先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発した。ただし、週間の高値から大きく値を切り下げて取引を終えた。週明け10月11日は続落。米ドル高・ユーロ安に伴う割高感などが重石となった。

対ユーロでの米ドル安を好感し、割安感が生じた金は買いが先行した。ただし、その後は米ドル高への反転を背景にじりじりと値を下げた。この日はコロンブスデーで米国の為替・債券市場が休場だったこともあり、方向感に乏しかった。

10月12日は上昇。インフレ懸念が強まりつつあることでリスク選好意欲が鈍り、安全資産とされる金の需要が高まった。ただし、米ドル高が上げ幅を抑えた。世界的なエネルギー需給逼迫が経済見通しを脅かしており、インフレ懸念が強まる中、一部の投資家はより安全性が高いとされる金などの資産に向かった。

米連邦準備制度理事会(FRB)が資産購入の縮小に向けて徐々に動いている状況において、インフレ圧力は金を押し上げるのに十分な水準になるとの見方が金を支える基調になった。

10月13日は大幅続伸し、約1ヶ月ぶりの高値を付けた。米ドル安と米国債利回りの低下を背景に金の需要が高まった。

米消費者物価指数(CPI)発表直後に利回りは大幅上昇したが、その後は低下した。9月の米CPIの大幅上昇と、今後数ヶ月間で一段の上昇が見込まれたことを受け 、米10年債利回りは一時1.6%超まで上昇。このため、金は上げ幅を削った。ただし、その後利回りが低下し、金利を生まない金を保有する機会費用が下がったことで金相場は上昇した。

10月14日は小幅上昇。一時1,800.12ドルまで上昇し、1ヶ月ぶり高値を付けた。米ドル相場と米国債利回りの下げにより、インフレヘッジとして金が買われた。米新規失業保険申請件数が良好な内容だった点は、ほとんど重視されなかった。

週末10月15日は下落。米債券利回りの上昇や9月の米小売売上高の想定外の増加を受け、安全資産としての魅力が薄れた。9月の米小売売上高は予想に反して増加し、株価を押し上げた。

米10年債利回りも前日付けた1週間超ぶりの低水準から回復した。FRBでは、毎月の債券購入規模の縮小について、政策当局者の大半が早ければ来月から開始することを支持しているものの、インフレやその対応策に関する意見の相違は大きい状況にある。週末は1,767.25ドルで引けた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、10月8日の985.05トンから、15日には980.10トンに減少した。投資家の金買い意欲の低下が継続している。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、10月12日時点で18万5,539枚の買い越しとなり、前週から買い越しが2,957枚増加した。買いポジションが2,564枚増加し、売りポジションが393枚減少した。

ただし、10月13日以降に金相場が上下に大きく変動しており、投機筋がどのように取引したかを週末のデータで確認したい。

円建て金相場も上昇。ドル建て金価格の上昇と、米ドル/円相場が大きく上昇したことが水準の引き上げに寄与した。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:上値の重さが意識される

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米インフレ動向と金融政策への影響
・米ドル・米金利の上昇リスク
・円建て金相場は円安が押し上げに寄与

金相場は上値の重い展開にある。先週は重要な節目である1,785ドルを超え、一時1,800ドルの節目を超える場面もあった。しかし、この水準を維持できずに週末に大きく反落している。米ドル高基調が結局は上値を重くする要因になっていると言える。

先週末時点では重要なサポートの1,760ドルは維持しているが、これを割り込めば、金相場の戻りはまだ早いということになるだろう。今週はそのような動きになるかを確認したい。

一方、市場ではインフレ圧力の高まりが意識され始めているようである。私自身は一般的な市場の見方と違い、インフレの継続リスクを各所で訴えてきた。FRBや欧州中央銀行(ECB)などの主要中銀も含め、多くの金融関係者は「インフレは一時的」と言い続けてきた。

しかし、その「一時的」という定義が何やら別の意味にすり替わり、現時点でも収まる気配のないインフレに対して、低下する要因を探し出しているようである。しかし、それは無駄な作業に終わるだろう。

今後の金相場だが、しばらくは米ドル高が意識される可能性がある。インフレ懸念が中銀の想像以上に強まっており、市場で早期の利上げが意識される可能性がある。そうなると、米ドルが思いのほか下がらないということになる。

米利上げが実際に行われるまで、米ドルは底堅く推移し、米金利と米ドルの上昇がドル建て金相場を抑制する可能性がある。この間に株式市場が堅調に推移すれば、金市場に目を向ける投資家はなかなか増えないだろう。

