先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸した。8月30日の金相場は反落。一時8月4日以来の高値を付けた後で下落に転じた。米ドルが安値から上昇したほか、米雇用統計の発表を控えて投資家が警戒姿勢だったことが材料視された。

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は8月27日、米国債などを大量に購入する量的緩和策について、年内に縮小が始まる可能性があるとしたが、具体的な開始時期を示さなかったことで金相場は上昇していた。しかし、パウエルFRB議長の講演を受けて約2週間ぶり安値に下落したドル指数が反発する中、金はその後値下がりした。

8月31日、金は上昇。対ユーロでの米ドル安を背景に買われた。対ユーロで米ドル安が進行し、割安感が生じたドル建て金相場は買いが優勢となった。ただし、月末要因から利益確定の売りも出やすく、上げ幅は限られた。8月の米消費者景気信頼感指数は113.8と予想を下回ったが、金相場への影響は限定的だった。

9月1日には小幅上昇。強弱まちまちの米経済指標を受けて売り買いが交錯し、動きづらい展開だった。米民間雇用サービス会社ADPが発表した8月の全米雇用報告では、非農業部門の民間就業者数が前月比37万4,000人増と、市場予想を大きく下回った。これを受けて、外国為替市場では対ユーロで米ドルが下落。ドル建て金相場の割安感につながり、金は買われた。

しかし、その後は米サプライ管理協会(ISM)が発表した8月の米製造業購買担当者景況指数(PMI)が好調な結果となったことで金は値を消した。9月3日の米雇用統計の発表を控えて様子見ムードも広がり、積極的な商いが手控えられた面もあった。

9月2日は米雇用統計の発表を9月3日に控えたポジション調整で小幅下落。米ドル安は材料視されず、レンジ内で推移した。

9月3日は1%超の反発。2ヶ月半ぶりの高値を付けた。8月の米雇用統計が予想を下回る伸びだったことで米ドルが売られたことや、FRBによる量的緩和の縮小時期に不透明感が出てきたことが買い材料視された。一時6月中旬以来の高値となる1,833.80ドルを付けた。週間では4週続伸となった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、8月27日の1001.72トンから、9月3日には998.52トンに減少した。投資家の金買い意欲は全く盛り上がっていないと言える。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、8月31日時点で21万6,550枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,897枚拡大した。買いポジションが1万1,920枚増加し、売りポジションも6,023枚増加するなど、売り買いが交錯したが、買いが優勢だったことでネットポジションの買い越し幅が拡大した。

円建て金相場は上昇した。ドル建て金価格の上昇が後押しした。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:上昇基調が続くかを確認

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米経済の動向とFRBの政策方向
・米ドル・米金利の動向
・円建て金相場はドル建て金相場の行方次第

金相場は先週は週を通して堅調だった。9月3日に発表された8月の米雇用統計は弱い内容だったが、これが米ドル安を誘って金が上がる構図になっている。金相場は強い動きに入ったように見えるが、内容を見るとあまり良い上昇のパターンではない。

9月3日は株価も不安定だった。パウエルFRB議長は「インフレは一時的」と言い続け、「雇用情勢の改善を確認したい」とのスタンスを変えずにきている。今回の雇用統計は、決して悪い数値ではないのだが、予想が高すぎたことで弱く見える。その結果、パウエルFRB議長の見通しに沿った内容のように捉えられ、市場はそれを素直に捉えていると言える。

これまでも市場は、パウエルFRB議長の発言を都合よく解釈し、株式市場は堅調に推移してきたが、この基調はこれまでと同じである。

株高基調は今後も続きそうだが、金相場はどうだろうか。先週末の時点では、重要なレジスタンスである1,830ドルを終値で引けていない。これを明確に超えるかどうかが、金相場が本格的に上昇できるかのポイントになるだろう。

9月3日発表の雇用統計の結果は確かに予想を下回ったが、それだけでテーパリングが先送りされたり、利上げが遠のくことはないだろう。少なくとも、テーパリングについては、FRB内には、雇用増が85万人以上なら9月21・22日の政策会合で緩和の縮小開始を決定できるという強気の意見があった。

しかし、結果はその3分の1に満たない低調な伸びだった。これではテーパリングの9月決定・10月開始は困難であろう。

コロナ対策の失業者支援が近く打ち切られることから、今後は復職者が増え、雇用に勢いが戻るという期待もある。バイデン米大統領は9月3日の演説で「景気と労働市場は変異株による浮き沈みを乗り越えられる」とし、雇用回復の先行きに自信を示している。

