先週のゴールド:続落の展開

金相場は反発した。週初の9月27日は新規の手掛かり材料難の中、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の議会証言を翌日に控えて様子見ムードが広がり、ほぼ横ばいとなった。

対ユーロでの米ドル高を背景にドル建て金相場に割高感が出て売りが先行する場面もあった。米長期金利の上昇も金利を生まない資産である金相場の重石となった。

ただし、中国恒大集団の債務問題への懸念がくすぶる中、安全資産としての金には押し目買い意欲も根強く、小幅なプラス圏に値を戻した。

9月28日は下落し、7週間ぶりの安値を付けた。FRBが予想よりも早い時期に利上げに踏み切るとの見方から、米ドル高が進行し、米国債利回りが急上昇したことが嫌気された。一時8月11日以来の安値となる1726.19ドルを付ける場面もあった。

9月29日は続落。米長期金利の高止まりと対ユーロでの米ドル買い加速が圧迫要因となった。2021年3月末以来、半年ぶりの安値水準をつけた。前日に7週間ぶりの安値を付けた反動でショートカバーが入り、一時1,746ドルまで上昇したが、その後は米ドルが対ユーロで騰勢を強める中、ドル建て金相場の割高感から売りが台頭した。

早期の量的緩和縮小と利上げ観測を背景に、米10年債利回りはこの日も一時1.55%近辺に上昇したことで、金利を生まない資産である金を下押し、一時1,720.49ドルに下落する場面もあった。

9月30日は上昇し、一時2.2%高となった。米新規失業保険申請件数の増加を受けた米ドル安が金を押し上げた。ただし、金はFRBが量的緩和の縮小を近く始めるとの見方から最近下げており、7-9月期を通じて下落した。

週末10月1日の金相場は小幅に上昇した。利上げ観測が逆風となっていたが、米ドルの下落に加え、インフレ高進や成長リスクへの懸念が打ち消した。週間でもプラスとなった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、9月24日には993.52トンから、10月1日には986.54トンに下落した。投資家の金買い意欲はいまだに回復していない。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、9月28日時点で16万8,399枚の買い越しとなり、前週から買い越しが1万9,248枚減少した。買いポジションが2.856枚減少し、売りポジションが1万6,392枚増加した。投機筋の売り優勢が引き続き強いことが確認できる。

円建て金相場も上昇。ドル建て金価格の上昇が押し上げにつながった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下落トレンドを上抜けできるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・FRBの金融政策の変更時期
・米ドル・米金利の動向
・円建て金相場はドル建て金相場の行方次第

金相場は安値を付けたところから、辛うじて反発している。今週は1,770ドルを超えるかが最大の焦点となろう。これを超えると、目先は上値を試す可能性が高まると考えられる。

もっとも、1,788ドル近辺にも重要なポイントが控えている。短期的に強気になるには、まずはこの水準を超えることが不可欠であろう。一方、中国や欧州の電力不足を受けたエネルギー価格の高騰に注目が集まりつつある。これが景気や企業業績を直撃するとの懸念が高まり、さらにインフレ懸念にも拡大する可能性がある。この点にも注目しておきたい。

今は株式市場がやや不安定になっている。その背景には、中国恒大集団の問題や米金利の上昇がある。ただし、金相場を見る上では、株式市場も重要だが、それ以上に米金利とそれに影響を受ける米ドルの動きが重要になりそうである。

とにかく、1,770ドルレベルを明確に超えないことには、反発は望めない。その材料は何になるかをよく見ておくことが肝要である。米国債利回りの上昇が続く間は、利子を生まない金は圧迫されやすい。

FRBによるテーパリングはすでに11月決定・12月開始でほぼ市場に織り込まれており、市場の関心はすでに利上げ開始時期とインフレ動向に向かっている。この点も理解しておくと良いだろう。

このように、目先の金相場は、FRBの早期利上げ観測とそれに伴う米金利の上昇、さらにそれを受けた米ドルの上昇が売り材料視されやすい。投資家は金を景気刺激策に伴うインフレに対するヘッジ資産と見ているが、一方で国債利回りが上昇する中、金利を生まない金への投資妙味は低下しているようである。今後は米金利の引き上げまで米ドルが上昇しやすいだろう。

米金利の引き上げが織り込まれるまで米ドルは上昇しやすく、それまでは金は上値が抑えられやすいと言える。このように考えると、目先は短期トレードに徹し、大きな押し目で長期投資の買いを入れるようにするのが得策と思われる。