その結果、金相場は下値を試す可能性もあるだろう。しかし、一部の賢明な投資家は、FRBの政策に関係なく、インフレ上昇が歴史的な強材料となることを意識し始めている可能性がある。また株式市場が不安定化すれば、安全資産としての金需要が高まる可能性もあるだろう。

世界的なエネルギー不足に伴い、コモディティ価格全般の上昇が成長を遅らせるとの懸念が強まっており、いわゆるスタグフレーションのリスクが意識され始めている。

インフレ見通しと世界の経済成長懸念が強まることで、2022年下半期のビジネスと消費活動が大幅に減退するとの見方が出始めている。スタグフレーションの際に最も上昇するのは金である。これは過去のデータでも明確である。

もっとも、私自身はスタグフレーションに陥る可能性は極めて低いと考えている。したがって、今の時点でスタグフレーションのリスクを前提に金を保有する意味はあまりないだろう。むしろ、将来のインフレそのものに対して、資産の保全として金を保有することを考えるのが良いだろう。

一方、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公開され、経済支援策の縮小を11月半ばに開始できる可能性が示唆されたが、インフレ高進の脅威と金利引き上げ時期については参加者の間で意見がまだ割れていることが判明した。

これ自体は材料視されなかったが、市場は急速にインフレヘッジを材料視し始めているように見える。しかし、その前に利上げもある。利上げが実施されるまでは米ドル高が続くだろう。その結果、金相場の上昇は限定的になりやすいと思われる。

金は伝統的にはインフレヘッジとみなされているが、中銀による景気刺激策の縮小と利上げが国債利回りを押し上げ、利子を生まない金を保有する機会費用の上昇につながるだろう。

しかし、この動きも利上げが実際に開始されるまでであろう。市場のリスク回避傾向が目先の金相場を支える可能性があるが、株価が上昇すると上値は抑えられるだろう。

金利上昇と景気低迷が同時に進むスタグフレーションの懸念も出始めているようだが、それを背景に金相場が上昇するようであれば、それはネガティブな金価格の上昇である。そうならないことを願いたいところである。

今後FRBが量的緩和の縮小を始めたとしても、金利は比較的低い水準にとどまるだろう。米ドル高傾向は続くだろうが、当面は米ドル高が金相場の上値を抑えるだろう。先週のように、1,800ドルに近付く場面では、売りが出てくる可能性がある。

下値では将来のインフレリスクや中国・インドなどのアジアの押し目買いが入り、下値は限定的であろう。このように、金相場は当面は1,700ドルから1,800ドルのレンジで推移する可能性がある。

これまで解説してきたように、米利上げが開始されるまではレンジ相場で推移すると考えておきたい。その上で、金相場が大きく下落したときに押し目買いのタイミングを逃さないようにすることが肝要であろう。

円建て金相場は大きく上昇した。これまでは「6,300円に放れた方についていきつつ、短期的なトレードに徹する方法はある」と解説してきた。円安を背景に、重要な節目だった6,400円を超え、さらに6,500円も超えて6,600円を一時超える場面もあった。

先週のコラムでは、「これまで上抜けられていない6,500円水準まで上昇するようなことになれば、一旦は利益確定を行ったほうが良い」と解説したが、早くもそのような動きになっている。このような動きになると、まさに円安相場であり、為替相場次第の展開になっていると言える。今は高値を買わないことが重要であると考えている。

したがって、今後は6,500円を割り込んで、6,300円前後まで調整するのを待って買いを検討したい。ただし、下げ局面で空売りすることは避けたいところである。下げたときに買い、上昇したときに利益確定を行うのが基本である。

長期的な視点での買いも検討したい。今は時間と資金を十分に分けて、ゆっくりと買うことが肝要である。金相場が上昇するのは、米利上げが市場に織り込まれた後になるだろう。時間軸としてはあと1年程度ある。この十分な期間をかけて買うつもりで対処したいところである。

長期的に金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むだろう。

プラチナ:大幅続伸の展開

プラチナは大幅続伸した。週初は下げたものの、その後は節目の1,000ドルを維持する形で反発し、10月14日には一時1,062.50ドルまで値を上げる場面があった。週末も高値を維持し、1,054.49ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、10月12日時点で1万919枚の買い越しとなり、前週から買い越しが5,404枚増加した。買いポジションが703枚減少し、売りポジションが6,107枚減少した。今後は売り方の買い戻しに加え、新規の買いが入るかに注目することになろう。

プラチナはようやく反発基調に入ってきた。特段の材料があるわけではないが、背景には金相場が一時上昇したことや、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの上昇があると考えられる。

