先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落した。11月15日は利益確定売りが入り、下落した。過去8日で約100ドル水準を切り上げ、5月以来の長い上昇となっていたこともあり、売りが出やすかった。一方、投機筋は11月9日までの週に大量に金先物を購入していたことが判明した。

11月16日は5ヶ月ぶり高値から反落。好調だった10月の米小売売上高を受けて米ドルが上昇し、金は他通貨所持者にとってより割高になった。一時1,876.90ドルと、6月14日以来の高値を付けた。

10月の米小売売上高は予想を上回る増加となり、第4四半期の初めに米国経済が押し上げられているとの見方から、米ドルは16ヶ月ぶり高値を付けた。金相場は9日に10月の米消費者物価指数(CPI)が急騰して以来、2%超上昇していた。

11月17日は上昇。10月の米小売売上高が予想を上回る内容だったことを受け、金は他通貨保有者にとって割高となったが、インフレ懸念から安全資産の側面で買われた。10月の米小売売上高が予想を上回る増加となったことから、米ドル指数は2020年7月以来の高水準となったが、金相場にはあまり影響しなかった。

11月18日は下落。米国では最近の堅調なインフレ統計に続き、新規失業保険申請件数が良好な内容だったため、米連邦準備制度理事会(FRB)が想定よりも早く利上げを実施するとの見方が強まり、これが相場の重石となった。金相場は下落したが、11月16日に付けた5ヶ月ぶりの高値近辺で推移した。

この日発表された11月13日までの週の米新規失業保険申請件数は、新型コロナウイルスのパンデミック前の水準近くまで減少した。米国債利回りは3週間ぶりの高水準近辺を維持する一方、米ドル相場は1年4ヶ月ぶりの高値から下落し、一服感が出た。

11月19日の金相場は下落し、1週間ぶり安値に沈んだ。FRBのウォラー理事が金融政策の引き締めに向けた早期のテーパリングを呼び掛けたことから米ドルが上昇し、これが重石となった。米ドル指数は0.5%上昇し、他通貨保有者にとって金は割高となった。週末は1,844.60ドルで引けた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、11月12日の975.99トンから、11月19日には985トンに増加。わずかではあるが、久しぶりに増加した。この傾向が続くかを見極めることになる。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、11月16日時点で25万9,780枚の買い越しとなり、前週から買い越しが9,599枚増加した。買いポジションが1万9,418枚増加し、売りポジションは9,819枚増加したことで買い越し幅が拡大した。投機筋が積極的に買いを入れていることが確認できる。

円建て金相場は上値の重い展開だった。ドル建て金価格の下落が影響したと言える。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:FRBの政策スタンスの変化に注目

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米インフレ動向と金融政策
・米ドル・米金利の上昇リスク
・円建て金相場は米ドル建て金相場の動向に注目

金相場は高値圏を維持し、さらに上値を試したかったところだが、水準を維持できなかった。そのため、久しぶりにトレンドが崩れる兆しが見られている。1,860ドル台を維持できなかったことで、目先は売りが出やすい地合いに変化し始めているように見える。

タカ派のFRB関係者がテーパリングの加速を示唆したことは、FRBの政策転換の可能性を示している可能性がある。もっとも、パウエルFRB議長がFRB関係者にそのような発言をするように促し、市場の反応を見ている可能性もある。

おそらくその可能性が高いと考えられるが、市場がテーパリング加速への懸念を強めるようであれば、政策転換に関する発言が撤回され、金利上昇が抑制される可能性もあるだろう。

そうなると、一時的には金相場にはポジティブな材料となる。もっとも、インフレ加速が金にはポジティブな材料である。今後はこれまでのようなペースでのインフレ指標の上昇はないものの、高止まりすることが金相場を支えることになろう。

まずは短期的な調整を念頭に置いておくが、その際に1,825ドルで下げ止まるかを見ておくことになる。これを割り込むと下げが加速し、地合いは急速に悪化する可能性もある。その際には節目の1,800ドルや、1,790ドルを試すことになりそうである。

FRBによる利上げ観測が高まる中、利上げが早期に実施されるかに市場は注目している。また、世界的なインフレ懸念の高まりから、投資家もそろそろ金への関心を高める時期であろう。投資家もようやく少しではあるが、金ETFを買っているようである。彼らが買い始めると、地合いは大きく転換することになる。その動きが見られるかに注目しておきたい。

FRB高官がインフレ対応として、資産購入の減額ペースを速めることを示唆し始めているが、市場は想定より早期の利上げ実施を織り込む可能性がある。そうなると、米ドル高基調はさらに強まり、金相場の圧力となる可能性がある。

ただし、最終的にはインフレが金相場を押し上げることになるだろう。インフレにより、米実質金利が低下し、これが金相場を押し上げると考えるのがセオリーである。

FRBは国債の購入額を今月から段階的に減らし、2022年半ばに終了する見通しである。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は12月14・15日だが、そこで何が話し合われるかについても注目が集まりそうである。

