先週のゴールド:反落の展開

金相場は小幅反落した。週明け10月4日は1,170ドルまで上昇し、1週間超ぶりの高値を付けた。米ドル安に加え、株式市場でリスク選好が減退し、安全資産としての金需要が強まった。米国株は米国債の利回り上昇を眺めてハイテク株が売られ、主要株価指数は大幅安となった。

米中の貿易に関する新たな懸念も浮上した。中国は10月4日、米国が台湾に関して緊張を高めていると非難した上で、台湾独立を画策するようなら粉砕すると主張した。一方、台湾は防空識別圏に過去最多となる中国空軍の戦闘機などが侵入したと発表した。そのため、これらの地政学的リスクも意識された。

10月5日は反落。一時1.2%安まで下げ幅を拡大した。米国債利回りの上昇と米ドル高で、安全資産とされる金の魅力が低下した。ドル指数は先週付けた1年ぶり高値付近に上伸。他通貨保有者にとって金が割高になった。

10月6日は小幅反発した。米10年債利回りの低下に支援されたが、米ドル高で上値は抑えられた。エネルギー高を受けて米ドルが上昇し、他通貨保有者にとって金は割高となっている面がある。ADP全米雇用報告では9月の雇用が大幅に増加した。

10月7日は反落。米雇用統計の発表を控える中、週間新規失業保険申請件数の減少を受けて金利が上昇し、米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリングが近く始まるとの観測が強まった。

先週の新規失業保険申請件数は、ここ3ヶ月間で最も大きな減少幅を記録。米雇用市場はこのところの減速を経て、再び回復の勢いが増していることが示された。失業保険申請件数が金利を押し上げ、米株市場も小幅に上昇したが、金相場には圧力となっている。

週末10月8日は反発。米雇用統計の内容が振るわず、一時1,781.20ドルと、9月22日以来の高値を付ける場面もあった。しかし、その後はFRBが年内に景気刺激策を縮小させるための材料がまだ十分にあると市場が判断したことで高値からは大きく値を下げた。

9月の非農業部門就業者数は前月比19万4,000人増と、市場予想を大きく下回った。一方、7・8月分の就業者数は上方修正された。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、10月1日の986.54トンから、10月8日には985.05トンに減少した。投資家の金買い意欲は衰えるばかりである。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、10月5日時点で18万2,582枚の買い越しとなり、前週から買い越しが1万4,183枚増加した。買いポジションが2,125枚増加し、売りポジションが1万2,058枚減少した。前週の安値を売り叩いた向きが、損失覚悟の買戻しを入れていると考えられる。

円建て金相場も上昇。ドル建て金価格の上昇が押し上げにつながった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下落トレンドへの転換リスク

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・FRBの金融政策の変更時期
・米ドル・米金利の動向
・円建て金相場は円安が下値を支える可能性

金相場は前週末に高値を試したものの、重要なポイントを抜けきれず、結果的に上値を抑えられた。1,785ドル前後にはチャート上の重要なポイントが控えていたのだが、これを上回ることができなかったことが、短期筋の失望を招いたと言える。

米雇用統計が初めは低調とみられ、米金利が低下し、米ドルが売られて金相場は急上昇した。しかし、その後の内容は全体としてそれほど悪くないとの見方が強まった。FRBがテーパリングを先送りするよりは、むしろ前倒しで実施する道のりを継続するとの観測が強まっている。

11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング開始を決定し、12月に実際に開始するとの見方は揺らいでいないと言える。米10年債利回りも最終的には上昇しており、米ドルも堅調に推移しやすい地合いも変わっていない。これらが金相場の上値を抑えることになろう。

一方、エネルギー相場の上昇はインフレと利回り上昇を招く可能性がある。インフレ期待が高まれば、金相場にも注目が集まりそうなものだが、市場はそれ以上に金利上昇リスクを懸念しているようである。景気刺激策の縮小と金利上昇が債券利回りを押し上げ、金利を生まない金の保有コストが高まりやすいことを考えると、将来のインフレ高進にまで頭が回らないのも無理はない。

