先週のゴールド:続落の展開

金相場は下落した。週初9月20日は、中国不動産開発大手の中国恒大集団が巨額債務を抱え、経営危機に陥っているとの報道をきっかけに投資家のリスク回避姿勢が台頭し、安全資産としての金に買いが集まった。

米長期金利の低下も金利を生まない金の支援材料だった。9月22日には一時1,786.91ドルまで上昇する場面があった。9月22日は下落した。金は米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けて売られた。

公表されたFOMC参加者の政策金利見通しでは、事実上のゼロ金利解除となる利上げ開始時期の予想が2023年から2022年に前倒しされた。一方で、FOMC声明では「資産購入ペースの減速が近く正当化される」と指摘し、量的緩和策の縮小開始を早ければ11月にも決定することを示唆した。発表直後には売り買いが交錯する場面も見られた。

9月23日は大幅安。米国の早期利上げ観測を背景とした売りが膨らんだ。週末9月24日は上昇。ドル相場が軟調だったほか、中国恒大集団の経営難をめぐる懸念からリスク回避姿勢がやや強まり、買いが入った。ただし、利上げ観測が上値を抑えた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、9月24日には993.52トンとなった。9月17日には1,001.66トンに増加したものの、その後は買いが入らず、9月23日には992.65トンに減少する場面も見られた。投資家の金買い意欲は全く回復していないことが確認できる。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、9月21日時点で18万7,647枚の買い越しとなり、前週から買い越しが2万113枚減少した。買いポジションが1万318枚減少し、売りポジションが9,795枚増加した。投機筋の売りが優勢であることが確認できる。

円建て金相場も下落した。ドル建て金価格の下げが下落につながった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:上昇要因が見当たらない状況

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・FRBの金融政策の変更
・米ドル・米金利の動向
・円建て金相場はドル建て金相場の行方次第

金相場は上値の重い状況にある。これまでも、米金融政策の変更を背景に、利上げが市場に織り込まれるまで金相場は上値の重い状況が続くとしてきた。前週は節目の1,800ドル超えを試したものの、タイミングよくFOMCが開催され、そこでFRB関係者のタカ派的な姿勢が示されたことで、これをきっかけに売られる展開になっている。今の金市場の動きを見る限り、基調が明確に上向くのは難しいように感じられる。

FRBは11月に現在の量的緩和策の縮小を決定し、12月に縮小を開始する可能性が高いと見られており、市場はすでにこれを織り込み始めているように見える。利上げ時期の想定が前倒しになり、これが金利上昇と米ドル高につながる可能性がある。そうなると、金は上昇する理由がなくなってしまう。

しかし、市場とは不思議なもので、これらの材料が織り込まれるまでは、金相場は軟調に推移する可能性がある。しかし、実際に利上げが実施されれば、材料の織り込み完了となり、金相場が反転・上昇する可能性は十分にあろう。このパターンは、前回のテーパリングから利上げまでのケースとなるが、今回はインフレ懸念が以前にも増して強まっている。

さらに、金利水準も低いため、利上げ余地がかなりある。この点は、金相場の上値を抑える可能性がある。とはいえ、インフレが強まれば、金市場への関心は高まるだろう。FRBのパウエル議長は、依然として現在のインフレ動向は一時的との見方を変えていない。この姿勢が、市場を安心させている面がある。

とはいえ、サプライチェーンの問題もあり、コンテナ運賃が高止まりするなど、企業の将来のコスト負担が拡大する可能性がある。これがモノの価格の上昇につながる可能性があり、そうなると米消費者物価指数(CPI)上昇も想定せざるを得なくなる可能性がある。

物流コストは着実に上昇しており、これが目に見えないコスト負担となり、最終的には消費者にのしかかってくる。結果的にインフレ率は高止まりし、パウエル議長が想定しているようなインフレ率の沈静化は先送りされる可能性も否定できないだろう。