ただし、雇用情勢を見極めるには、10月発表の9月の雇用統計まで待つ必要がある。このためFRBは緩和縮小を急がず、11月以降に決断するとみられる。つまり、11月決定・12月開始が常識的な見方になるだろう。

FRBは2020年、コロナ禍の影響を受けて、米国債などを大量購入して市場に資金供給する量的緩和を導入した。パウエルFRB議長は8月の講演で、雇用の改善が「明確に進展した」として、「年内の緩和縮小開始が適切」と表明した。「統計やリスクを慎重に分析する」ともしており、雇用の行方がカギを握るという見解を示していた。

これで年内のテーパリングが早くても12月開始にずれ込んだことで、市場はしばらくの間、静かな動きになる可能性もある。とはいえ、テーパリングおよび将来の利上げは、もはや既定路線である。雇用も確かに非農業部門雇用者数が23万人程度の増加では物足りないが、それでも以前に比べると高水準である。

このように考えると、米国の雇用は相応に回復してきていると言える。また、今回の雇用統計では賃金の上昇が目立っている。また、コンテナ運賃の上昇が極めて大きくなるなど、最終製品に課されるであろうコストは非常に大きくなっている。

パウエルFRB議長は、依然としてインフレは一時的としているが、実際にそうだったと判断するにはまだ相応の時間が必要である。そのため、利上げに至るには、まだ時間がかかるだろう。

それまでの間、米ドルはそれほど下がらないと思われる。そうなると、金相場の上値は抑制される可能性がある。現在の相場に勢いがつけば、1,900ドルまでの上昇となる可能性はあるだろう。

しかし、それはあくまで一時的なものにとどまると考えている。本格的に金相場が上昇するのは、もう少し先であろう。利上げが見えてくれば、米ドルがピークアウトし、金が上昇し始めるだろう。

無論、金利も低水準のままではいられない。金利が上昇すると、金相場は一定の抑制を強いられるだろうが、金相場は金利以上に米ドルとの関係が強い。米ドル高で推移しているうちは上値は限定的になる。しかし、米ドル安になれば、金は半ば「自動的に」上昇するだろう。

相場として金を見ていくのであれば、やはり米ドルの動きを見ていくべきである。その米ドルが、今後の金融政策の動向次第で大きく変動する可能性が極めて高いことを、今後の最重要ポイントとしてみていくようにしたい。

円建て金相場は、重要なポイントである6,400円を超え、節目の6,500円が視野に入っている。この水準は、2021年の7月から8月にかけてのレジスタンスとなっており、これを上抜けるかどうかで展開は全く違ってくるだろう。

この水準を超えるようだと、100円単位で上昇基調が強まる可能性が高い。そうなれば、短期的には上目線で見ていくことになるだろう。そうなれば、短期的な上昇を狙って買いを検討できる。

先週の繰り返しだが、ドル建て金相場が1,830ドルを超え、1,900ドルを目指すような展開になれば、円建て金相場は6,500円を明確に上放れ、6,700円を目指すことになろう。

もっとも、今は深追いしないことも重要であると考えている。ある程度の上昇で、利益を確定することを優先したい。一方で、下落に転じた場合には、6,200円から6,100円あたりを底値のターゲットに据え、押し目買いを検討すれば良いだろう。

いずれにしても、米利上げまでの今後2年程度は6,000円から7,000円のレンジで推移するとの見方は変わらない。このレンジ下限で押し目買いを入れる一方、レンジ上限まで上昇すれば、利益確定売りを行い、レンジ相場に対応するのが良いだろう。今は長期的な上昇を念頭に置きつつも、レンジ相場を利用する取引を行うのが有効であると考えている。

一方で、長期的な目線で押し目を買うこともぜひ継続したい。金相場が本格的に上昇に向かった際には、大きな収益を得ることができるだろう。そのタイミングは、利上げ開始前後であると考えている。1年から1年半後には利上げが開始されているだろう。その後は金相場が本格的に上昇する場面となろう。

金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むだろう。長期投資家は、長期的な視点を失わず、株式投資を継続する中で、金相場の押し目をしっかりと買っておけば、最後は報われると私は考えている。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸した。週初は狭いレンジでの推移が続いていたが、週末に金相場が急伸したことに連れる形で上昇し、一時1029.11ドルまで上昇する場面がみられた。週末は1025.50ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、8月31日時点で8,057枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,086枚縮小した。買いポジションが371枚増加したものの、売りポジションも1,457枚増加し、ネットの買い越し幅が縮小した。