また、米連邦政府の債務上限が12月まで引き上げられる可能性が高まったことが市場に安心感をもたらし、株式相場が戻り歩調を強める動きを見せ始めたことも、金の弱地合いにつながっていると言える。

しかし、今回の米雇用統計でも明らかになったように、賃金上昇圧力が引き続き高まっている。これが直接インフレ率の上昇につながるかは判断の分かれるところではあるが、消費拡大につながるようであればポジティブなインフレ高進につながる可能性は否定できない。

しかし、それでもなお市場は、金利上昇を嫌がるだろう。その結果、金相場の上値は重くならざるを得ないと考える。これまでも解説してきたように、米利上げが織り込まれるまでは、米ドルが強くなりやすい地合いは変わらず、これが金相場を抑制することになろう。

テーパリングはすでに市場に織り込まれており、材料視する必要はない。やはり、利上げのタイミングを注視すべきである。原油・天然ガス相場の高騰が一過性のものではなく、これがインフレにつながるようであれば、FRBもこれまでの楽観シナリオから修正を強いられる可能性がある。

インフレ懸念材料が高まったときに、パウエルFRB議長は「雇用がまだ回復しておらず、利上げは先になる」などと悠長なことを言い続けるのだろうか。

いずれにしても、当面の間、市場は米金利の上昇を懸念し、金を買う動きを強めることはなさそうである。その動きは、金ETFの動向でも確認できる。したがって、今後も引き続き、長期投資では大きな押し目を狙っておくことが肝要である。

できれば1,700ドル前後で買えると良いだろう。2020年3月に付けた安値水準の1,680ドル前後で買うことができれば、保有するにもコストとして安心できる。そのような相場水準になったところを狙っておきたい。

短期売買に徹したい場合は、今は逆張りの方が有効であろう。今回も確認できたように、1,785ドル前後は今のところ重い水準であると考えられる。これを超えるまでは、戻り売りが有利であろう。その上で、1,700ドル近くまで下げれば、買い下がりを検討すると良いだろう。市場がインフレ懸念を重視するまでは、そのようなスタンスが賢明であろう。

円建て金相場は上昇した。先週のコラムで「6,300円に放れた方についていきつつ、短期的なトレードに徹する方法はあるだろう」と解説したが、実際そのような動きになっている。今は円安を背景に、重要な節目だった6,400円を超えている。ドル建て金相場が上値を試したものの下げに転じた動きとは対照的だが、今後も円安基調が強まれば、そのような動きになる可能性はある。

ただし、これまで上抜けられていない6,500円水準まで上昇するようなことになれば、一旦は利益確定を行ったほうが良いだろう。値動きを見る限り、100円単位で節目を形成しているようである。

また、6,500円を超えられなければ、逆張りで売りを建てることも検討できるだろう。その上で、6,300円程度まで下げた時には買い戻すといった方法もある。さらに、6,300円を割り込んで6,200円を試すようであれば、反発を狙って押し目買いを検討しても良いだろう。

もっとも、6,200円を割り込むようであれば、長期的な視点で慎重に買い下がっても良さそうである。

毎回、繰り返し述べているが、今は時間と資金を十分に分けて、ゆっくりと買うことが肝要である。金相場が上昇するのは、米利上げが市場に織り込まれた後になると考えている。時間軸としてはあと1年程度ある。この十分な期間をかけて金を買うつもりで対処すべきであろう。

長期的に金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むだろう。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。週初はやや軟調な動きとなり、10月6日には一時940ドルまで値を下げる場面があった。しかし、その後は急反発し、週末には一時1,038.22ドルまで上昇するなど、急伸した。週末は1,026.11ドルで引けている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、10月5日時点で5,515枚の買い越しとなり、前週から買い越しが138枚減少した。買いポジションが506枚増加し、売りポジションが644枚増加した。

プラチナは週末に急伸した。目立った材料はなかったと言えるが、あえて材料を探すとすれば、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの動きが挙げられるだろう。

