ベッセント米財務長官が、円相場において「私が胴元だ」と発言したことが市場を駆け巡り驚きをもたらしましたが、この言葉はその後に続く「だから円に介入するとき、日本が、日銀が、日本の政策当局者が何をするかについて、私にはかなりの洞察がある」にかかっていますね。要は、日銀は利上げをするだろうと言っているわけです。

日本の政策当局者、というのが誰を指すのかは分かりませんがG20後の会見で、日本は「リフレ政策をやめるべきだ」と述べていますので金融政策だけを指しているとも思えません。金融政策だけでなく財政にまで踏み込んだ発言です。日本の政策運営の独立性の話としてはかなり重いですね、かなり異例です。

そもそもここまで為替相場に執着するのはなぜなのか。

2025年の日本の対米貿易黒字は7兆5,200億円で、前年比12.6%の減少です。米側の統計で見ると、2025年の対日財貨赤字は639億ドル。米国全体の財貨赤字1兆2,409億ドルの5%程度で、相手国別では5位です。中国2,021億ドル、メキシコ1,969億ドル、ベトナム1,782億ドル、台湾1,468億ドルと比べても、規模は小さい。円安が米国の不均衡の主因だという話には、数字の裏付けが乏しいように見えます。

米国の金利上昇が中間選挙前のトランプ政権のアキレス腱ですが、仮に米金利上昇を抑制する目的で日本に介入しているなら筋が違っているような気がしますね。日本当局による介入資金捻出のための米債売りが米金利を上昇させるリスクがある、として円安阻止に協力しているという見方もあるようですが。

どういうわけか先週からドル円相場は大きく崩れ出しました。ベッセント財務長官は日米協調介入の成果を強調したいのだと思いますが、為替市場の介入の成果というより機関投資家らの米債売り円債買いによるレパトリ(資金回帰)が起きていることが主因のように見えます。

先週から円金利は低下しているのに対し米金利は上昇しています。そのレパトリの主軸はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産配分の変更思惑やノルウェー政府系ファンドの円債増額報道にあるとみていますが、彼らがこうした動きに出た背景として、ベッセント財務長官の日本に対する一連の介入発言も確かに影響したのでしょう。つまり、ベッセントが尊大な物言いをすればするほど米国は信認を失っていく、と思うのですが、それは考えすぎでしょうか。