AIで急拡大するクラウド市場、大手3社が7割を握る勢力図に
米クラウド専門調査会社のSynergy Research Groupは7月30日、企業のクラウドインフラストラクチャサービスに対する支出が、第2四半期時点で前年同期比430億ドル以上増加し、1430億ドルに達したと発表した。前年同期比での伸び率は過去8年間で最高となる43%に達した。11四半期連続のプラスとなり、この11四半期で市場規模は2倍に拡大した。
高い伸びを示している背景にあるのがAI(人工知能)技術だ。AIがより幅広いクラウドサービスにおいて機能の強化と高い成長を促している。また、過去2四半期において、世界市場における米国のシェアが拡大しているという。市場シェアトップのアマゾン・ドットコム[AMZN](以下アマゾン)のクラウドサービスであるAWSのシェアは28%に達しており、マイクロソフト[MSFT]のアジュールとアルファベット[GOOGL]のグーグル・クラウドを加えた3つのサービスで市場全体の7割近くを占めている。
7月31日の米CNBCの記事「Alphabet, Amazon and Microsoft added nearly $1.5 trillion in combined value this week(アルファベット、アマゾン、マイクロソフト3社の時価総額は、今週合わせて1.5兆ドル近く増加した)」によると、クラウド事業を手がける3社の株価は堅調で、AI投資のリターンが実を結びつつある。加えて、純利益は過去最高となったと指摘している。「投資家はもはや、人々がAIを取り入れているかどうか、あるいはチップや演算能力に対する真の需要があるかどうかを疑問視することはなくなった」とする市場関係者の見方を取り上げている。
クラウド大手3社の直近決算、AI事業が押し上げる驚異的な成長
クラウド3社の直近の決算を確認しよう。
アマゾンは純利益3.4倍で過去最高、営業利益の6割を稼ぎ出すAWS
アマゾンが7月30日に発表した第2四半期(2026年4-6月)の売上高は前年同期比20%増の2006億600万ドル、純利益は3.4倍の626億4700万ドルだった。AI向けクラウド事業の成長が加速したほか、出資する米AI新興企業アンソロピックの株式評価益が純利益を押し上げ、純利益は過去最高となった。
AWSの売上高は前年同期比37%増の422億ドルと18四半期ぶりの高い成長率を記録した。増収率は前期(2026年1-3月)の28%増から9ポイント高まり、2022年以降で最高となった。営業利益は64%増の166億ドルだった。アマゾン全体の売上高に占めるクラウド事業の割合は約21%である一方、営業利益では約60%を占める稼ぎ頭だ。
アルファベットは売上高と純利益が過去最高、クラウド事業の成長率は2社を上回る
アルファベットが7月22日に発表した2026年4~6月期(第2四半期)決算は、売上高と純利益が過去最高を更新した。クラウド事業の売上高は前年同期比82%増、営業利益は3.1倍に拡大した。クラウド事業の成長率は他の2社を上回る。クラウド事業の受注残は5140億ドルと、3月末から1割増えた。
マイクロソフトは売上高・純利益ともに2桁の伸び率、AIクラウドも増収率アップ
マイクロソフトは7月29日に2026年度第4四半期(2026年4-6月期)の決算を発表した。売上高、純利益ともに2桁の伸び率となった。日本経済新聞の7月30日の記事「Microsoft、4~6月3割増益 AIクラウド4年ぶりの増収率」によると、AIの計算処理に使うクラウド基盤「アジュール」などの売上高は前年同期比43%増と、増収率は約4年ぶりの高さとなった。
激化するAI設備投資、成長率から「稼ぐ力」を問われるフェーズへ
AIクラウド市場は成長率を競う段階から、どのプレイヤーが最も効率よく稼ぐかを競う次の段階に入ったようだ。決算では、各社の増収率だけではなく、AIに関連した設備投資をいかに収益化できているかという点に注目したい。
アマゾンは2026年の設備投資額について、従来予想より200億ドル多い2200億ドルに引き上げると発表した。アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は30日の決算説明会で「AWSは将来的に年間売上高が1兆ドル規模の事業になる可能性が極めて高い」と述べ、成長余地の大きさを強調した。
アルファベットは2026年通年の設備投資を1950億~2050億ドルと4月時点から150億ドル上積みした。7月23日付の日本経済新聞の記事「アルファベット純利益18兆円、クラウド好調 スペースX上場も恩恵」は、アマゾンのフリーCF(純現金収支)が4~6月期に433億ドルのマイナスとなったことを取り上げ、2026年に入って潮目が変わっていると指摘している。
アマゾンとアルファベットは「投資期」に、キャッシュフロー・マトリックスから見る各社の立ち位置
はたして、それに見合うだけの具体的な利益のリターンがあるのか、そして、それは投資家の期待したスピードに追いついているのか、市場は四半期ごとの決算や関連した報道に一喜一憂している。以前も紹介したキャッシュフロー・マトリックスで、改めて四半期ごとの3社の「稼ぎ」と「投資」のバランスを確認しておこう。
キャッシュフロー・マトリックスは縦軸に投資キャッシュフロー、横軸に営業キャッシュフローをとったものである。投資キャッシュフローは将来のキャッシュを生み出すために使われる先行投資である。企業が成長している時期には、キャッシュが設備投資等に使われるためキャッシュが出ていき、基本的にはマイナスとなる。投資が進み、キャッシュが稼げるようになると、リターンが生み出され営業キャッシュフローがプラスとなる。
多くの企業は営業キャッシュフローがプラスで投資キャッシュフローがマイナスであることから、以下の図の右下の領域に入る。その中でも稼ぎよりも投資の方が多い場合には「投資期①」に入り、稼ぎのほうが投資よりも大きければ「安定期②」となる。
企業に投資先がなく、それまでに投資してきたものを売却するようになると、投資キャッシュフローはプラスに転じ「停滞期③」となる。投資をしなければ自ずと稼ぎも減ってくるため、営業キャッシュフローが減少する「低迷期④」に入り、さらに稼ぎが減少すると「後退期⑤」となる。そして営業キャッシュフローがマイナスとなると「破たん期⑥」となる。
「潮目が変わった」ビッグテック─莫大なAI投資は正当化されるのか?
前述の日本経済新聞の記事で「潮目が変わった」と指摘されているように、アマゾンとアルファベットについては、これまで「安定期」だったキャッシュフローは、2026年に入り「投資期」に移行している。テクノロジー企業にとって、AI関連の設備投資の増加は正当化されるのか、莫大な投資負担を上回るリターンが期待できるのか、今後見極める必要がある。
石原順の注目5銘柄
出所:マネックス証券ウェブサイト