プラチナは引き続き、独自の材料不足の状況ではあるが、金相場が上値を試し始めていることから、上昇基調に移行できるかに注目しておきたい。無論、目先も金相場次第の展開になりそうだが、まずは1,030ドル水準を明確に上抜けることができるかを見ておきたい。これを超えると、1,085ドル前後までの上昇となろう。この水準を超えると、中期的な基調が上向く可能性が高まる。これまで低迷していたプラチナ相場が、上向くのかを注視しておきたい。

もっとも、ファンダメンタルズ材料に乏しい状況は変わっていない。新しいテーマもなく、現物市場からの押し上げは期待しづらいと言える。特に、需要の半分以上を占める自動車触媒向けの需要については、懸念もある。

ドイツ連邦自動車局(KBA)が発表した8月の同国の新車登録台数は前年同月比23.0%減の19万3,307台にとどまった。前月に続いて8月も国内の多くの州で夏休みシーズンと重なったことも影響した。

ただし、市場が低迷する中で電気自動車の需要は高く、今後もプラチナ需要を圧迫しそうである。登録全体に占める電気自動車(EV)の比率は14.9%(前年同月は6.4%)、プラグインハイブリッド車(PHV)は12.7%(同6.8%)に拡大している。これに対し、ガソリンエンジン車の比率は35.5%(同47.0%)、ディーゼルエンジン車は17.7%(同27.7%)に縮小している。

プラチナはディーゼル車の自動車触媒に使用されるが、そのシェアが急減している点は、プラチナ投資家を失望させるだろう。このような状況にあることは、しっかりと理解しておく必要があろう。

円建てプラチナ相場は引き続き3,700円水準が重く、3,600円を下限とした狭いレンジでの値動きが続いている。このレンジを抜けたほうに動きやすい地合いにあると言えるだろう。まずは、3,700円を超えられるかを見極めたい。そのうえで、勢いがつくようであれば買いを検討したい。

ただし、その場合でも3,800円から3,900円程度では利益確定をするなど、比較的、短期的な取引を行ったほうが良いだろう。押し目買いを検討する場合には、3,600円から3,500円をターゲットに、慎重に行うようにしたい。押し目を買う場合でも、早めに利益確定を行ったほうが良いだろう。

持続的な上昇基調に入るには時間が必要との考えは変わらない。一方、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと押し目を買うスタンスを維持すれば、将来の反発局面で収益化することは十分に可能であろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:急伸の展開

シルバーは急伸した。週初から週中はレンジ内での推移が続いていたが、週末には金相場の急伸を受けて買われ、一時24.90ドルまで上昇する場面があった。週末は24.69ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、8月31日時点で2万2,331枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が470枚拡大した。買いポジションが376枚減少したが、売りポジションも846枚減少したことで、買い越し幅が小幅に拡大した。週末に急伸していることから、投機筋の買いが相応に入っている可能性がある。最新のデータで確認したい。

銀相場は急伸したが、まずは節目の25ドルを超えるかを確認したい。これを超えると、大きく水準を切り上げる可能性がある。逆に超えられないと、買われ過ぎ感もあり、反落する可能性がある。

最終的には金相場の動向次第であろう。銀相場そのものに独自の材料がないだけに、金相場の値動きをみながらの対処になろう。25ドルを超えると、27ドルから28ドルを試すことになるが、そうならなかった場合には相応の調整となる可能性が高い。

株高基調は、銀需要の大半が工業用向けであることから一定のサポート要因になるだろうが、最終的にはやはり金相場の影響を受けやすいだろう。いずれにしても、追加的なファンダメンタルズ材料が出づらい状況にあり、今後も金相場と株式市場の動向を見ながら、慎重に値動きを見極めることになろう。

円建て銀相場は天井圏とみていた86円を超えており、今は88円が上値となっている。これを超えると相場は大きく上昇するだろう。その場合には、節目の90円から92円を試す動きになりやすい。88円を超えた場合には、その流れに乗って買いを検討しても良いだろう。ただし、その場合でも96円までで、早めに利益を確定したほうが良さそうである。

一方、押し目買いは慎重に行いたい。84円までの下げに耐えられるように、慎重に時間と資金を分散したうえで、ゆっくりと行うようにしたい。

いずれにしても、まだ慎重に見ておく方が賢明であると考える。また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良い。これは銀相場への対処において、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券