先週のゴールド:大幅続落の展開

金相場は大幅続落した。週明け11月22日は下落。米ドル高と米長期金利の上昇が重石となり、3日続落した。バイデン米大統領はこの日、2022年2月で任期の切れるパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の続投を表明。よりハト派色の強いブレイナード理事の議長就任を見込んでいた一部の期待がはげ落ち、米長期金利が上昇。米ドルが急伸し、金利を生まない米ドル建て金相場を圧迫した。

11月23日は下落。FRBのパウエル議長の再任指名を受けて早期の利上げ観測が強まり、米ドルと米国債利回りが上昇し、これが売り材料視された。市場は、パウエル議長がインフレ対策でFRBによる金融政策正常化を早めると見ている模様だ。金相場は先週5ヶ月ぶりの高値となる1,876.90ドルを付けて以来、100ドル近く下落した。

11月24日は下落し、一時3週間ぶりの安値を付けた。米国の堅調な経済指標が米ドル相場と国債利回りを押し上げ、FRBが想定より早めに利上げに踏み切るとの観測が金相場の地合いを悪化させた。

一時1,777.80ドルと、11月4日以来の安値を付けた。この日公表された米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、インフレ高進が続いた場合に資産購入を通じた量的金融緩和策の縮小ペースを速め、想定より早期の利上げに動く可能性を、FRB当局者が排除していないことが明らかになった。11月25日は米国市場が休場のため、薄商いで動意を欠いた。

週末11月26日は小幅上昇。新型コロナウイルスの新たな変異株が確認されたことでリスク選好意欲が低下、安全資産としての金は買われ、一時1%超上昇した後、上げ幅を縮小した。

新たな変異株にワクチン耐性があるか研究者が確認を急ぐ中、世界各国・地域は変異株に警戒感を示し、EUと英国は渡航制限を強化した。これにより幅広い市場で売りが膨らみ、原油や貴金属にも波及した。週末は1,791.81ドルと、節目の1,800ドルを割り込んで引けた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、11月19日の985.00トンから、11月24日には991.11トンに増加。徐々にではあるが、投資家の買いが戻りつつあるように見える。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、11月25日が米感謝祭のため、通常毎週金曜日に発表されるデータは公表されていない。

円建て金相場も大幅下落。ドル建て金価格の下落が影響した。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:新たな変異株と市場の反応に注目

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新たな変異株の最新情報
・金融市場の反応(米金利・米ドルの動き)
・円建て金相場は米ドル建て金相場の動向に注目

金相場は大きく値を下げている。前週は1,860ドル台で推移していたことを考えると、かなり下げた印象がある。結果的に上値を維持するだけの買いが入ってこなかったことが背景にあるのだが、米感謝祭の前に一段の売りが出た格好である。これにより、目先のトレンドは完全に崩れた格好である。

1,825ドルを割りこんだことで、1,790ドルのサポートを試す展開になっている。現時点では、この水準を維持しており、一段安になっているわけではない。ここを維持できるかが極めて重要であり、今後の動向に注目せざるを得ない。無論、1,790ドルを明確に下回ると、大きく崩れることになる。この点は理解しておく必要があるだろう。

さて、市場に降ってわいた材料が、新たな変異株の出現である。11月26日の金融市場は大きく変動し、揺れに揺れた。株価は大きく下落し、米国債が買われて米金利が低下し、米ドルも売られている。

このような状況の中、金相場は小幅に上昇した。それ以外にも、金に安全資産としての価値を見出した投資家が買った面もあるだろう。投資家による金ETFの購入動向も底打ちした可能性が高まっている。今後の変異株の動向と投資家動向にも注目しておきたいところである。

今回のようなことがあったとき、過去にどのような状況になっていたかを確認しておくことは、投資家として極めて重要である。答えを言えば、株安の際に金は資産を守ってくれるということである。

過去の金融危機やコロナ危機のときもそうだったが、過去のパニック売りが出た時、ほとんどのケースで金は上昇している。資産の一部を金にしておけば、株安による資産の目減りの一部をカバーしてくれる。

