先週のゴールド

金相場は続落しました。

週初は、過熱する米中貿易摩擦への懸念から新興国通貨が売られ、安全資産とされるドルの買いを誘ったことが売り材料視されました。アルゼンチンペソやトルコリラ、南アフリカランド、ブラジルレアル、インドネシアルピア、インドルピーなどの新興国通貨が下落しており、これらの国の金の購買力の低下が懸念されました。一方で、中国人民銀行(中央銀行)が人民元を安定化させる動きにあることは、金相場の下支え要因となりました。その後は上昇しました。ドルの軟化が支援材料となりました。

また、英国のEU離脱交渉に関して、EU主要国であるドイツが合意実現に向けて、離脱後の英EUの経済関係について細部を詰めず、あいまいなままにする用意があると報じられたことを受けてドルが下落した一方、ポンドとユーロが上昇したことが金相場を下支えました。その後もドル安基調が続いたことで、アジア勢の現物買いが入ったことや、ショートカバーも金相場を押し上げました。ただし、米国が中国に対して新たな上乗せ関税を課すとの懸念が上値を抑えました。

一方、インドや中国などの伝統的な主要金購入国だけでなく、東南アジア各国からも、最近になって投資目的での現物買いが促されているとの指摘が聞かれました。週末には下落しました。市場予想を上回る米雇用統計の発表を受けて、9月の米利上げがほぼ確実視される中、ドルが対主要通貨で上昇したことが売りにつながりました。8月の米雇用統計によると、非農業部門就業者数の増加幅は20万1,000人と前月から加速し、平均時給の前年比伸び率が2.9%と9年ぶりの大きさとなりました。これを受けて、米国経済が米中貿易摩擦の激化を乗り切っているとの見方が強まり、金利が上昇したことでドル高基調に転じたことが金相場の下落につながりました。

 

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・シェアの保有高は8月31日の755.16トンから9月7日には745.44トンに減少しました。投資家の売りは止まる気配を見せておらず、金離れの動きは全く止まっていません。

 

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋のポジションは9月4日時点で1万3,497枚の売り越しとなり、前週からネットの売り越し幅が1万434枚増加しました。買いポジションが6,165枚減少し、売りポジションが2,826枚増加したことで、ネット売り越しが拡大しました。金相場の上値が重い状況が続く中、投機筋は買いポジションを解消する一方で、新規の売りポジションを積み増しており、再び売り姿勢を強めています。

円建て金相場は下落しました。ドル建て金相場の下落に加え、ドル円相場がやや円高基調になったことが下落につながりました。

縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド

金相場は1,200ドルを挟んだ値動きが続くと考えます。これまでの金相場は、金利上昇や世界的な貿易摩擦、新興国市場の通貨危機を背景に、上値の重い状況が続きました。投資家はリスク回避の際にドルを安全資産として買い、従来から安全資金とされる金を買う動きを見せなかったばかりか、むしろ売りを出しており、その地位は損なわれたといえそうです。こうなると、金を保有しておきたいと考える向きは、一部の新興国に限られる可能性があります。

GFMSによると、8月のインドの金輸入は前年同月比116.5%増の100トンに倍増し、1年3カ月ぶりの高水準となりました。8月はインド国内の金価格が7カ月ぶり安値となったことを受けて、宝飾業者の購入が増加したもようです。ムンバイでは8月に5日間にわたり宝飾品の国際展示会が行われました。2018年1-8月のインドの金輸入量は前年同期比12.6%減の532.1トンとなっています。

ただし、インドルピーが依然として下落しており、金相場が上昇する可能性が高いことから、9月の金需要は穏やかになるとの指摘があります。その一方で、祭礼用需要で10月以降の金輸入は再び増加するとの見方もあります。いずれにしても、今後の実需面はインドの動向に左右されそうです。一方、欧米の投資家は依然として売り姿勢です。金ETFの保有高は減少傾向が続いています。ドル高・金利上昇を背景に、金保有の意味を見出せないと考えているもようです。

また、投機筋も同じです。金相場がなかなか浮揚しないため、COMEX金先物市場では、投機筋のショートが再び記録的な規模に膨らんでいます。何らかの理由で金相場が上向かない限り、買い戻しが入りづらいといえます。こうなると、半ば外圧的な要因がなければ、金相場は上昇しづらいといえそうです。インフレ圧力が強まるなど、明確な指標が材料視されない限り、当面は1,200ドルを挟んだ水準での推移が続きそうです。しかし、それでも金相場はバリューとしては相当割安になっているとの見方は変わりません。実質金利との比較でも2割程度割安と判断できます。過去の米国の消費者物価指数(CPI)との比較でも、金相場は今後2年で2割以上戻してもおかしくないことが指摘できます。したがって、市場参加者のマインドや理解度に変化が見られるかが、金相場の反転のポイントになりそうです。1,200ドル前後で下げ渋り、反発基調に入れば、1,220ドルまでの上昇となり、さらにこれを上抜けると、1,250ドルをめざす展開になると考えます。