先週のコラムでも解説したように、南アランドは、プラチナ相場が安値をつけた10月6日に1ドル当たり15.19ランドに下落したが、その後は順調に値を戻しており、現時点では14.6ランド台にまで上昇している。短期的には下落基調から脱し、上昇トレンドに転換したと思われ、これがプラチナ相場に影響を与えている可能性がある。

プラチナ相場はこのような背景もあり、節目の1,000ドルを回復し、さらに上値を試す展開に移行している。重要なチャート上の節目もクリアしており、上げやすい地合いにあるように見える。

米ドルが新興国通貨に対して下落するような動きになれば、2021年7月に付けた高値の1,146ドルを試す可能性も十分にあるだろう。もっとも、プラチナ相場の上昇の持続性については慎重に見ていきたい。

毎週、繰り返し述べているが、現在のプラチナ市場のファンダメンタルズ材料には価格を押し上げる材料はほとんどなくなっている。従って、金相場や南アランドの動向などに注意しながら、現在の上昇が本物であるかを慎重に見ていきたいと考える。

円建てプラチナ相場は大きく上昇し、節目の4,000円をうかがうところまで上昇してきた。「3,700円を超えるような相場展開になれば、それは強気相場への転換を意味するだろう」と解説してきたが、まさにそのような動きになっている。

そのため、「短期的なトレードを前提に、買いを検討しても良いだろう」とも解説したが、一方で「早めに利益を確定することを念頭に置いておきたい」ともしてきた。

「3,900円から4,100円までの水準で確実に手仕舞いを行うことが肝要」とも述べたが、まずは節目の4,000円を明確に超えるかを確認することになろう。その上で、利益確定を優先させ、押し目を待って買うことを考えたいところである。

ただし、逆張りで空売りすることはお勧めしない。調整した場合に、3,700円で下げ止まるかをまずは確認したい。これを維持した場合には、押し目買いを検討できるだろう。

ただし、その場合でも、4,000円前後に上昇した場合には早めに利益確定を行いたいところである。また、高値を買い上げないことも肝要である。今はまだ押し目買いが有効であると考える。

一方、長期的な買いについては、引き続き慎重に行うべきであろう。プラチナ相場が上昇するための材料は不足している。したがって、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと時間と資金を分けて、押し目を買うスタンスを維持したい。とにかく、慎重さが求められるだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーも続伸した。金相場の上昇につれる形で、10月14日には一時23.60ドルを付ける場面もあった。週末には高値から下げて、23.28ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、10月12日時点で1万7,987枚の買い越しとなり、前週から買い越しが1,608枚増加した。買いポジションが469枚減少したものの、売りポジションが2,077枚減少したことで、買い越しが増加した。今後は新規買いが入るかを確認することになろう。

銀相場は今回の戻り局面でも、やはり金相場の動きに沿った展開になっている。金相場は前週末に高値から大きく値を下げているが、銀相場はそこまでは下げていない。

ただし、重要なトレンドラインが位置する23.50ドル水準を維持できておらず、上値の重さが意識されやすい展開にあるように思われる。本格的な上昇に転じるには、少なくともこの水準を切り上げ、さらに節目の24ドルを明確に超えることが不可欠であろう。

繰り返し述べているが、銀相場には現時点で独自の材料が見当たらない面がある。そのため、引き続き連動性の高い金相場の動きに注目しておきたい。そのうえで、24ドルを超えた場合には、節目の25ドルを試す展開になろう。このように、引き続き重要なチャートポイントを意識しておきたい。

円建て銀相場は大幅続伸し、88円まで値を上げている。先週のコラムでは「短期トレードを大前提に、一旦買いを検討しても良いだろう」と解説したが、その一方で「86円から90円の水準では早めに利益確定を行うほうが良いだろう」とも述べた。

1週間でこのような動きになったわけだが、いかにも値動きが大きい。これも銀相場そのものの影響というよりも、円安の影響が大きいと言える。今後も為替相場の動きには注意が必要であろう。

目先は強気に推移しそうだが、高値を買わないことが肝要であろう。85円から84円までの押し目を待って、慎重に買いを行い、反発した際には早めに利益確定を行うようにしたい。88円から90円がターゲットになろう。

また、逆張りでの売りを行わないことも重要である。銀相場は上昇すると投機的な動きになりやすく、短期間で急伸する可能性もある。一方、長期投資を行う場合には、引き続き慎重に対処したい。時間と資金を分散したうえで、ゆっくりと押し目買いを行うようにしたい。水準としては、少し水準を切り上げ、83円以下を狙うようにしたい。

このような水準で買えば、下落した場合でも心理的かつ資金的な負担が少なくて済むだろう。また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いと考える。これは銀を取引する上で、極めて重要なポイントであることを理解しておきたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券