最近の物価上昇は、おおむねエネルギーコストの急騰が主な要因だが、これは世界の様々な国の経済にとって懸念材料となっている。英国のインフレ率は10年ぶりの高水準となり、英中央銀行(BOE)が12月に利上げを実施するとの見方が強まっている。一方、カナダでは10月にインフレ率が再び上昇し、2003年2月以来の水準に達した。

世界的なインフレ懸念の高まりから、投機家だけでなく投資家も買い始める可能性がある。そうなると、本格的な金相場の上昇が想定以上に早く示現する可能性もありそうである。

目先は調整が優先される可能性があるものの、1,800ドル前後で下げ止まれば、再び反発に転じる可能性が高まりそうである。投資スタンスによって、対応が異なることになるだろう。そのため、今は長期的な視点と短期的な動きを分けて見ておくことが肝要である。

さて、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が公表した2021年第3四半期の金需要は、消費者需要(宝飾品および地金・金貨)や中央銀行の購入が引き続き力強い回復傾向を示した。

ただし、安全資産としての需要の低下による上場投資信託(ETF)の減少を埋めることができず、総需要は前年同期比7%減の830トンとなった。FOMCでテーパリングが議論されたことも影響し、期中の平均金価格が前年同期比で6%下落したのを受け、価格下落時の需要パターンである「宝飾品の需要増、ETF需要の減少」が見られた。

宝飾品需要は33%増の443トンとなった。新型コロナワクチン接種の加速による行動制限の緩和や消費者心理の改善が貢献した模様である。

また、ロックダウンの影響で第2四半期に需要減の原因となったインドでも、第3四半期は58%増加した。中国が32%増、アラブ首長国連邦(UAE)が117%増、イランが60%増、インドネシアが56%増、トルコが41%増、ロシアが37%増と、ほとんどの国で需要の回復が見られている。

ただし、数量ベースでは、パンデミック発生前の2019年レベルに戻っていないのが現状である。しかし、金額ベースで見た場合では、第3四半期としては2013年以来の最高を記録しており、消費者の購買意欲の強さを感じさせる。そのため、新型コロナウイルスへの対処がさらに軌道に乗れば、2021年の年間宝飾需要は、2020年の1,400トンから大きく伸び、1,700-1,800トンになるとWGCは予測している。

消費者需要のもう1つの柱である地金・金貨も、前年同期比18%増の262トンを記録した。インドの27%増、中国の12%増、米国の31%増、英国の72%増、スイスの21%増が代表するように、新型コロナウイルスの発生を通して、金を保有する意義が再認識された。

また、インフレに対する懸念も上昇していることから、多くの国において需要が継続して増加した。第3四半期現在の年間需要は857トンと、2013年以来の最高をマークして、パンデミック前を大きく超えるレベルまで回復した。

2021年第3四半期の中央銀行セクター需要は、新型コロナウイルスの影響をまともに受けた前年同期の11トンのマイナス(売却)から69トンのプラス(購入)に転じ、これで4四半期連続の購入となった。最大の購入国は、インドの41トン、ウズベキスタンの26トン、ブラジルの9トン、およびカザフスタンの7トンとなっている。

パンデミックなどを背景に、金を保有する意義が再評価されたことが背景にあると考えられる。また、ポーランドの中央銀行は、2022年中に金を100トン追加購入する計画があると発表しており、中央銀行の金に対する動きが活発化しているように見える。

一方、第3四半期のETF需要は、新型コロナウイルスの発生で安全資産としての需要が高まった前年同期の274トンから、27トンの減少となった。

しかし、世界経済が回復軌道に乗り、マクロ環境の不確実性が低下したことや、FRBがテーパリングの議論を開始した時期だったことを考慮すれば、ETF需要は堅調さを維持したと言える。中長期のリスクヘッジを主目的とした投資家が増加していることや、インフレに対する懸念がポジティブ要因として挙げられる。

ETFの残高は、第3四半期末現在で約3,600トンと、2020年のピークからの減少率は十数%程度である。そのため、2013年のテーパリング時のように、金市場から資金が短期間で大量に流失した時とは状況がかなり異なると言えるだろう。

一方、産業用需要は、経済活動の活発化に伴い、前年同期比9%増加。供給側も新型コロナウイルスの影響がほぼなくなり、鉱山生産は4%増加し、正常化した。今後も宝飾品需要の回復とETF需要の動向に注目することになろう。

円建て金相場は6,900円が重くなりそうである。まずは6,700円から6,600円で下げ止まるかを確認したい。その上で、押し目を買うことを検討したいところである。

一方で、再び6,900円を超えていけば、かなり強い動きになると言える。今すぐにそのような動きになるとは考えにくいが、そうなった場合には、その動きについていく形で買いを検討することになろう。長期的には、6,500円からゆっくりと買い下がり、6,300円前後までの水準を狙っておきたい。

ただし、相場がそのような水準にまで下がらない可能性もある。そのため、下がらないことが確認できれば、6,700円以下からゆっくりと買い下がっていくことを考えたい。時間と資金を十分に分けて、ゆっくりと買う方針は変わらない。

