴史的な技術革新の渦中にあり、AIの普及は驚くべき速度でますます拡大しています。このような技術革新の波に乗って、業績と株価が大きな変貌を遂げるのは、キオクシアばかりではありません。先端的なテクノロジーを手がける企業から「第2のキオクシア」が出現する可能性が十分にあります。未来に夢を託し、そのような企業を探してみます。

「第2のキオクシア」と期待される銘柄3選

三井化学(4183)

石油化学から、電子材料、農薬、ヘルスケアと大胆に比重を移している。会社の事業区分に沿うと、ライフ&ヘルスケアでは、プラスチック眼鏡レンズ、歯科材料、農薬、不織布などの高収益製品を手がける。モビリティ分野では自動車向けコンパウンド、ベーシック&グリーン・マテリアルズ分野ではポリオレフィン、ウレタンを供給している。注目されるのはICT分野で、マスクブランクス保護フィルムの「ペリクル」をはじめ、高機能接着材や高機能樹脂などの半導体材料、先端パッケージ材料を手掛け、半導体素材メーカーへと変貌しつつある。

【図表1】三井化学(4183):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年7月23日時点)

信越化学工業(4063)

高収益、財務安定度の高い化学メーカー。塩ビ樹脂製造では全米最大の「シンテック」を子会社に有し、欧米と国内で安定した収益を稼ぎ出す。電子材料では、半導体の300ミリウエハを中心に世界トップシェアを握る。フォトレジスト、世界最強レベルの希土類磁石も有力製品として手掛ける。レアアースは中国からの輸入規制に直面しており、日本政府は代替調達の確保を急ぐ。これを受けて信越化学は福井県でレアアースの精錬設備を新設。重要物資の安全保障に向けた取り組みを官民挙げて急ぐ方針。

【図表2】信越化学工業(4063):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年7月23日時点)

HOYA(7741)

高度なオプティクス技術を経営の軸に据え、日本初の光学ガラス専門メーカーとしての地位を確立。三井化学がプラスチック製メガネレンズのトップメーカーだとすれば、同社はガラス製メガネレンズのトップメーカー。コンタクトレンズでも有名。精密加工技術を駆使して半導体微細加工の基礎となるフォトマスク、マスクブランクスで高いシェアを握る。社内に蓄えた豊富な内部留保を基盤に、研究開発とM&Aによって新たな事業領域を開拓。今後10-20年を視野にさらなる変貌と成長を目指している。

【図表3】HOYA(7741):週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年7月23日時点)