私自身はその可能性が高いとみているが、そのような状況が続く期間に関しては、それぞれの立場で定義が曖昧であり、比較のしようがない。パウエル議長は年単位での期間を想定しているようにも見える。そうであれば、半年程度、インフレ率が高止まりしても、「一時的」と言い張るだろう。

いずれにしても、市場金利が上がってしまえば、FRBには対処のしようがない。テーパリングを開始すれば、これまでのように債券を市場から購入することで、市場金利を抑制することは困難になる。まして、インフレ率が実際に上昇すれば、ますます困難になる。すでに半数のFRB関係者が、2022年中の複数回の利上げ実施を想定している。この点にも目を配っておく必要があるだろう。

一方、中国恒大集団の材料で金が安全資産として買われることで、下値が支えられるというシナリオは、あまり想定しないほうが良いだろう。このようなイベントは影響を図ることは困難である。したがって、この材料をあらかじめ想定して金を買うという行為は避けるべきと考えている。

むしろ、利上げ時に金利上昇が織り込まれ、その後は金相場が上昇に転じるというシナリオを前提に見ておいた方が、より健全であるように思われる。中国恒大集団の問題に解決の道が示されると、市場はリスクオンになり、金利は上昇して米ドルが買われる可能性がある。

金市場は、最近は金利よりも米ドルの動きに影響を受けやすいように見える。そのため、米ドル相場の動きにはこれまでに以上に敏感になっておきたい。

円建て金相場は6,300円前後でのもみ合いである。地合いは良くないと言える。トレンドは下向きであり、これで下げが強まるかどうかを見極めることになる。為替相場が円安基調であり、これが円建て金相場の下値を支えている面がある。ただし、米ドル高になればドル建て金相場の下げにつながるため、相殺されることになる。

そのため、まずはドル建て金相場の動向を注視すべきであろう。現状では6,200円までの調整リスクを念頭に置きつつ、この水準で下げ止まるかを確認することになる。6,200円で下げ止まらなかった場合には、節目の6,000円を試すことになろう。今は押し目買いを行う場合、かなり慎重に行うべきであろう。時間と資金を十分に分けて、ゆっくりと買うことが肝要である。

金相場が上昇するのは、米利上げが史上に織り込まれた後になると考えている。時間軸としてはあと1年程度ある。この十分な期間をかけて買うつもりで対処すべきであろう。もっとも、トレーディングを志向する場合には別である。短期的な上げ相場で買いを検討し、下げ相場で売りを検討すべきであろう。今は短期トレードを行う場合には、短期間で取引を終わらせることを大前提に行ったほうが良さそうである。

繰り返し述べているが、長期的に金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。

そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むと考えられる。長期投資家は、常に長期的な視点を失わず、近視眼的にならないことが肝要である。その上で、株式投資を継続する中で、金相場の押し目をしっかりと買っておけば、最後は報われるだろう。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。週初9月20日には一時901.30ドルまで下落し、節目の900ドル割れ目前まで下落したものの、その後は反発に転じ、9月23日には一時1,012.27ドルまで値を戻す場面もあった。ただし、その後は週末に掛けて徐々に値を下げ、週末は982ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、9月21日時点で1218枚の買い越しとなり、前週から買い越しが2,285枚増加した。買いポジションが419枚減少したものの、売りポジションが2,704枚減少したことで買い越し幅が拡大した。

プラチナは弱い動きが続いている。節目の900ドルを割り込む直前まで売り込まれたが、金相場が何とか踏ん張ったことでプラチナ相場も辛うじて値を維持した。安値買いが入った可能性があるが、それでもなおトレンドはまだ下向きである。

これが明確に上向くには、1,040ドルを超える必要があるだろう。同じ白金族系メタルのパラジウムが急落しており、これがプラチナにも波及したと言える。世界的な半導体不足による自動車生産の減産が伝えられているが、それにより自動車触媒向け需要が減退するとの連想で、これらの白金族系メタルが売られている面がありそうである。

