先週のゴールド:急伸の展開

金相場は急伸した。週明け11月8日は続伸し、2ヶ月ぶりの高値を付けた。主要な中央銀行が当面は低金利を維持する姿勢を示したことを受け、米ドル相場の下落や根強いインフレ懸念に押し上げられた。

米ドル指数は0.3%低下し、他の通貨保有者にとって金が割安になった。主要中銀は全体として緩和的な政策スタンスを維持しており、放出された資金がインフレヘッジ手段として金や銀市場に流入した。

11月9日も続伸し、9月初旬以来の高値まで上昇した。11月10日も続伸。市場の関心を集めていた米消費者物価指数(CPI)の結果を受けて続伸した。一時1,868.20ドルまで上昇した。

10月の米CPIは前年同月比6.2%上昇した。伸びは前月の5.4%から大幅に加速し、約31年ぶりの高水準。市場予想の5.8%も上回り、強いインフレ圧力が続いていることが示された。

この結果を受けて、インフレヘッジとしての金の魅力が高まり、買いが活発化した。11月11日は前日に付けた5ヶ月ぶりの高値近辺を維持した。

週末11月12日は上昇。週間では6ヶ月ぶりの上げ幅となる110ドルとなった。インフレ懸念が強まっていることや、主要中央銀行が当面の間、政策金利を維持するとの安心感が相場の支えとなった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、11月5日の975.41トンから、11月12日には975.99トンにわずかに増加した。ただし、投資家の金買い意欲が高まっている様子はなく、今後のインフレに対する投資家動向に注目しておきたい。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、11月11日がベテランズデーの祝日だった関係で、公表は週明けになる予定。そのため、来週の本コラムで最新動向と併せて確認したい。

円建て金相場は急伸した。ドル建て金価格の急騰は大きく影響した。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:インフレ動向に注目

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米インフレ動向と金融政策
・米ドル・米金利の上昇リスク
・円建て金相場は米ドル建て金相場の動向に注目

金相場は急伸している。このように短期間で急騰することもないことはないのだが、頻度としてはかなり少ない。金市場関係者にとっては、このような動きは付いて行きづらいことだろう。

短期間で相場が動くときには、往々にして短期投機筋がショートを買い戻すか、あるいは新規に買いポジションを積み上げるかの事象が見られる。今回もおそらくそうであろう。週明けには公表される、COMEX金先物市場における投機筋の最新の動向をまずは確認したいところである。

いずれにしても、このような急騰となったことで、金に関する話題が取り上げられやすくなっていると言える。相場はこのような「話題」が材料になることが珍しくない。その意味では、これまで金投資を控えてきた一部の投資家が、金への関心を高める可能性もある。

11月8日の週は10月の米CPIが高い伸びとなり、注目を集めたことから、米ドル高は金相場の悪材料にはならなかった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを容認して景気を支えるという方針を継続することを前提に、強気な見方も出始めている。

ソシエテ・ジェネラルは、2022年1-3月期の金相場が平均1オンス=1,950ドルで推移すると予想している。ただし、強気見通しが出た時が高値になることも少なくない。

以前にも、ゴールドマン・サックスが極端な強気見通しを出したところが高値になったことが何度かある。このようなときには、相場は往々にしてピークになっていることがある。この点には注意をしておきたい。

もっとも、ショート筋が買戻しを終えていなければ、その限りではない。最終的には、このような予想を当てにするのではなく、あくまで市場動向を優先して見ていくべきであろう。
 
金相場はすでにこれまで上抜けることができなかった1,830-1,835ドルを明確に上抜けており、新たなレンジに入っている。この水準を割り込むと再び軟調地合いになると言えるが、現時点ではまだそのような兆候は見られない。

FRBはインフレへの懸念を強めるだろうが、労働市場の改善の遅れを理由に、利上げを先送りするだろう。これもまた金にとっては強気材料になる。短期的には過熱感もあるが、今はトレンドを注視した対処が肝要であろう。まずは6月1日の高値1,916.40ドルを超えるかに注目しておきたい。その上で、金融市場の動向を見ながら、金市場の対応を見極めたい。

円建て金相場は6,600円台での推移が続き、6,700円水準が重い印象だったが、これを明確に上抜けるほどの力強い上昇になっている。6,900円水準まで値を上げており、強気相場と言える動きである。

先週のコラムでは「6,700円までの上昇の過程で利益を確定したほうが良いだろう」と解説したが、これを明確に上抜けたことで、方針を変える必要が出てきている。今は6,700円までの押し目を買うことを検討すべき値動きであり、その後に6,900円まで戻せば利益を確定するようなパターンになるだろう。

もっとも、勢いがついて、6,900円を超えていけば、その動きに付いて行かざるを得なくなる。その場合には、上値を追って買うことも検討すべきであろう。ただし、その場合にはストップロスを入れておくことが肝要である。調整すると早い下げになる可能性があるからである。