「資産を同じかごに盛るな」という、昔からの相場格言があるが、今まさにそれが生きようとしている。この数年の中でもこの言葉の重要性を感じるときが頻繁に到来している。これまでも繰り返し述べてきたことではあるが、投資家は株式投資を資産運用の軸に据えつつも、金も同時に保有しておくほうが良いということなのである。

今回は変異株の材料に加え、これを背景とした米ドルの急落と米国債利回りの低下も金相場を支えている。この先、何が起きるかは誰にもわからない。わからないからこそ、金を保有しておくことが肝要なのである。

一方、新たな変異株の出現で、原油相場が急落するなどコモディティ相場が全体的に弱気に転じている。こうなると、目先のテーパリングや将来の利上げに関する話題は目立たなくなるだろう。当面は債券が買われ、金利は低下するか上昇しづらくなる可能性がある。

FRBなど主要中銀の対応にも注目することになろう。特にFRBのスタンスに変化があるのかを注視しておきたい。これまでのインフレ基調は、原油安で多少緩むだろう。

一方で、モノへの価格転嫁はこれからである。今のような高いインフレ率は低下するだろうが、FRBが目標とする2%のインフレ水準を超えて推移するだろう。その意味では、原油相場が下げても、一定のインフレ率は維持されるだろう。その上で、金相場を見る際に、名目金利からインフレ率を引いた実質金利の動向をよく見ていくことが肝要であろう。

一方、中国の金輸入量が増えている。香港政府統計局が11月25日公表した統計によると、10月の中国の香港経由での金純輸入量は54.26トンと、前月の34.79トンから56%増え、2018年6月以来の高水準となった。金の最大消費国である中国のバイヤーは、インフレ高進に対する緩衝材として金の買い付けを活発化させている。

香港経由での中国の金総輸入量は57.80トンと、前月の41.88トンから増加した。このようなデータを見ると、中国の金需要が増えていると言えそうである。他の主な購入国の現物需要はまだ弱いように見えるが、中国の需要は一段と力強さを示し始めている。これはインフレの上昇が背景にある可能性もある。中国勢が今後、金相場が下落した場合に買いを入れてくる可能性があると見ている。

インド勢も同様であろう。その意味でも、金相場は下値が堅いと言える。1,790ドルを割り込んでトレンドが崩れた場合でも、1,700ドル前後では下げ止まるものと考えている。

円建て金相場は結果的に6,900円が重くなり、その後は下げている。米ドル建て金相場が不安定になりそうであり、注意が必要である。また、米ドル/円相場が円高に傾いており、これが円建て金相場の上値を抑えることになる。

まずは6,700円から6,600円で下げ止まるかを確認したい。その上で、長期的なポジションの保有を目的に、押し目を買うことを検討したい。長期的には、6,600円割れからゆっくりと買い下がり、6,300円前後までの水準を狙っておきたい。時間と資金を十分に分けて、ゆっくりと買う方針は変わらない。

長期的に金を保有する意味は、将来のインフレへのヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定になった場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むはずである。

プラチナ:続落の展開

プラチナは続落した。週初から下落し、11月24日・25日には反発したものの、週末26日には一時946.50ドルの安値をつけた。週末は953.68ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、11月25日が米感謝祭のため、通常毎週金曜日に発表されるデータは公表されていない。

プラチナ相場は新たな変異株の出現で売りが出ている。金相場が下げ渋っているのと対照的であろう。金には安全資産としての価値があるものの、プラチナにはそれがないことが大きな差となっている。

今回の下落で、重要なサポートだった1,000ドルを割り込んでおり、基調は崩れている。この水準を回復できないと、上昇基調に戻すことは難しい。目先は直近安値の901.30ドルまで下げる可能性も念頭に置いておく必要があるだろう。

同じ白金族系メタルのパラジウムは直近安値を下回っており、安値を更新している。相場としては完全に崩れたといって良いほどの下げになっており、極めて厳しい動きにある。プラチナがこの動きにつれてしまうようであれば、直近安値を更新し、節目の900ドル割れの可能性も念頭に置いておく必要があるだろう。まずは底値を確認することが先決と言えそうである。

ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)によると、2021年の世界のプラチナ市場が予想を大幅に上回る供給過剰になり、2022年も大幅な供給過剰に陥るとの見通しである。

2021年は76万9,000オンスの供給過剰と、2013年の調査開始以降で最大規模となる見通し。2022年も63万7,000オンスの供給過剰が予想されている。2021年については、9月時点で19万オンスの供給過剰、5月時点では供給不足が予想されていた。2021年第3四半期は59万2,000オンスの供給過剰と、四半期ベースでは少なくとも2013年以降で最高水準を記録した。

南アフリカからの供給が増えた一方、半導体不足の影響で自動車メーカーの需要が落ち込んだ。2022年は、自動車メーカーの需要とコイン・延べ棒への投資家需要が増える一方、産業用、上場投資信託(ETF)用、宝飾用の需要が減る見通しである。

プラチナ価格は2月に6年半ぶり高値の1,336.50ドルまで上昇したが、その後は1,000ドル割れに下げている。実需面も弱い見通しが出てきており、今後もファンダメンタルズ材料の支援は期待できない状況が続きそうである。

円建てプラチナ相場は4,000円水準を割り込み、3,700円まで下げてきた。円高もあり、下げが大きくなる可能性がある。目先は下値を確認するのが先決であろう。短期的な動きを利用して収益獲得を狙う場合には、売りを仕掛けるのも一考であろう。ただし、下値が限られる可能性もある。まずは3,700円で下げ止まるのかを確認したい。

一方、押し目買いを狙う場合には、相当慎重に行いたい。下げがきつくなる場合には、100円単位で下げる可能性がある。そうなっても良いように、十分な資金と時間の分散を図って、徐々に買い下がっていくようにしたい。繰り返し述べているように、最大で3,300円まで下げても問題がないように、資金を分けて分散して買いを行うことが肝要である。

今のプラチナ相場には上昇に向けた独自のファンダメンタルズ材料が明らかに不足している。したがって、長期投資家は十分に時間的な分散を図り、高値を買わないようにしたい。とにかく、ゆっくりと買いを行うことである。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続落の展開

シルバーも続落した。週初からほぼ一貫して下落し、週末11月26日には一時22.89ドルまで値を下げる場面が見られた。週末は23.13ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、11月25日が米感謝祭のため、通常毎週金曜日に発表されるデータは公表されていない。

銀相場は24ドルを割りこみ、さらに一時23ドルを割り込む水準にまで下げている。結果的に25.50ドルを超えられずに下げており、基調は弱いと言える。直近安値を下回ったことは、買い手の売りを誘いやすい地合いにあることを意味する。このまま下げ基調が続くかどうかは、金相場次第の面もあるだろう。

ただし、金には安全資産としての価値がある一方で、銀にはそれがない。また、工業用需要がメインであり、新たな変異株の出現による株価の下落は、銀相場に大きな影響を与えることになる。コロナ危機の際にも銀相場は大きく下げており、今回の変異株の動向にはかなり注意したほうが良いだろう。その上で、直近安値の21.50ドル水準を維持できるかを見ておくことになろう。

太陽光発電パネル向けの銀需要の増加は期待できる材料だが、今はそのような材料は無視されやすい。まずは目先の値動きを見ながら、変異株の動向と市場の反応をよく見ておくことが肝要である。

現在の銀相場の重要なポイントは23.50ドルである。これを超えると基調は回復したと考えられる。反発に転じた場合には、この水準に注目しておきたいところである。

円建て銀相場は94円の高値水準を維持できずに下げており、基調は下向きに転じている。現在の直近安値水準である88円を割り込むと、86円、84円と2円単位で下げていく可能性がある。最大80円までの下げも念頭に入れながら、現在の市場動向を見ておくことが肝要であろう。まずは、調整がどこまで進むかを見ておきたい。

長期的な視点で買いを検討する場合には、86円以下から80円程度の水準を狙って、慎重にゆっくりと買いを検討したい。そうすれば、心理的かつ資金的な負担が少なくて済むだろう。

銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたい。これは銀を取引する上で、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券