南アランドは、プラチナ相場が安値をつけた10月6日に1ドル当たり15.19ランドに下落した。しかし、その後は値を戻した。トレンドはまだ下げ基調ではあるが、安値から切り返したことが、多少なりともプラチナ相場に影響を与えた可能性がある。この結果、節目の1,000ドルを回復したことになり、次の値動きが注目されるところである。

現在、チャート上の重要な節目である1,025ドル前後の水準にまで値を戻している。これを明確に超えると、地合いが好転する可能性がある。ただし、金相場の上値が重いことを考えると、プラチナ相場の上昇の持続性については冷静に見ていく必要があるだろう。

毎週、繰り返し述べているが、現在のプラチナ市場のファンダメンタルズ材料には価格を押し上げる材料はほとんどなくなっているようである。従って、現在の戻り歩調が本物であるかをまずは確認することが肝要だろう。

円建てプラチナ相場は節目の3,500円を維持し、さらに3,600円も超えて、3,700円台を回復するところまで値を戻した。前週は、「3,700円を超えるような相場展開になれば、それは強気相場への転換を意味するだろう」と解説したが、早速そのような動きになっている。

これで再び、プラチナが人気化するかは不明だが、まずはドル建てプラチナ相場の動向をよく見ておくことが肝要である。その上で、短期的なトレードを前提に、買いを検討しても良いだろう。

ただし、その場合には早めに利益を確定することを念頭に置いておきたい。先週のコラムでも解説したように、3,900円から4,100円までの水準で確実に手仕舞いを行うことが肝要であろう。

一方、長期的な買いについては、引き続き慎重に行うべきであろう。プラチナ相場が上昇するための材料は不足している。したがって、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと時間と資金を分けて、押し目を買うスタンスを維持したい。とにかく、慎重さが求められるだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅ながら続伸した。22ドル台半ばでの膠着状態が続いたが、週末には金相場の上昇につれる形で一時23.20ドルまで上昇する場面がみられた。しかし、その水準を維持することができず、週末は22.66ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、10月5日時点で1万6,379枚の買い越しとなり、前週から買い越しが326枚減少した。買いポジションが533枚減少し、売りポジションが207枚減少したことで、買い越しがわずかに減少した。

銀相場は基本的に金相場の動きに沿った展開になっている。値動きもほとんど同じであり、独自の材料で動いているわけではないことがわかる。特に10月8日の市場では、米雇用統計の結果を受けて金相場が一時的に上昇した際、同じように銀相場も上げている。

しかし、本来は銀相場にはあまり関係のない材料である。とはいえ、相場とはそのようなものであり、値動きが似たような銘柄や市場に影響を受けて変動するものである。株式市場で個別銘柄の材料が出ていないのに、市場全体が動くとそれにつれて変動するのも同じ原理である。

特に、金相場は貴金属市場での先導役であり、銀相場はその動きにつれやすい傾向がある。今後もこのような事象がみられるだろう。銀相場は重要な水準である22.70ドル前後を明確に上回ることができていない。これを超えないことには、上昇基調に入ることはできない。

また、超えた場合でも23.75ドルには同じように重いレジスタンスが控えている。金相場と同様に、基調が上向くには複数のハードルがある。特段の材料がないだけに、このようなチャートポイントを意識した上で、相場を見ていくしかないだろう。

円建て銀相場は反発し、重要な節目の84円を超えている。先週のコラムでは「82円を明確に上回り、さらに84円を超えるようであれば、上昇基調への転換の期待も高まろう」と解説したが、まさにそのような動きになっている。

短期トレードを大前提に、一旦買いを検討しても良いだろう。ただし、その場合でも、86円から90円の水準では早めに利益確定を行うほうが良いだろう。逆に84円を割り込んだ場合には、早めにロスカットを行い、次の動きに備えたほうが良いだろう。

一方、長期投資を行う場合には、相当慎重に押し目買いを行うべきであろう。時間と資金を分散した上で、ゆっくりと行うようにしたい。水準としては、最低でも82円以下を狙い、できれば80円前後が望ましい。

このような水準で買えば、心理的も負担が少なくて済むだろう。また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いと考える。これは銀を取引する上で、極めなポイントであることを理解しておきたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券