2022年は金相場の本格的な長期上昇トレンドの起点になるだろう。

2022年の金価格を想定する上で重要なポイントは、以下の4つ:
(1)FRB(米連邦準備制度理事会)による金利引き上げのタイミング
(2)世界的なインフレ動向
(3)金利動向と米ドルの動向
(4)投資市場環境

その中でも、(1)と(2)は密接に関連していると言える。コロナ禍からの回復により、世界経済は回復し、株価は米国を中心に大きく値を上げてきた。その間、米国の製造業は回復し、米国の住宅市場は大きく拡大した。一部では資材不足を背景に住宅供給が不足し、販売価格も上昇した。また、自動車に不可欠な半導体が不足し中古車価格が高騰するなど、これまでとは違うインフレがみられている。

2021年、米ドル高基調のなか金相場は堅調さを維持

このように、景気の回復とインフレを背景に、FRBはまずこれまで実施してきた量的緩和策の解除を決めた。11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、月額1200億ドルの量的緩和策の縮小(テーパリング)を決定・開始した。また、インフレへの懸念が高まる中、市場ではFRBによる2022年中の利上げのタイミングを探る展開になっている。

景気指標の改善などもあり、市場では11月に利上げのタイミングが早まるとの観測が強まり、短期金利市場では2022年中に0.25%ポイントの利上げが実施されるとの見方が広がった。これを受けて、米ドルも対主要通貨で上昇し、堅調な動きを続けてきた。

一方、金利がつかない金は、このような状況では上がりづらいのだが、米ドル高基調が続く中でも堅調さを維持し、11月には一時1,830ドル台を付けるなど、これまでとは違って下げにくい展開をみせてきた。

しかし、その背景は短期的に取引を繰り返す投機筋の買いがメインであり、長期的に金を保有する投資家の買いは手控えられている。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のデータによると、2021年第3四半期のETF需要は、新型コロナウイルスの発生で安全資産としての需要が高まった前年同期の274トンから、27トンの減少となった。株価も堅調に推移していたこともあり、投資家は安全資産を売却し、株式を選好していると言える。

2022年はインフレ動向を注視

このような状況の中、2022年の金価格動向を見極める上で、やはり重要なのはインフレ動向であろう。世界経済が回復軌道に乗り、マクロ環境の不確実性が低下したことで、インフレ率が大きく上昇している。

インフレ率の上昇は、実質金利の低下につながり、これが金価格の直接的な押し上げ要因となる。FRBがテーパリングを開始し、さらに利上げを実施するとみられることから、米金利が上昇し、米ドルが上昇すると、金価格には圧迫要因となる。しかし、最近は金利高・米ドル高の状況下でも金価格は下がりづらくなってきた。

一部の投資家が将来のインフレに備えて、金を買い始めているのではないかとの観測もある。インフレの継続には、原油価格の上昇基調と景気の回復基調の継続が不可欠と考えるが、FRBが目標とする物価上昇率2%を超える水準での推移が当面続きそうである。

今後も新型コロナ感染拡大のリスクは残るが、世界経済は今後も順調に回復していくだろう。そうなると、インフレ率は一定の水準で高止まりするものと考えられる。

そうなると、米金利が上昇し、利上げが視野に入ってくるが、このような状況下では金価格は上がりづらくなると考えるのが普通である。しかし、相場とは不思議なもので、いったん材料が織り込まれると、その材料の市況への影響がなくなることが少なくない。

前回のテーパリングと利上げ実施で金相場はどう反応した?

前回のテーパリングから利上げが実施された2013年から2015年を振り返ると、テーパリングの示唆から利上げまでの期間は約2年半程度あった。その間、米ドルは上昇したものの、金利は低下した。しかし、金価格は安値圏で低迷していた。今回はテーパリングの示唆が2021年8月末にあり、テーパリングの開始までの期間はわずか3ヶ月程度である。さらに、利上げ開始までの期間もかなり短くなる可能性があり、今回はかなり慌ただしい動きになりそうである。

今回はテーパリングが金売りにつながった事実はない。したがって、下値耐性は前回のテーパリング時よりもかなり強い。これは、今回のタイミングでインフレが強まっていることが背景にあると考えられる。その上で、利上げが早期に織り込まれると、金価格は実際の利上げの前から本格的な上昇に入る可能性もあると考えられる。FRBが2015年12月に利上げを開始して以降、金価格が本格的な上昇基調に入ったことを、今一度思い出しておきたいところである。

金価格は下落しても下値が限られる可能性

このような側面を考慮すれば、今後のインフレや景気動向次第ではあるものの、金価格は2022年のうちに大きく上昇し始めるのではないかと考えている。原稿執筆時点(2021年11月末時点)では、2022年末までに0.25%ポイントの利上げが1回実施される確率は95%を超えている。また、7月までに同様に利上げが実施される確率は7割程度である。

私は2022年後半には1回目の利上げが実施され、このあたりから金価格の上昇が鮮明になっていくのではないかと考えている。この間に、年金・機関投資家などがETFを経由して金を買う動きを強めるようだと、さらに価格の上昇が強まる可能性があろう。

一方、安い水準で買うバーゲンハンターである中国やインドは、1,700ドル台後半は金を買うには高すぎると感じているだろう。逆に言えば、下げると買い始めるということである。つまり、下げても彼らが押し目で買うため、下値は限られる可能性が高いと思われる。

上記のことから、2022年は金相場の本格的な上昇の起点になり、2020年8月に付けた史上最高値の2,072.49ドルを超え、高値を更新すると私は考えている。