さて、私自身は低金利・低インフレ時代が終わると見ているのだが、私が知る限り、それを明確に指摘する向きはほとんどいないようである。

FRBのパウエル議長や、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁など、主要中銀のトップが現在のインフレは一時的であり、継続しないと言い続けていることが影響しているのだろうか。金融政策を司るこれらの立場の人間が、そのように言えば、そう思うのは仕方がない。しかし、彼らが常に正しいとは限らない。また、実際にはインフレのリスクを認識しているにも関わらず、立場上インフレは沈静化しないと意図的に言い続けている可能性もある。

最近になって、パウエルFRB議長は9月28日の上院銀行委員会で証言し、利上げを開始する基準について、「テーパリング着手よりも大幅に高い」との見解を示している。また、「雇用の最大化の基準を満たすまでには長い道のりがある」とし、早期利上げ観測を牽制した。

一方、インフレ動向に関しては、「一部では一段と悪化した」とした。金利引き上げで株価が下がることを避けたいため、このような発言を繰り返しているのである。もはや、FRBの命題は、雇用の最大化のインフレのコントロールから、株価の維持に変化していることは明白である。

一方、9月29日、ECBが開催したオンライン会合では、FRBが「金融政策の正常化へ注意深く向かう」と強調し、量的緩和縮小の開始が近いことを示唆した。しかし、政策金利引き上げの時期については「まだ遠い」と明言し、利上げを判断する基準は高いとの認識を繰り返し示している。

一方で、足元でインフレが高進する中、FRBが掲げる物価安定と雇用最大化という2つの目標の間で「緊張がある」と懸念を示した。さらに、「インフレは高いのに、労働市場には余剰が見受けられる」とした上で、「今後2~3年はこのプロセスに対処していくのが最も重要な優先課題であり、難題になる」とした。ただし、「足元のインフレ高進が持続的な物価上昇見通しに繋がっている証拠は今のところない」とし、物価高の中期的なインフレ期待への影響を注視していくとした。

また、コロナ禍を発端とする景気後退からの回復が進む中、「サプライチェーンのボトルネックが解消されないことはいら立たしい」とした。これらの発言から、インフレが沈静化するという確信があるわけではなく、むしろ希望的観測に近いことがわかる。

また、株価を維持したいがために、インフレ高進のリスクよりも、労働環境の回復が遅いため、利上げは早まらないことを強調している。しかし、このロジックに無理が出てきていることを、パウエルFRB議長が一番気づいているように感じられる。

直近でインフレが強まったのは、1970年代後半である。当時は原油高がインフレを押し上げた。1980年に金利はピークを付け、その後40年間、低下し続けた。その間、インフレも低下し、日本ではデフレを経験した。いまだにその状況から脱していないのだが、海外ではインフレ率が先進国でも3%を超える水準に達している。

2020年の新型コロナウイルス感染拡大で、世界的に経済活動は停滞した。景気悪化に歯止めをかけるため、各国政府は積極的な財政出動により給付金を配るなど、国民生活の保全に努めた。一方、ワクチン接種の進捗により、徐々に感染者数の拡大も落ち着いてきた。コロナ禍からの回復過程で、一部の業種では人員不足になり、賃金も上昇するなど、雇用情勢にも変化が見られ始めている。

また、経済の回復に伴い、原油価格は2021年に入ってから5割を超える上昇となっている。インフレ高進の初動では、原油高が消費者物価の押し上げに直結する。さらに、人員不足を背景にサプライチェーンに問題が生じる中、コンテナ価格が急騰するなどしており、これらのコストがいずれ最終製品価格に上乗せされるだろう。

パウエルFRB議長がこの点を実は最も気にしているはずである。一方、欧米などでは住宅価格が急騰するなど、世界ではインフレ圧力が強まっている。この波はいずれ日本国内にも押し寄せてくるだろう。

こうなると、現金・預金の価値は大きく目減りすることになる。一方、金価格は上昇する可能性が高い。米利上げが始まるまでは、米金利の上昇と米ドル高が継続する可能性が高く、これが金価格を抑制するだろう。

しかし、その後は金価格の上昇が鮮明になるだろう。つまり、これからの1年間は、金の押し目買いに徹する期間になるわけである。深い押し目があれば、それを逃さずに買い下がっていくことが、今後1年間の重要な作業になるだろう。

円建て金相場は6,300円前後でのもみ合いが続いている。今は明確な方向性が出づらい期間である。したがって、慎重に対応することが肝要である。とはいえ、収益機会は十分にあるだろう。6,300円に放れた方についていきつつ、短期的なトレードに徹する方法はあるだろう。

値動きを見る限り、100円単位で節目を形成しているように見える。したがって、6,300円を上に放れ、6,400円や6,500円まで上昇すれば、一旦手仕舞いをするなど、短期間で取引を終えるほうが良さそうである。もっとも、下値も6,200円がポイントになるだろう。これ以下の水準では、長期的な視点で慎重に買い下がっても良さそうである。