しかし、水準としてはかなり低いところまで下げてきた印象がある。前回のコラムでも解説したように、今後はプラチナを自動車触媒に利用するディーゼル車の生産が減少していくことが確定的であり、将来的な需要増は見込みづらい。そのため、相場も上がりづらくなる可能性が指摘できる。

このように、プラチナ市場のファンダメンタルズ材料には価格を押し上げる材料はほとんどなくなっている点には要注意である。水素燃料用の電極にプラチナが使用される点は、将来的に希望が持てる材料になりそうだが、それだけで現在想定されている需要の落ち込みをカバーできるかはかなり不透明である。プラチナの需要を取り巻く環境は厳しいことを念頭に置いた上で、プラチナに対処すべきであるという考えは全く変わらない。

円建てプラチナ相場は節目の3,300円を維持して反発している。このまま基調が上向くかを見ておく。現時点では3,600円で上値を抑えられているが、この水準は過去に何度か試した下値水準になっている。

これを割り込んでから下げた厳しくなっており、今度はこの水準を回復できるかがポイントになる。超えると重要な節目である6,700円を試すことになりそうである。その上で、3,700円を明確に上抜けば、相応に強い相場になろう。まずは3,600円を超えるのを確認した上で、買いを検討するようにしたい。

一方、長期的な買いについては、上記のような事情もあり、かなり慎重に行うべきであろう。プラチナ相場が持続的な上昇基調に入るには相応の時間が必要と考える。長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。

高値を買わず、金相場と同じ時間軸を念頭に置き、じっくりと時間と資金を分けて、押し目を買うスタンスを維持したい。繰り返すし述べているが、長期的な視点での購入には、これまで以上の慎重さが求められることを付け加えておく。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅反発の展開

シルバーはわずかに反発した。前週からの下落の流れを受けて、9月20日には一時22.01ドルまで下落するなど、軟調な動きが続くかと思われた。

しかし、金相場が反発したことで水準を維持し、9月23日には22.88ドルまで値を戻す場面もあった。しかし、上値は重く、週末に書けて反落し、週末は22.41ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、9月21日時点で1万5,635枚の買い越しとなり、前週から買い越しが1万1,041枚減少した。買いポジションが1,881枚増加したが、売りポジションが1万2,922枚増加したことで、買い越しが大きく減少した。安値とみた押し目買いも入っているが、下落基調の中で売りが優勢になっていることが確認できる。

銀相場は安値圏でのもみあいになっている。特段の材料もなく、買い上がりづらい展開にある。金相場も上値の重い展開にあり、銀相場だけが上昇するには力不足の状況である。節目の22ドルを割り込むと地合いは急速に悪化しそうである。この点には注意しておきたい。

株価が持ち直せば、工業用需要がメインの銀相場は上げやすくなると考えられる。今は株価がやや不安定になっているだけに、この点も銀相場の上値を抑えている可能性がある。

したがって、株価動向にも目を配っておきたい。まずは節目の22ドルを固め、その上で22.40ドル水準を超えてくれば、上昇に転じる可能性も出こよう。より明確に下落基調から抜け出るには、24.30ドル超が必要と考える。ファンダメンタルズ材料が不足しているだけに、値動きに妙味を感じる投機筋の短期的な買いが入ってくるかを注視することになりそうである。

円建て銀相場は続落した。節目の80円を試す展開になっており、地合いはかなり悪いといえる。まずは80円を維持し、反発基調に入ることができるかを確認することになろう。その上で、。これまで重要なサポートになっていた84円を回復すれば、短期ベースでの買いを検討しても良さそうである。

もっとも、その場合でも、上昇した際には86円から88円の間で早めに利益確定を行ったほうが良さそうである。金相場と同じような値動きになることを前提とすれば、あまり長い時間、ポジションは維持したくないところである。

一方、長期投資を行う場合には、相当慎重に押し目買いを行うべきであろう。時間と資金を分散した上で、ゆっくりと行うようにしたい。今は金相場次第の面があり、引き続き金相場の動向をよく見ておくことが肝要である。

また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。これは銀相場への対処において、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券