長期的に金を保有する意味は、将来のインフレへのヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定になった場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むはずである。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。週初から一貫して上昇し、週末11月19日には一時1,027ドルの安値をつけた。週末は1,031.24ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、11月16日時点で2万1,013枚の買い越しとなり、前週から買い越しが3,383枚増加した。買いポジションが3,006枚増加し、売りポジションは377枚減少した。投機筋が買いを入れたものの、週末にかけて下げており、売りが出ている可能性がある。最新のデータで確認したいところである。

プラチナは引き続き独自の材料が欠ける状況にある。その中で、金相場が調整していることから、売りが出やすくなっているように見える。このまま材料不足で下げに転じると、節目の1,000ドルを維持できるかに注目することになる。これを割り込むと、下げ基調に入ることになるだけに、注意を要するだろう。

依然としてプラチナ市場のファンダメンタルズ材料には芳しいものがない。自動車販売台数の減少や今後のEV化は、プラチナにはネガティブ要因である。そのような状況にあることを前提に、プラチナに対処することが肝要である。

円建てプラチナ相場は4,000円水準を超え、さらに4,100円を試したものの、これを維持できずに下げている。まずはこの水準を維持できるかを見ておくことになる。割り込まなければ、今度はこの水準が下値になり、上値を試しやすい地合いに転じることになる。まずはこの点を確認したいところである。

先々週のコラムでは、「高いところを買い、さらに高いところで売るトレンドフォローの戦略が良い」と解説したが、そのような動きになりつつある。この戦略が奏功するかは、少なくとも4,000円で下げ止まることが不可欠である。4,000円を割り込めば、調整に転じる可能性があるため、注意しておきたい。

一方、長期的な上昇を狙って、押し目買いを行いたい場合には、今後も引き続き慎重に検討したいところである。さらに4,000円も割り込み、3,900円水準まで調整している。これを下回ると下げがかなりきつくなりそうである。その場合には、100円単位で下げていく可能性がある。

ただし、買いを検討する場合には、100円単位で徐々に買い下がっていくことになるだろう。最大で3,300円まで下げても問題がないように、資金を分けて分散して買いを行うことが肝要である。

繰り返し述べているが、今のプラチナ相場には上昇に向けた独自の材料が不足している。したがって、長期投資家は十分に時間的な分散を図り、高値を買わないことが肝要である。とにかく、ゆっくりと買いを行うことである。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーも反落した。週初からほぼ一貫して下落し、週末11月19日には一時24.53ドルまで値を下げる場面が見られた。週末は24.58ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、11月16日時点で4万5,625枚の買い越しとなり、前週から買い越しが8,710枚増加した。買いポジションが8,931枚増加し、売りポジションは221枚増加した。投機筋は積極的に買いを入れたものの、その後は週末にかけて下げており、売りが出ている可能性が高い。最新のデータで確認したい。

銀相場は25ドルを割りこみ、上値の重い展開になっている。これで重要なサポートの24.40ドルを割りこむと下げが加速しやすい地合いにあるように見える。したがって、まずはこの水準を注視しておきたいところである。今後も目先は金相場の動きを見極めることになろう。

金相場は高値を維持できずに下げており、軟調に推移する可能性がある。その場合には、銀相場も連れる形で下落し、23.70ドル前後まで下落する可能性があろう。

銀にはこれまでになかった需要の増加が期待されている。先週のコラムでも解説したように、太陽光発電パネル向けの銀需要は順調に増えているもようである。将来的には太陽光エネルギーの世界的な拡大への期待が膨らむ可能性がある。

ただし、この材料が注目され、相場が先行するだけでは、上昇は長続きしないだろう。やはり実態が伴わなければ上昇は続かない。この点には要注意と言えるだろう。話題先行で銀相場が上昇した場合には注意したいところである。

シルバー・インスティテュートによると、2021年銀需要は世界全体で上場投資信託(ETF)を除くベースで前年比15%増の10億2,900万オンスとなる見通しである。10億オンスを上回れば2015年以来となる。

4月時点の予測である10億3,300万オンスからはやや下方修正した。需給の差し引きでは700万オンスの需要超過を予想している。供給が追いつかないのは2015年以降では初めてとなる。太陽電池パネルメーカーや一般の工業需要が2021年、過去最多になると予想している。

2021年は大半の国で新型コロナウイルス対策の移動制限などが緩和ないし解除されたことにより、太陽電池パネルや電子機器といった実需のほか、宝飾需要や銀貨・延べ棒への投資需要など幅広い拡大が見られるという。これらのファンダメンタルズ材料にも注目しておきたい。

円建て銀相場は94円まで上昇したものの、高値を維持できずに下げている。このまま調整が続き、92円を割り込むと下げが加速する可能性がある。そうなると、90円から88円と、2円刻みでの売りが出る可能性がある。その場合には、急落のリスクも念頭に置いておく必要があるだろう。

もっとも、88円までの調整で済めば格好の押し目買いのタイミングになる可能性もある。今は高値を追って買うことは避け、調整がどこまで進むかを見ておきたい。長期的な視点で買いを検討する場合には、86円以下から80円程度の水準を狙って、慎重にゆっくりと買いを検討したい。

そうすれば、心理的かつ資金的な負担が少なくて済むだろう。銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたい。これは銀を取引する上で、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券