>> >>注目の金、銀、プラチナ投資!【前編】富裕層のインフレ対策に使われる理由

意外と知らない?金価格の特徴

せっかく投資するのであれば、できればキャピタルゲインも狙いたいところである。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が紹介しているデータを用いて、金価格の特徴について解説したい。

まず、過去20年間の主要資産のパフォーマンスを比較すると、新興国株が年率14%で最も高く、次がREIT(不動産投資信託)であり、金は3番目で年率11%程度である。なお、米国株は4番目の9%超であり、実は金のほうがリターンが高い。この点を知らない投資家は非常に多いと考えられる。むしろ、ほとんどの投資家はそうであろう。

また、インフレ率が3%を超えた場合、金のパフォーマンスは年率15%超に跳ね上がる。これは、インフレ率が3%以下の場合の6%超を大きく上回る。さらに、金とS&P500の相関関係をみると、通常時では相関はほとんどない。しかし、S&P500がマイナス2標準偏差を超える下落となった場合には、金は逆相関となり、むしろ価格が上昇していることが分かっている。つまり、これは株価の下落に備えるため、金を保有しておいたほうがよいことを意味する。これこそが、私が前編で解説した「資産ポートフォリオの保全」のために金を保有するということである。

過去のブラックマンデーやヘッジファンドLTCMの損失による市場の混乱、ドットコム・バブル崩壊、2001年9月11日の同時多発テロ、2002年の米リセッション(景気後退)、2008年の世界金融危機、2010年から2011年にかけての欧州の政府債務危機、2016年のブレグジット(英EU離脱)に関する国民投票時の混乱、そして2020年のコロナショック時のすべてにおいて、株価は下落したが、金価格は上昇している。このような過去の「事実」を理解していれば、金を資産ポートフォリオに入れることがいかに重要かを理解できるだろう。

脱炭素社会に向けて、プラチナ・銀市場の潜在的な可能性

プラチナについては、需要の半分を占めるディーゼル車の自動車触媒向けの需要は、今後低迷せざるを得ないだろう。しかし、水素製造装置や燃料電池車(FUEL CELL VEHICLE=FCV)の動力源の電気分解装置向けの需要の増加が材料視されるだろう。バイデン米政権の誕生で、「クリーンエネルギー」という新たな材料が浮上しており、これが世界的な「脱炭素社会」の構築につながりつつある点も追い風である。

また、プラチナ市場における投資需要のシェアは、2015年には需要全体の3.8%だったが、2020年には20%に拡大している。2020年のETF購入量は、前年比3%減だったが、バー・コイン需要は同6%増となっている。2020年の投資需要全体も前年比で4%増えており、ファンダメンタルズ材料に目が向けば、今後も投資需要の拡大がプラチナ需給を引き締める可能性があるだろう。

金/プラチナレシオの過去平均は0.9倍である。今の金価格を基準にすれば、プラチナ価格の理論値は1,900ドルを超える。これは、現在の価格の6割以上も上の水準である。それだけ、現在のプラチナ価格が割安に放置されている可能性があるともいえる。この点もプラチナ価格の上昇の可能性を感じさせる。

また、銀についても、2021年の需要は8年ぶりの高水準となる見通しである。また、銀は電化製品、太陽光パネルなどに多く使用されており、世界の経済活動がコロナ禍から回復すれば、需要も増加するとみられている。このような材料も、長期的な下支えになる可能性は十分にあるだろう。

このように、今後は金だけでなく、プラチナと銀にも潜在的な価格上昇の可能性がある。貴金属投資ではリスク分散だけでなく、キャピタルゲインを狙うことも可能であり、今後さらに注目度が高まっていくのではないだろうか。

貴金属のボラティリティの傾向

私は、貴金属に投資する際には、基本的には金を中心に据えるのがよいのではないかと考えている。それは、市場流動性の観点からも極めて合理的だと思うからだ。金はもっとも流動性の高い貴金属であり、コモディティである。金の世界市場における1日あたりの取引額は、米国の代表的な株価指数であるS&P500の構成銘柄の売買代金を下回るが、米国財務省短期証券(T—Bill)よりも多く、主要市場の中では2番目に多い。無論、ユーロ/円などの為替取引よりも多い。それだけ多く世界で取引されているのである。

また、金のボラティリティ(価格変動率)も非常に低い。年率のボラティリティは4月19日時点で13.63%、過去1年平均でも15.81%である。WTI原油先物が40%程度であることと比較すると、かなり落ち着いた値動きであることがわかる。その意味でも、投資対象として安心して取り組むことができるだろう。

一方、同じ貴金属でもプラチナと銀は相対的にボラティティが高い。ちなみに、プラチナのボラティリティは4月19日時点で25.59%、1年の平均では30.30%と、金の2倍近い変動率である。また、銀のボラティリティは4月19日時点で21.85%、この1年の平均では38.00%と、金を大きく超えている。このように、プラチナと銀のボラティリティは金よりもかなり高い水準にある。

貴金属市場の見方の重要なポイント

金とプラチナの相関係数は0.60程度であり、それほど高いわけではない。一方、金と銀の相関係数は0.80であり、比較的高い。この点も考慮したうえで、投資配分を検討するとよいだろう。

例えば、投資する配分を、金を3、プラチナを2、銀を1とすれば、全体的に安定した貴金属のポートフォリオになるだろう。ただし、これはあくまで参考であり、保有する量はそれぞれのリスクと資金量などを考慮したうえで判断するようにしたい。

また、これも重要なポイントだが、購入の際には、時間と資金を十分に分散させて買うようにすることが肝要である。一度に大きく買うことは避け、時間を分散させることで買い値を平均化させることが重要である。

円建ての貴金属の場合、ドル建ての貴金属価格と米ドル/円相場が変動要因になる。米ドル相場が上昇すると、ドル建て貴金属価格は理論上は下落することになる。しかし、米ドル/円相場は円安になるため、ドル建て貴金属価格の下落分を相殺することになる。逆に、ドルが下落した場合には、通常はドル建て貴金属価格は上昇するが、米ドル/円相場は下落し、円高になるため、円建て貴金属は思ったほど上昇しないということが起こり得る。

したがって、円建て貴金属価格の上昇あるいは下落のトレンドの強さは、米ドル相場とドル建て貴金属価格のそれぞれの勢い次第ということになる。もっとも、円建て貴金属価格を見る際には、基本的にドル建て価格の方向性をよく見ておけばよいだろう。投資を検討する際には、為替相場の要因はあくまで付随的なものであると割り切り、ドル建て価格の動向をよく見ておけば十分だろう。