円建て金相場は一時4,400円を超えましたが、これを維持できずにいます。再び4,300円を目指す可能性もありますので、いまは基調が反転するのを慎重に見極めたいところです。そのうえで、4,400円を固めることができれば、徐々に買いを検討したいと考えます。

 

プラチナ

プラチナは続落しました。

金相場の上値の重さもあり、軟調な推移が続きました。世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドが対ドルでさらに下落し、一時15.69ランドをつける場面があるなど、新興国通貨の下落も重石になった可能性があります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場での大口投機筋のポジションは、9月4日時点で1万1,916枚の売り越しとなり、前週からネット売り越し幅が940枚拡大しました。買いポジションが1,197枚増加しましたが、売りポジションも2,137枚増加したことで、ネットの売り越し幅が拡大しました。割安と判断して買いを増やす投機筋がいる一方で、売り姿勢をさらに強める向きも存在しており、強弱感が交錯しているといえます。もっとも、全般的な売り姿勢は変わっておらず、相場が反転するきっかけが見つからない限り、簡単には反転することはないといえます。

引き続き、金相場の動向を見ながら、780ドル前後を固めつつ、800ドルを明確に上抜けていくかを注視することになります。材料が不足しているだけに、金相場の動向と先物市場での投機筋の投資行動に注目しておきたいところです。一方、ドイツ連邦自動車局(KBA)発表の乗用車統計によると、8月の新車登録台数は31万6,405台となり、前年同月比24.7%増でした。9月に発効するEUの国際統一燃費試験法(WLTP)を前に、フォルクスワーゲン(VW)グループが旧法適用モデルの販売促進キャンペーンを展開したことが影響しました。また、ドイツ自動車工業会(VDA)公表の乗用車の暫定統計によると、8月の生産台数は前年同月比31%減の31万400台に落ち込んだ。WLTPについて、対策遅れによる在庫積み上がりを避けたいメーカーが生産を調整したもようです。8月の輸出台数も34%減の23万4,000台と不振でした。また、ディーゼルエンジン車が国内販売全体に占める比率は前年同期の37.7%から32.6%に低下しました。この傾向は、プラチナ相場にはネガティブ要因といえます。

円建てプラチナ相場は横ばいでの推移となりました。節目の3,000円を超える場面がありましたが、これを維持できておらず引き続き上値の重さが確認できます。少なくとも、現状の水準を維持しながら、節目の3,000円を超えて維持する展開となれば、徐々にかつ慎重に買い始めることを検討したいところです。下落局面での押し目買いは避け、上昇基調に戻るのを待つ姿勢が賢明と考えます。 

縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー

シルバーは続落しました。ほぼ一貫して下落しましたが、9月4日には一時13.97ドルまで下落する場面があるなど、きわめて軟調な展開となりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場での大口投機筋のポジションは、9月4日で2万8,974枚の売り越しとなり、前週からネットの売り越し幅が1万2,376枚拡大しました。買いポジションが3,479枚増加した一方、売りポジションが8,897枚増加したことで、ネット売り越し幅が拡大しました。投機筋の売り姿勢をさらに強まっており、この流れは止まりそうにありません。特に9月4日に急落した際には、投機筋の投げ売りや新規売りが入った可能性が高いといえます。一部には下落基調の継続で機械的な売りが出ている可能性もあり、このような取引も相場水準を押し下げていると考えられます。繰り返すように、銀市場のファンダメンタルズ材料はほどんとみられないことから、現物市場からの買いを期待するのは難しい情勢です。このような市場環境にあることを常に念頭に入れながら、銀相場に影響を与える材料を注視ながら対処したいところです。まずは14ドル前後で下げ止まり、反発基調に入ることができるかを確認したいところです。

 

円建て銀相場も下落しました。ドル建て銀相場の下落につれる形で下げています。まずは、ドル建て銀相場が反転するのを確認し、そのうえで55円を超えて推移する状況ができれば、徐々に買いを検討したいところです。これだけ弱い動きになっていますが、突発的に上昇する可能性もあります。その場合には、その動きにすぐについていくのではなく、持続性があるかを確認したうえで押し目買いを検討することになると考えます。いずれにしても、今は慎重に対処するのが賢明と考えます。

縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券