人工知能(AI)の進化を背景に半導体への注目が高まっており、関連報道を見ない日はないほどになっています。7月22日に公開した「エヌビディアやキオクシアなど各半導体企業の製品と成長力・利益率を捉える」では、半導体製品の代表的な区分であるIC(集積回路)とIC以外のうち、ICについてご紹介しました。今回は「IC以外」に焦点を当てて投資家としての視点から説明していきます。
光ファイバーなど光通信関連製品の重要性が高まる
IC以外:「光電融合」の実用化も期待されるオプトエレクトロニクス
IC以外の半導体製品としては、まず、オプトエレクトロニクスがあげられます。オプトエレクトロニクスは、光学(Opto)と電子工業(Electronics)の合成語です。「電気信号→光」、「光→電気信号」に変える、という機能を備えた技術を指します。スマートフォンのカメラとして用いられているCMOSイメージセンサーやLED、レーザーダイオードなどが代表製品です。WSTSの予測では、オプトエレクトロニクス分野は、比較的緩やかな成長が見込まれています(図表1)。
足元では、生成AIの学習・推論において膨大なデータをGPU間で高速にやり取りする必要があり、光ファイバーなど光通信関連製品の重要性が高まっています。さらに将来的には、半導体同士を接続する電気配線の一部を光配線に置き換える「光電融合」の実用化も期待されています。
光電融合では、これまで電気信号で行っていたデータ伝送を光信号に置き換えることで、消費電力の低減や高速・大容量データ通信を実現できる可能性があります。光は電気よりも伝送中のエネルギー損失が少なく、長距離・高速通信に適していることが背景にあります。光通信関連企業は足元ではAIデータセンター向けの需要拡大、中長期的には光電融合の実用化という二つの成長機会を有していると考えられます。関連企業としては、光デバイスを供給するルメンタム・ホールディングス[LITE]やコヒレント[COHR]があります。
IC以外:中長期的な成長ドライバーとして期待されるディスクリート
複数の機能の素子を1つのチップに載せたものを集積回路(IC)と呼び、メモリーやマイクロプロセッサー(MPU)、ロジックICなどが代表例です。一方、ディスクリートはトランジスタやダイオードなど単一機能を持つ半導体の総称であり、代表的な製品として電力制御を担うパワー半導体があげられます。パワー半導体は電気自動車(EV)に搭載されるほか、AIデータセンター向け電源、テレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、信号機、通信機器など幅広く使用されており、私たちの生活を支えています。
投資家の視点としては、EVへのシフトに伴う「1車あたり搭載金額の増加」と「次世代材料への移行」が注目されます。ガソリン車からEVへ移行する際、モーターや高電圧バッテリーを制御するために必要なパワー半導体の数は増え、半導体の搭載金額も増加します。
さらに、足元では、従来のシリコン製から、電力ロスが少なく高効率な「SiC(シリコンカーバイド)」への移行が進んでいます。小型化・高効率化に適したGaN(窒化ガリウム)についても一部用途で採用が進みつつあり、次世代パワー半導体への置き換えが中長期的な成長ドライバーとして期待されています。ディスクリート関連の有力企業としては、オンセミコンダクター[ON]やローム(6963)があります。
IC以外:センサー&アクチュエーターは、比較的落ち着いた成長にとどまるか
最後に、センサー&アクチュエーターという製品もあります。ここでのセンサーは、温度や圧力などの物理的な変化を検知するデバイス、アクチュエーターは電気信号を物理的な動きへ変換するデバイスを指します。ジャイロセンサー(物体がどれくらいの速度で向きを変えているかを測定)や温度センサー、磁気センサーなどの各種センサーのほか、モーターなどのアクチュエーターが電子機器に搭載されています。
最終製品として最も重要な市場の一つであるスマートフォンの普及が進み、さらなる成長余地が乏しくなるなか、当面は比較的落ち着いた成長にとどまるとみられています(図表3)。センサー&アクチュエーターにおける関連銘柄としては、米国のアレグロ・マイクロシステムズ[ALGM]やセンサータ・テクノロジーズ・ホールディング[ST]があげられます。
成長力と利益率でIC以外の各製品・各企業を取り巻く環境を捉える、売上高が2桁成長しているのは?
オプトエレクトロニクス分野では、ルメンタム・ホールディングスの売上高成長率が突出
各企業の売上高成長率と営業利益率を確認すると、製品分野・企業毎に少々異なる景色が見えてきます。オプトエレクトロニクス分野では、データセンター向けの光学部品を扱うルメンタム・ホールディングスの売上高成長率が突出しています。光や高速通信に強いインジウムリンを用いた先端デバイスを提供しており、AIインフラやクラウド向けの高速データ伝送を支えています。
同社の経営陣は2026年4月時点で2028年までの生産予定分は、2四半期以内に完売するだろう、と需要の強さを示しました。また、光通信関連製品を手掛けるコヒレントが比較的バランスの取れた売上高成長率と営業利益率をあげている点も注目されます。
ディスクリート関連とセンサー&アクチュエーター関連では、売上高が2けた成長を実現している企業も
ディスクリート関連とセンサー&アクチュエーター関連については、他の製品分野と比較すると突出した成長性・収益性をあげている企業が見当たりませんが、ダイオーズ・インコーポレーテッドやアレグロ・マイクロシステムズのように売上高について2けた成長を実現している企業もみられます(図表5、図表6)。
ここまでみてきたように半導体と一口に言っても多様な製品分野があり、関連する企業も様々です。各企業の製品や事業領域、競合企業を理解することは、投資判断を行う上で有用と考えられますのでご参考にしていただければと思います。