もっとも、より長期的な視点での買いについては、慎重に行いたい。できれば、6,500円からゆっくりと買い下がり、6,300円前後までの水準を狙っておきたいところである。ただし、相場が下がらない可能性もある。そのため、これまでの水準を少し切り上げ、6,700円以下から買い下がっていくことを考えたい。

とはいえ、時間と資金を十分に分けて、ゆっくりと買う方針は変わらない。長期的に金を保有する意味は、将来のインフレへのヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定になった場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むはずである。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸した。週初から上昇し、11月10日には一時1,092.96ドルの高値をつけた。その後も高値圏を維持し、週末11月12日は1,082.50ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、11月11日がベテランズデーの祝日だった関係で、公表は週明けになる予定。そのため、来週の本コラムで最新動向と併せて確認したい。

プラチナは順調に下値を切り上げており、直近高値も更新している。かなり強い動きになってきた印象である。こうなると、節目の1,100ドルを超えるかどうかが重要なポイントになる。心理的節目でもあり、上昇相場に入るには、まずはこの水準を超えるかを見ておくのが常道であろう。

もっとも、繰り返し述べるように、現在のプラチナ市場では材料不足が顕著である。ファンダメンタルズ材料は見当たらず、金相場の上昇などにつれて上げている印象は否めない。したがって、まずは金相場の動向を見極めることになる。

一方、プラチナの主要生産国である南アフリカの通貨ランドは下落していたものの、それでもプラチナ相場は上昇していた。それだけ、プラチナ相場が金相場につれて上げていたと言えるだろう。

これまで安値圏で芳しくない値動きをしていたプラチナ相場だが、今回は本物の上昇相場に入ることができるのか、まさに正念場にあると言える。今週の値動きに注目しておきたい。

円建てプラチナ相場は重かった4,000円水準を超えている。まずはこの水準を維持できるかを見ておくことになる。割り込まなければ、今度はこの水準が下値になり、上値を試しやすい地合いに転じることになる。まずはこの点を確認したいところである。

先週のコラムでは、「高いところを買い、さらに高いところで売るトレンドフォローの戦略が良い」と解説したが、そのような動きになりつつある。この戦略が奏功するかは、少なくとも4,000円で下げ止まることが不可欠である。4,000円を割り込めば、調整に転じる可能性があるため、注意しておきたい。

一方、長期的な上昇を狙って、押し目買いを行いたい場合には、今後も引き続き慎重に検討したいところである。少し水準を切り上げ、3,800円以下を100円単位で慎重に買い下がっていくような方針となろう。

ただし、最大で3,300円まで下げても問題がないように、資金を分散して買いを行うことが肝要である。今のプラチナ相場には、上昇のための独自の材料が不足している。したがって、長期投資家は十分に時間的な分散を図り、高値を買わないことが肝要である。とにかく、ゆっくりと買いを行うことである。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅続伸の展開

シルバーも大きく上昇した。週初から順調に水準を切り上げ、週末11月12日には一時25.38ドルまで値を上げる場面が見られた。週末は25.28ドルと、節目の25ドルを維持して引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、11月11日がベテランズデーの祝日だった関係で、公表は週明けになる予定。そのため、来週の本コラムで最新動向と併せて確認したい。

銀相場は25ドルを超え、力強い上昇基調に入ったように見える。とはいえ、あくまで金相場主導の展開であろう。独自の材料は不足しており、銀市場の材料だけで上げているとは言えない。したがって、今後も金相場の動向には注意しておく必要がある。

もっとも、今回のように、銀相場は上がり始めると短期間で急伸しやすい特徴がある。短期的な上昇を狙って投機筋が資金を入れてくることが背景にある。今回もおそらくそうなっているはずであり、最新のデータで確認したい。

ただし、買いすぎた場合には、一転して売り手になることも理解しておく必要がある。彼らは基本的に反対売買を行って、取引を終了させる。現物を引き受けることは基本的にしないため、買ったものは必ず売ってくる。この点にも注意が必要である。

一方、太陽光発電パネル向けの銀需要は順調に増えているようである。第26回気候変動枠組条約締約国会議(COP26)が終了したが、今後は太陽光エネルギーの世界的な拡大への期待が膨らむところである。そうなると、銀需要が劇的に増加する可能性もゼロではない。この材料には引き続き注目しておきたいところである。

円建て銀相場は急伸し、直近高値の92円水準を超えてきた。こうなると、まさに強気相場ということになるが、この水準を維持できるかを注視することになる。押し目があった場合、92円を割り込まなければ、その段階で買いを検討することができるだろう。

もっとも、割り込んだ場合には、90円や88円などの節目がターゲットになるだろう。88円までの調整で済めば、そこは格好の押し目買いの水準になりそうである。今は高値を追って買うことは避け、目先の値動きを確認したほうが良さそうである。

長期的な視点で買いを検討する場合には、より慎重に行いたい。これまでの水準を切り上げ、86円以下から80円程度の水準を狙って、慎重にゆっくりと買いを検討したい。そうすれば、心理的かつ資金的な負担が少なくて済むだろう。

銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良い。これは銀を取引する上で、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券