先週のゴールド:反落の展開

金相場は下落した。週明け9月6日の金相場は4日ぶりに反落。米ドルの堅調さを受けて利益確定売りが優勢となった。ただし、米連邦準備制度理事会(FRB)が新型コロナウイルス禍に対応した景気下支え策の縮小を遅らせる可能性が浮上したことが下支え要因となり、2ヶ月半ぶりの高値近辺を維持した。

9月7日は続落。米ドル高と米国債利回りの上昇により、金の投資妙味が薄れた。8月9日以来、約1ヶ月ぶりの大幅安となり、下落幅は一日で30ドル超となった。米ドル指数は0.5%上昇し、ドル建てで取引される金は割高になった。米10年債利回りが7月中旬以来の高水準まで上昇したことも、金の妙味低下を招いた。

9月8日も続落。米ドル高と米国債利回り上昇を受け、一時2週間ぶりの安値を付けた。世界経済の成長への懸念に支えられたが、相場を押し上げるには至らなかった。一時8月26日以来の安値となる1,781.30ドルまで落ち込んだ。

9月9日は反発。対ユーロでの米ドルの軟化や長期金利の低下を支えに買われた。週間の米新規失業保険申請件数が31万件と、市場予想の33万5,000件を下回り、2週連続で改善した。

一方、欧州中央銀行(ECB)はこの日の定例理事会で、新型コロナウイルス危機対策で導入した資産購入計画について、債券の買い入れペースを緩やかに減速することを決定した。欧州に続き、米国でも量的金融緩和策の縮小開始が早まる可能性を警戒し、当初は金売りが活発化した。

しかし、その後は米ドルが対ユーロで軟化に転じると、割安感の生じたドル建て金相場に買い戻しが優勢となった。米30年債入札の旺盛な需要を受けて米長期金利が低下したことも、金利を生まない資産である金相場を支援した。

週末9月10日の金相場は反落。FRBのテーパリング開始時期への不透明感から様子見ムードが強かった。週間では米ドル高を受け、5週ぶりに下落となり、1,787ドルで週末の取引を終えた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、9月3日の998.52トンから、10日には998.17トンとわずかに減少した。投資家の金買い意欲は全く回復していないことが確認できる。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、9月7日時点で20万6,039枚の買い越しとなり、前週から買い越しが1万511枚減少した。買いポジションが4,987枚減少し、売りポジションが5,524枚増加して、売りが優勢だったことが確認できる。

円建て金相場も下落した。ドル建て金価格の下げが下押し要因となった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:水準を維持できるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・FRBの金融政策の変更時期
・米ドル・米金利の動向
・円建て金相場はドル建て金相場の行方次第

金相場は高値を試したが、結果的に1,830ドルの重要なポイントを明確に超えることができず、大きく値を下げた。この水準は6月と7月につけた高値でもあり、これを超えるかどうかは、相場の勢いを見る上で極めて重要だった。

しかし、それに失敗したことで調整を強いられている。今度は1,775ドルのサポートレベルを維持できるかが極めて重要になっている。これを割り込んでしまうと、しばらくは調整が続く可能性が高そうであり、今週の金相場における最大の注目点になろう。

現時点で下落基調に明確に転じるかは不明ではあるが、短期的な下げトレンドにあることは確認しておきたい。市場の関心は、9月21・22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)に移っているが、特段の材料が出るかは不透明である。

いずれにしても、市場ではFRBが11月にテーパリングを決定するとの見方がコンセンサスになりつつあるように見える。また、一部のFRB関係者もそのような発言を繰り返している。9月3日に発表された8月の米雇用統計が市場予想を下回る弱い内容だったことから、テーパリングの開始時期が先送りされる可能性も取り沙汰されたが、現時点ではそのような見方は後退しているように見える。

一方、FRBに先んじて、ECBが資産買い入れペースを鈍化させることを決めたことはやや驚きをもって受け止められた。これでユーロが買われ、米ドルが売られたことで金相場は一時上昇する場面もあったが、長続きしなかった。

ECBがFRBよりも先に金融政策の変更を示唆することは、やや意外感があったものの、過去にもそのようなことがあり、特別なことではない。むしろ、これから多くの中央銀行がコロナ禍での経済悪化を支えるための異例の緩和策を解除する方向にあることを理解しておくべきであろう。

ECBの政策の資産買い入れペースの鈍化という方向性は見えたが、そのペースは明確に示されていない。そのため、まだまだ不透明感が強い状況は続きそうである。FRBは早くても11月にテーパリングを開始することになるため、ECBとの政策の差が一時的にユーロ買いを促したが、これも長続きはしないだろう。

FRBが9月のFOMCで、11月テーパリング決定、12月開始を示唆すれば米ドルは買われやすくなり、これがドル建て金相場の上値を抑える可能性が高いものと考えられる。

今の市場がどの程度この点を織り込んでいるかは不明だが、いずれにしても、1,830ドルを明確に超えなければ、上昇基調への転換とは判断しづらい。むしろ、上記で示した1,775ドル割れからの調整のリスクを念頭に置いておくべきであろう。

