ごあいさつ
このコラムを始めるにあたり、「これを買えば、あなたも儲かる」というような内容にはしたくはありませんでした。私が皆さんにお伝えしたいのは、真に経済的な幸せをつかむための「資産運用の王道」です。私はこのコラム執筆にあたり、三つのことを誓いました。「読者を真に経済的に幸せにする」「ポジショントークはしない」「知識や経験を余すことなく伝える」という決意です。
私は金融の世界に足を踏み入れて、もう40年近くになります。2023年までセゾン投信の代表取締役会長CEO(最高経営責任者)を務め、「短期・一括・集中」が当たり前だった投資信託の世界に「長期・積立・分散」という考えを広めるために微力を尽くしてきました。現在は残りの人生の全てをかけて新しい会社を設立し、本格的なアクティブファンドの運用を行っています。
長く金融業界の第一線に立ち続け、新NISAの制度設計にも携わってきた私の経験は、これから語る言葉がでまかせでないことを証明してくれるはずです。自分に都合の良いことを言うポジショントークは一切いたしません。確かな根拠から、真理をありのままにお伝えします。
はじめに:「投資」とは何か?「ゼロサム」ではなく、誰もが得をする「プラスサム」
まず、はじめに「投資」とは何かを考えてみましょう。多くの人が、明日や1ヶ月後の株価の値上がり・値下がりを追うことを投資だと勘違いしていますが、それは当たり外れを競うゲーム、つまり偶然性に依拠した「投機」に過ぎません。考えてみてほしいのですが、例えばトヨタ自動車(7203)の株価が明日100円上がったとして、たった1日でトヨタの本質的な企業価値がそれだけ上がるでしょうか?当然、変わるはずがありません。短期間の値動きでマーケットと勝負をして儲けようとするのは、投資とは呼べないのです。
私が考える本来の投資とは、「投資対象となる企業の生み出す将来の富から、相応の分配を受ける行為」です。投資対象の企業が価値あるモノやサービスを作り上げ、世の中にいきわたり、経済成長が生まれる。その結果として世の中がより豊かになり、リターンが等しく分配されます。誰かが得をして誰かが損をする「ゼロサム」ではなく、誰もが得をする「プラスサム」こそが投資の真髄であり、立派な社会貢献とさえいえる清い行いなのです。
今ではなく、将来を見据えるからこそ期間は長期になります。一般の生活者は機関投資家と違い、日々のマーケットに一喜一憂しながら短期間で成果を出す必要がありません。投資の「時間」という一点においては、自分の都合でじっくりと時間をかけられる素人の方が断然有利なのです。したがって、一般の生活者に最適なのは長期投資となります。
お金の「価値創造」機能に目を向ける
そして今、私たちが直視しなければならないのが、お金の「価値創造」機能です。お金には「価値尺度」「交換」「価値保存」だけでなく、お金を生む機能があります。低金利下の預金やタンス預金ではお金を殺していることになります。
日本銀行の資料(2026年3月末現在)によれば、日本の家計の金融資産のうち47.2%が現預金となっており、株式や投資信託等は23.6%程度です。一方、米国は現預金が10.7%、株式や投資信託が56.7%、ヨーロッパでも現預金31.1%、株式や投資信託等が37.6%となっており、日本の現預金の多さと株式や投資信託等の割合の少なさが際立っています。
30年にわたって低金利に慣らされた結果、預貯金に期待しなくなった人が増え、お金がお金を生むという価値創造の機能を忘れてしまったのです。モノの値段が下がるデフレ下ではタンス預金でも正当化できましたが、インフレ下では救いようがありません。
低金利に慣れ、金利上昇で苦境に立たされる日本国民
現在、インフレはグローバルなメガトレンドとなっています。ロシアによるウクライナ侵攻を契機としたエネルギー価格の高騰だけでなく、環境に配慮するESGの潮流によるエネルギーの足かせ、そして生成AIを支えるデータセンターの桁違いな電力需要などを背景に、インフレは近々収まるとは考えられません。インフレ率2%が10年続けば、手元の現金100万円は10年後には実質82万円ほどの価値しかなくなってしまいます。
本来であれば、インフレに対して中央銀行は政策金利を引き上げて物価上昇を抑えます。しかし日本は長く「低体温(低金利)」に慣れきってしまいました。金利が1%上がっただけで潰れる中小企業が少なくなく、住宅ローンも8割以上が変動金利に偏重しているため、金利上昇は多くの人を苦境に立たせています。国債の発行残高は1200兆円を超え、日銀が国債の5割程度を保有しているため、金利を上げれば10兆円規模の利払い負担増となってしまいます。
政府の借金はインフレによって実質的に目減りしますが、国民はインフレに見合った預金金利を受け取れないため、実質的な価値の目減りに苦しむことになります。これは富の政府への移転であり、いわゆる「インフレ税」と呼ばれる増税と同じです。国民の苦痛の上に成り立つこの構造は、そう簡単には変わりそうにありません。
インフレ時代を生き抜くために、投資と向き合う
だからこそ、お金の価値創造機能に目覚め、インフレを克服できる株式投資の場にお金を置くことが不可欠です。株式はインフレになると売上や利益が名目の数字として増えるため、極めて合理的にインフレを克服できるのです。
預貯金の価値目減りという恐ろしいシナリオを避けるためにも、正しく投資と向き合ってください。それが、これからの時代を生き抜くための国民一人一人の生存戦略なのです。