繰り返し述べているが、今は時間と資金を十分に分けて、ゆっくりと買うことが肝要である。金相場が上昇するのは、米利上げが市場に織り込まれた後になると考えている。時間軸としてはあと1年程度ある。この十分な期間をかけて買うつもりで対処すべきであろう。

長期的に金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むだろう。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。週初は軟調な展開だったが、その後は支えられ、週末にかけて値を戻した。ただし、軟調地合いから抜け出ることができず、週末は972ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、9月28日時点で5,653枚の買い越しとなり、前週から買い越しが4,435枚増加した。買いポジションが1,322枚減少したものの、売りポジションが5,757枚減少したことで買い越し幅が拡大した。

プラチナは引き続き軟調な動きである。下げては戻すものの、直近高値を更新できず、再び下値を切り下げる高値で水準が低下してきた。しかし、前週でひとまず底打ちした格好になっており、目先は戻り歩調に入ることができるかを確認することになるだろう。

明確な上昇基調に戻すには、まずは節目の1,000ドル、さらに長期下落トレンドが位置する1,030ドル水準を回復することが不可欠であろう。そのような動きになるには、最低でも金相場が上向いていく必要があるだろう。その上で、プラチナ独自の材料が加われば、なお良いだろう。

しかし、繰り返し述べているが、プラチナそのものに目立った良い材料は見当たらないのが現状である。今後はプラチナを自動車触媒に利用するディーゼル車の生産が減少していくことが確定的であり、将来的な需要増は見込みづらい。この点は、プラチナ相場を見ていく上で、避けて通れない重要なポイントである。

現在のプラチナ市場のファンダメンタルズ材料には価格を押し上げる材料はほとんどなくなっていることを十分に理解した上で、今後のプラチナ市場を見ていくことになろう。

円建てプラチナ相場は節目の3,300円を維持して反発した後は、3,600円台を回復するところまで値を戻した。しかし、その水準を維持できずに調整している。目先は3,600円を早期に回復し、上向き基調に戻すことができるかを見ていくことになろう。ドル建てプラチナ相場の動向をよく見ておくことが肝要である。

3,700円を超えるような相場展開になれば、それは強気相場への転換を意味するだろう。その場合には、短期的なトレードを前提に、買いを検討しても良いだろう。

ただし、その場合には早めに利益を確定することを念頭に置いておきたい。3,900円から4,100円までの水準で確実に手仕舞いを行うことが肝要であろう。

一方、長期的な買いについては、引き続き慎重に行うべきであろう。プラチナ相場が持続的な上昇基調に入るには、明らかに材料不足である。したがって、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと時間と資金を分けて、押し目を買うスタンスを維持したい。とにかく、慎重さが求められるだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅ながら続伸した。前週からの下落の流れを受けて売りが優勢となり、9月29日には一時21.39ドルまで下落する場面がみられた。しかし、ここが底値になり、その後は反発基調に入った。週末は22.52ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、9月28日時点で1万6,705枚の買い越しとなり、前週から買い越しが1,070枚増加した。買いポジションが2,218枚減少したものの、売りポジションが3,288枚減少したことで、買い越しが増えた。

銀相場も安値圏での推移にある。ただし、目先は底値を確認し、一旦は上値を試す展開にあり、もみあいになっている。特段の材料もなく、買い上がりづらい展開にある。今週はまず節目の23ドルを超えるかを確認することになろう。その上で、さらに水準を切り上げ、中期的なトレンドである24ドルまで上昇できるかを確認したい。

ただし、現段階では24ドルを超えるのはかなり難しそうである。金相場が上向けば、それに支えられる形で上昇する可能性もありそうだが、その可能性は高くないと考えておく。ファンダメンタルズ材料に特段のものがないだけに、値を戻しても一時的に終わる可能性があることは理解しておきたい。その上で、投機筋の短期的な買いが入ってくるかを注視しておきたい。

円建て銀相場は続落した。節目の80円を一時割り込んだが、辛うじて維持している状態にある。引き続き地合いは良いとは言えないが、82円を明確に上回り、さらに84円を超えるようであれば、上昇基調への転換の期待も高まろう。その場合には、一旦短期的なトレードを念頭に買いを検討しても良いだろう。

ただし、その場合でも、86円から90円の水準では早めに利益確定を行うほうが良いだろう。

一方、長期投資を行う場合には、相当慎重に押し目買いを行うべきであろう。時間と資金を分散した上で、ゆっくりと行うようにしたい。また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いと考える。これは銀を取引する上で、極めて重要なポイントであることを理解しておきたい。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券