米国債券市場では米10年債利回りが9月2日に一時4.80%台まで上昇し、2025年1月以来の高水準を付けるなど債券売り優勢の展開となっています。こうしたなか、金利が上昇する環境でどういった銘柄に投資するのが妥当なのか、という疑問を持たれている方もいらっしゃるかと思います。米国の事例では、米10年債利回りの変化幅(前日比)とS&P500種株価指数・構成銘柄の日次株価騰落率の相関係数(過去20年、2026年9月2日時点)を計算するとリスト1のような結果となります。リストの30銘柄は、金融関連が17(うち銀行が6)、エネルギー関連は7、資本財・サービス関連が6、と3業種で占められています。具体的にはジェイピー・モルガン・チェース[JPM]、バンク・オブ・アメリカ[BAC]、ウェルズ・ファーゴ[WFC]、シティグループ[C]といった銘柄が名を連ねています。銀行については、長期金利の上昇が利ザヤの拡大で業績に対してポジティブに作用する面があると考えられます。他方、エクソンモービル・ホールディングス[XOM]をはじめとするエネルギー関連銘柄やイートン[ETN]のような資本財・サービス関連銘柄も相対的に高い相関係数となっています。こうした点を踏まえると、足元のような金利上昇局面においては金融やエネルギー、資本財・サービスに関連した銘柄に着目するのが一案と考えられます。
一方、財務的なファンダメンタルズ面での金利上昇に対する耐性も勘案したうえで銘柄スクリーニングを行った場合に、どういった銘柄が選定されるのか、といった点も気になるところかと思います。一般的に企業は借入金を活用して事業を継続していきます。こうしたなかで金利が上昇してくると企業の借入に関する利息の支払負担の増加が懸念材料となります。この点では、利息の支払能力が健全と考えられる銘柄を選別する観点からインタレストカバレッジレシオ(EBIT(利払前・税引前利益)÷支払利息)を一つの指標として活用できます。また、株価に対するアプローチの仕方として、将来生み出す利益を金利で割り引いて現在の価値に換算したものと捉える考え方があります。株価収益率(PER)が高い銘柄は、目先の利益よりも何年も先の成長期待を織り込んで買われているケースが多く、金利が上がるとその「遠い将来の利益」の現在価値がより大きく目減りしてしまいます。そのため、PERが高い銘柄ほど金利上昇に弱いとされます。したがって、予想PERの低さが一つの判断基準になると考えられます。ただ、単に割安な銘柄を抽出してしまうと、株価指標面で割安とみられる銘柄に投資したものの、なかなか株価が上昇しない「バリュートラップ」に陥るリスクも伴うことから、業績見通しが改善している銘柄という視点も基準に入れておきたいところと考えます。そこで今回は事業構造と財務データに特殊性のある金融(の一部)と不動産に関連する銘柄を除いたうえで、金利上昇局面で財務面での耐性が期待される銘柄を以下の基準で抽出してみたいと思います。
<抽出条件>
・S&P500種株価指数の構成銘柄
(除く銀行、保険、不動産、投資銀行・証券会社、消費者金融、資産運用・資産管理)
・インタレストカバレッジレシオの直近5年における中央値が各銘柄それぞれの業種内で上位30%以内
・予想PERが各銘柄それぞれの業種内で下位30%以内
・直近4週間における予想EPS変化率がプラス
リスト2をみると、コンサルティングやシステム統合、業務プロセスのアウトソーシングを提供するアクセンチュア[ACN]が基準を満たしています。人工知能(AI)の普及が進み、市場の一部で「AIモデル(ChatGPTなど)の値打ちは相対的に低下し、それを企業の中でうまく使いこなすための橋渡し役となるソフトウエアに価値がある」とみる向きもみられるなか、企業のAI導入を支援する同社の業績成長が期待されています。足元では株価も持ち直しの兆しをみせているものの、年初来の騰落率は3割程度のマイナスとなっています。工場や設備といった固定資産をあまり必要としないことから、アセットライトビジネスモデルであり、潤沢なキャッシュポジションを有するなど保守的な財務体質を保ってきました。また、石油とガスの生産会社であるデボン・エナジー・コーポレーション[DVN]もリスト入りしました。2025年における生産量の約7割が石油と液体天然ガスで、約3割弱が天然ガスとなっています。同社が8月4日に発表した2026年第2四半期決算では売上高・EPSともに市場予想を大きく上回りました。同社は、今年実施したコテラ・エナジーとの株式交換による合併で、350件超のシナジー施策を特定したほか、年間10億ドル(税引前)のシナジー効果を見込んでいます。他方、同社は2026年の負債削減目標(12.5億ドル)を前倒しで達成しており、2027年末までに総有利子負債の削減を行う方針で、コモディティ価格サイクルを通じてレバレッジ比率を1倍以下に維持できる見通し、としています。
このように、米10年債利回りと株価騰落率の相関が高い銘柄や金利上昇局面における財務面での耐性が期待される銘柄があります。足元の株式市場は不安定な値動きとなっていますが、銘柄選びの参考にしていただければと思います。