また、新型コロナウイルス変異株「デルタ株」による経済成長鈍化への懸念を背景に、株価は不安定になりつつある。このような状況下でも、安全資産として金が買われなければ、それはやはり弱いとの見方にならざるを得ない。株安で債券も売られ、利回りが上昇して米ドル相場が上昇すれば、金への投資資金の流入はさらに減少し、むしろ売りが優勢になる可能性さえあるだろう。

今は、あらゆる資産のボラティリティが上昇し、同時に売られる「リスクパリティショック」になる可能性をはらんでいる。現時点では、そうなったとしても、潤沢な投資資金が下値を支える可能性があるため、軽度で済みそうだが、警戒はしておいても良いだろう。

いずれにしても、米国ではテーパリングや利上げがこれから控えている。今の段階で上値を試し、高値を更新すると考えるのはまだ早いだろう。今後は米ドル相場もある程度の水準を維持する可能性があり、金相場はその動きに上値を抑制されるものと考えられる。

結果的に短期的なトリプルトップを形成し、調整に入る形になっているだけに、今は下値で買いが入ってくるかを見極めることになろう。

中国やインドなどの主要金消費国や、中央銀行などが買いを入れる水準は、おそらく1,700ドル前後であろう。そこまで調整しなければ買いが入ってこないということであれば、目先は慎重に見ておくのが賢明であろう。

前回のテーパリングから利上げの期間を考慮すれば、FRBの利上げ開始まで金相場は大きく上昇する可能性は低いということになる。したがって、押し目は慎重に買い下がることが肝要であろう。

円建て金相場は重要なポイントである節目の6,500円を試したものの、これを超えることに失敗した格好である。この水準は、2021年の7月から8月にかけてのレジスタンスとなっており、これを上抜けられなかったことは、調整を意味するだろう。まずは6,400円前後で下げ止まることができるかを確認することになる。

ただし、これを割り込むと100円単位での下げになる可能性がある。つまり、6,300円さらに6,200円までの調整である。ドル建て金相場が1,830ドルを超え、,1900ドルを目指すような展開になれば、円建て金相場は6,500円を明確に上放れ、6,700円を目指すことになるだろうが、ドル建て金相場がそのような動きにならずに下げている。

したがって、今度は調整がどこまで進むかを見ていくことになる。このまま6,400円を明確に割り込み、下落に転じた場合には、6,200円から6,100円あたりを底値のターゲットに据え、押し目買いを検討すれば良いだろう。

いずれにしても、米利上げまでの今後2年程度は6,000円から7,000円のレンジで推移するとの見方は変わらない。このレンジ下限で押し目買いを入れる一方、レンジ上限まで上昇すれば、利益確定売りを行い、レンジ相場に対応するのが良いと考えている。

今は長期的な上昇を念頭に置きつつも、レンジ相場を利用する取引を行うのが有効であろう。ここまでは実際にそのような動きにある。

一方で、長期的な目線で押し目を買うこともぜひ継続したい。金相場が本格的に上昇に向かった際には、大きな収益を得ることができるだろう。そのタイミングは、利上げ開始前後であると考えている。現行の経済状況が続き、景気が順調に回復していけば、1年から1年半後には利上げが開始されているものと思われる。それまでの間は、利上げを織り込む過程で米ドルが上昇し、ドル建て金相場の上値は重くなりやすい。

しかし、いったんそれが織り込まれれば、今度は一転して上昇しやすくなる。それまでの辛抱である。それまでは、急落場面などで安値をしっかりと拾っておくことに専念するのが良いだろう。

金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むと考えられる。

長期投資家は、常に長期的な視点を失わず、近視眼的にならないことが肝要である。その上で、株式投資を継続する中で、金相場の押し目をしっかりと買っておけば、最後には報われるだろう。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。先週末につけた1,029.11ドルの高値を更新することができず、金相場の急落に連れる形で下落基調が鮮明になり、週を通して下げが続いた。節目の1,000ドルも割り込み、週末には一時951ドルまで下落し、955.50ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、9月7日時点で6,349枚の買い越しとなり、前週から買い越しが1,708枚減少した。買いポジションが1,230枚減少し、売りポジションが478枚増加した。

プラチナは直近安値を更新するなど、極めて弱い動きにある。引き続き、独自の材料不足の状況ではあり、下値が見えない状況にある。4月以降から続く下落トレンドも継続しており、相場が上向くきっかけがつかめない状況にある。プラチナを取り巻く新たな材料がないことが、投資家を含む買い手の動きを鈍らせている可能性がある。

また、すでに何度も解説してきているように、今後はプラチナを自動車触媒に利用するディーゼル車の生産が減少していくことが確定的である。欧州連合(EU)は、2035年までにガソリン車およびディーゼル車の新車販売を禁止するなどの包括的排出量削減案を欧州議会に提出済みである。

欧州でのEV化は想定以上に進んでいるのが実態であり、これが将来のプラチナ需要の減少を想起させている。この傾向は世界的な広がりを見せており、プラチナの自動車触媒向け需要の減少に拍車がかかる可能性がある。

