宇宙経済の市場規模は2030年代に162兆円規模に拡大か?
7月9日のフォーブスの記事「スペースXの先にある、はるかに大きな宇宙経済」によると、グローバルな宇宙経済の規模は2025年時点で6260億ドル(約102兆円)に達しており、2034年までに1兆ドル(約162兆円)を突破すると予測されている。宇宙、衛星産業に特化した世界的な市場調査会社、ノバスペース(Novaspace)の最新の宇宙経済レポートを引用したものだ。
記事によると、宇宙における活動は何年も前から加速しており、5年前なら不条理に思えたほどのペースで、新興企業がユニコーン企業の評価額を達成しているという。これらの企業の一部は、スペースXのおかげで存在している。スペースXが主導した安価で日常的な打ち上げへの移行により、10年前には存在し得なかった、まったく新しいビジネスのカテゴリーが成立するようになったからだと指摘している。
そして、ライト兄弟が初めて空を飛んだとき、飛行という行為が見世物に過ぎなかったのが、いつの日か一般の人々が何も考えずに利用するものになったという歴史を例に取り、宇宙ビジネスは何十年もの間、同じ「中間」の状態、つまり「素晴らしいが、まだ当たり前ではない」という状態に置かれていた。しかし、今、宇宙技術が私たちをどこへ連れて行ってくれるかをようやく想像できる段階に達し、それを形にするための資本と確信が、史上初めて揃ったと結んでいる。
スペースX[SPCX]、史上最大規模のIPOと乱高下する株価
イーロン・マスク氏率いるスペースX[SPCX]の株価が120ドルを割り込んだ。スペースXは6月に米ナスダック市場へ上場した。上場時の資金調達額は約750億ドルと、史上最大規模のIPO(新規上場)となった他、通常の大型上場とは異なり全体の30%を個人投資家向けに割り当てたことなど大きな話題を呼んだ。
公開価格135ドルに対して初値は150ドルと公開価格を約11%上回った。初日の終値は160.95ドルとなり、時価総額は約2.1兆ドルに達し、米メタ・プラットフォームズ[META]などを超え、米国市場で時価総額6位へ浮上した。その後、6月16日には、一時、株価は225ドルを超えるところまで値上がりしたが、直近では下落が続いており、前述の通り120ドルを割り込んでいる。上場から1ヶ月あまりが経過したが、株価のボラティリティは大きい。
マスク氏の次なる布石、テスラとの統合とAIへの資源集中
スペースXとテスラ[TSLA]の最高経営責任者(CEO)を兼務するマスク氏は、両者の統合を目指していると言われている。
6月11日の日本経済新聞の記事「マスク氏の究極目標はスペースX・テスラ統合IPOテコにAIへ資金」によると、両社を率いるマスク氏の利点として、経営資源が分散してきた「マスク株式会社」とも言える企業群の資金や技術を、今後の主戦場であるAI分野に集中できることだと指摘している。
一方で、相乗効果が出なければ、事業を多角化した複合企業の価値が市場の投資家から割り引いて評価される「コングロマリット・ディスカウント」に直面するリスクをはらんでいるという。
株価を左右する2つの要因、ロックアップ解除とナスダック早期組み入れ
今後、株価に大きな影響を与えると考えられるのが需給動向だ。これから数ヶ月でインサイダー(内部関係者)の売却制限が段階的に解除されるため、さらなる需給悪化(売り圧力)が警戒されている。上場初期の買い需要に対して、最大の売り圧力(需給悪化リスク)となるのが、内部関係者(インサイダー)の売却制限が解けるロックアップ解除である。今回のIPOでは段階的な解除スケジュールが組まれている。
その一方で、ナスダック100指数の構成銘柄として早期組み入れが決定したことは短期的には需給面でのプラス要因となる。ナスダック100指数への早期組み入れにともない、推定300億ドル-400億ドル規模の資金流入が発生すると試算されている。組み入れ日である7月下旬予定に向けて、市場では資金の流入を先回りした買いが入りやすく、足元の株価(150ドル前後)を下支えする強力なクッションとなることが想定される。
上場後初の決算発表へ、焦点はAI部門の収益性
スペースXの2026年4-6月期決算は、米国時間8月4日(日本時間5日)に発表される予定だ。スペースXは上場に先立ち5月に公表した目論見書で、26年1-3月期の売上高が前年同期比15%増の46億9400万ドル、最終損益が42億7600万ドルの赤字(前年同期は5億2800万ドルの赤字)だったと明らかにしている。
7月21日の日本経済新聞の記事「スペースX、8月4日に上場後初の決算発表 AI部門の収益性が焦点に」は、2026年4-6月期決算について、株価が軟調ななか、マスク氏らが示す成長見通しや新規事業として投資を拡大している人工知能(AI)部門の収益性が焦点となると指摘している。
アークのキャシー・ウッド氏はなぜスペースXの株式を買い増しているのか?
アーク・インベストメント・マネジメントを率いる著名投資家、キャシー・ウッド氏は、自社の主要ETFを通じてスペースX株を買い入れている。ウッド氏は、上場前からはもちろん、スペースXがナスダック市場へ上場した直後から「破壊的イノベーション」の核心として、主要ETFを通じて連日のように大規模な買い付けを行っている。
とりわけ宇宙ビジネスを直接ターゲットとする「ARK宇宙探査&イノベーションETF」では、上場直後からスペースXが最大の組み入れ銘柄へと急浮上している。また、旗艦ファンドである「ARK Innovation ETF」は、テスラに並ぶ次世代の成長ドライバーとしてスペースXを大量に組み入れ、ポートフォリオの主軸に据えている。
足元で40億ドルを超える純赤字を計上しているスペースXへの投資については慎重な見方もあるものの、ウッド氏はスペースXを単なるロケット会社ではなく、地球規模の通信、計算インフラを提供する企業と定義している。傘下のAI企業「xAI」との連携や、軌道上データセンター構想は、ARKが掲げる「人工知能(AI)」と「宇宙探査」の2大テーマが交差する完璧な実例であり、他社が真似できない独占的価値を生み出すとみている。ウッド氏がスペースXを買い続けているのは、現在の赤字ではなく10年後の宇宙・通信・AI市場の支配力に賭けているからだ。
大型IPOラッシュへの警鐘、投資家が見るべき注意点とは?
スペースXの上場を経て、このあと2026年中にはAI企業のアンソロピックといった大型の上場も控えている(オープンAIについては上場の延期が取り沙汰されている)が、IPO投資には注意が必要だ。
少し古い記事になるが、1月11日のブルームバーグの記事「AI巨大企業の上場は審判の時、ITバブル前夜と類似」は、「ヘクトコーン」と呼ばれる企業価値が1000億ドルを超えるスタートアップ企業が2026年にIPOに踏み切る可能性があるが、歴史家に言わせると、その経緯はかつてのドットコム・バブル崩壊の前兆と重なると指摘している。
特に、収益性が明確でない成長期待型の企業の場合は、初値で評価されても公開後のパフォーマンスが芳しくないというケースが多々見られる。IPOの成功は市場のボラティリティや金利環境、マクロ経済情勢に左右されやすく、タイミングや需給環境も重要だ。IPO後の株価パフォーマンスは銘柄により大きく差が出るため、ブームに乗らず個別に収益性や需給の動向を見極めることが必要になろう。
石原順の注目5銘柄