貴金属調査会社のGFMSによると、2019年のプラチナ需要に占める自動車触媒向け需要の割合は41%となっている。また、プラチナ需要全体に占める欧州の自動車触媒向け需要は16%程度である。欧州におけるプラチナの自動車触媒向け需要は38トンで、世界の自動車用触媒需要の約4割である。

このような状況から、欧州の自動車触媒向け需要は、プラチナ需要全体の重要な部分を占めていることがわかる。したがって、現在の世界的なEV化の流れは、プラチナ需要の大幅な減少につながる可能性があるということになる。また中国でも、EV化は進んでおり、欧州とともにEV車市場をけん引し、世界でのシェアはすでに4割に達している。

このような事情から、プラチナ相場における好材料がほとんど見られなくなっている点には注意が必要である。ファンダメンタルズ材料に乏しいコモディティには買いは入りづらい。

そのような中、世界的に再生可能エネルギーへの転換が求められる一方、プラチナに関しては水素関連での需要の増加に期待が集まっている。水を電解し、酸素と水素に分解して水素を貯蔵する技術が進んでいる模様だが、この作業工程に必要な分解における電極にプラチナ触媒が使用されている。

今後、この需要が拡大する可能性はあるものの、自動車触媒向け需要の代替になるほど、需要そのものが大きく伸びるかは不透明である。

このように、プラチナの需要を取り巻く環境は一変しつつある。この点をよく理解した上で、プラチナ市場を見ていくことが肝要である。今の基調が続けば、2020年後半の安値水準である800ドル台前半まで下落する可能性があることも理解しておきたい。

円建てプラチナ相場も上値の重い状況が続いている。結果的に3,700円水準が重くなっており、そのまま反落している。3,600円のレンジ下限も下回っており、下落基調が強まる可能性が高まっているように見える。目先は3,500円水準で下げ止まることができるかを注視しておきたい。その上で、押し目買いはかなり慎重に行うべきであろう。

押し目買いが奏功した場合でも、反発場面では早めに利益確定をするなど、短期的な取引に集中したほうが今は良さそうである。その上で、ドル建てプラチナ相場が明確に上向けば、円建てプラチナ相場も上向き、買いやすくなるだろう。その場合には、最低でも3,700円を明確に上抜くのを確認したほうが良いだろう。

ただし、その場合でも、3,800円から3,900円に上昇する過程で早めに利益確定を行ったほうが良いだろう。

プラチナ相場が持続的な上昇基調に入るには相応の時間が必要であろう。この考えに変わりはない。一方、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと時間と資金を分けて、押し目を買うスタンスを維持すれば、将来の反発局面で収益化することは十分に可能であると考える。ただし、これまで以上の慎重さが求められることを付け加えておく。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:急反落の展開

シルバーは急反落した。週初から金相場の下落に連れる形で下げに転じ、週を通しておおむね下落。週末には23.70ドルまで下落し、23.71ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、9月7日時点で2万8,556枚の買い越しとなり、前週から買い越しが6,225枚増加した。買いポジションが944枚増加し、売りポジションが5,281枚減少したことで、買い越しが大きく膨らんだ。ただし、週末に掛けて下落基調が強まっており、その後に売りが出ている可能性がある。

銀相場は急落している。結果的に節目の25ドルを超えことができなかった。先週は「節目の25ドルを超えると、大きく水準を切り上げる可能性がある。逆に超えられないと、買われすぎ感もあり、反落する可能性がある」とした。それだけ25ドルが重要な節目とみていたが、結果的に金相場の下落で銀相場も下げに転じざるを得なかった。独自の材料がないだけに、金相場の値動きに影響を受けやすい地合いは変わっていなかったと言える。

また、先週は米国株が下落したことも、需要の大半が工業用向けである銀にはネガティブな材料になった可能性がある。今後も基本的には金相場の影響を受けやすい地合いが続くだろう。その中で、追加的なファンダメンタルズ材料が出なければ、引き続き軟調な展開になる可能性がある。まずは節目の23ドルで下げ止まるかを確認することになろう。その上で、金相場の動向を見ながらの対処になろう。引き続き慎重に見ていくようにしたい。

円建て銀相場は反落した。前週末に節目の90円を試したものの、これを超えられずに下げている。さらに88円も下回っており、地合いは良いとは言い難い。このまま86円も割り込むと、84円までの下げになろう。84円は直近安値水準でもあり、極めて重要な水準である。これを割り込むようだと、基調は大きく軟化することになる。この点には注意しておきたい。

したがって、押し目買いはこれまで以上に慎重に行いたい。慎重に時間と資金を分散した上で、ゆっくりと行うようにしたい。

いずれにしても、まだ慎重に見ておく方が賢明であると考える。買った後に反発した場合には、86円から88円程度で早めに利益確定をするなど、短期的な取引に徹したほうが良いだろう。今は金相場次第の面があり、引き続き金相場の動向をよく見ておくことが肝要である。

また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。これは銀相場への対処において、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券