先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸した。週明け8月23日は上昇し、節目の1,800ドルの水準を突破した。米ドルの下落が金買いを促した。新型コロナウイルスの感染拡大で、米連邦準備制度理事会(FRB)がテーパリングを遅らせるとの観測が広がった。一時は8月5日以来の高値となる1,806.23ドルを付けた。

8月25日には1%超の下落となった。米ドル相場の上昇が影響し、1,800ドルの節目を割り込んだ。最近の上昇に対するポジション調整の売りや利益確定売りが入った。

8月26日には反発し、前日の急落を取り戻した。カブール空港で起きた爆発によるアフガニスタンでの政治的緊張が、金の上昇につながったとの見方が広がった。一方、米セントルイス連銀のブラード総裁は、FRBが2022年の早いうちに量的緩和を完了すべきとの意向を示したが、材料視されなかった。

週末8月27日の金相場は続伸。FRBのパウエル議長が景気支援策の縮小開始時期について言及を避けた他、現在の物価の急上昇は一時的との見解を繰り返したことを受けた。パウエル議長の発言を受け、米国債利回りと米ドルが軟調に推移し、金のさらなる押し上げ要因となった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、8月20日の1,011.61トンから、8月27日には1,001.72トンに減少した。投資家の金買い意欲はさらに低迷している。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、8月24日時点で21万653枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万9,111枚拡大した。買いポジションが1万4,647枚増加し、売りポジションが4,464枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が拡大した。投機筋はこの週も新規買いと売りポジションの買い戻しを進めたことになる。

円建て金相場は上昇した。ドル建て金価格の上昇が後押しした。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:一段高になるか

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
-FRBの政策方針の明確化
-米ドル・米金利の動向
-円建て金相場は米ドル建て金相場の行方に注意

金相場は先週末時点で1,800ドルを明確に超えている。これが持続的なものになるかを見ていくことになる。ただし、直近高値の1,830ドル水準を超えられないと、結局は打たれる可能性がある。

市場では、FRBは当分利上げはしないと見切っているようである。また、テーパリングに関する話題は、8月の米雇用統計の発表を確認してからになるとの指摘もある。いずれにしても、市場は楽観視しているようである。

しかし、FRBは9月もしくは11月までにテーパリングの発表をするだろう。そうなれば、金相場は上がらなくなる可能性が高まることになる。利上げが決定・開始されるまでは、金相場はそう簡単には上昇しないだろう。そう考えておくのが賢明である。これは、前回のテーパリングから利上げしたことへの教訓である。

8月の米雇用統計が堅調な数値になることはほぼ間違いのないところであろう。デルタ株の再拡大やアフガニスタンのさらなる地政学的リスクなどの材料はあるが、それらはあくまで一時的なものである。本質的には、市場がいつどのタイミングで金利上昇を織り込み始めるかである。

いずれにしても、パウエル議長の今回のジャクソンホール会合での講演内容と、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見を比較すると、これはあくまで私見ではあるが、パウエル議長は嘘をついていたと言える。立場上、これまでのように発言せざるを得なかったのかもしれないが、それで本当に良かったのかどうか、疑問は残る。

いずれにしても、8月27日のパウエルFRB議長のジャクソンホール会合での講演は、市場ではハト派的と捉えられたということである。しかし、この捉え方は極めて驚きではある。市場はそれだけ、今の材料を良い方に捉えようとしているようである。

テーパリングそのものは悪材料と捉える必要はない。資産買い入れペースが低下するだけだからである。しかし、その分、株価の上昇ペースも落ちるはずである。市場はこの点を理解していないようである。無論、金市場でも同じように捉えられている。

また、パウエルFRB議長がいまだにインフレを一時的と認識している点にも驚いた。テーパリングに関しては、米地区連銀総裁やクラリダ副議長などから圧力を受け、外堀を固められたことから仕方なく同調したように見える。しかし、利上げは先送りしたいようである。

それにしても、なぜパウエルFRB議長がそこまでインフレ圧力を無視するのか理解できない。8月27日に発表された米コアPCE物価指数は依然として高止まりしている。パウエル議長の見方が間違っていたと後でわかれば、それは大問題になる。

しかし、パウエル議長からすれば、将来にこれまでの見方が間違っていたことを認めることよりも、いま株価を下げさせるような発言をするほうがリスクがあると考えているのだろう。

ただ、株価を維持するために、利上げをできるだけ先送りしようとしているとすれば、まさに「本末転倒」である。しかしながら、FRBの責務はすでに株価維持が優先されるようになっているようである。これを批判しても仕方がないだろう。

むしろ、投資家にとっては市場を支えてくれるのだから好都合であろう。批判はしても、政策には逆らわない。「FEDに逆らうな」という相場格言があるが、今はまさにこれが当てはまるだろう。

いずれにしても、テーパリング開始から利上げ開始までまだ時間がある。この間の金相場は上がりにくくなるというのが、前回のテーパリングの際の教訓である。

このような状況でもあることから、金相場は1,830ドルを超えるかどうかが極めて重要になっている。今週はこの点に絞ってみていくと良いだろう。現在の市場環境は極めて楽観的であろう。

いずれにしても、週明けの市場動向を見極めることが重要である。その上で、短期的な方向性を見極めたいところである。1,830ドルを超えるようなことになれば、1,900ドルを目指すことになろう。それだけの強い相場に移行する可能性は否定できない。

しかし、そこまでであろう。FRBが利上げが実施するまでは、金相場は金利と米ドルの上昇を織り込むまで上がりづらくなろう。したがって、これまで指摘した1,700ドルから1,900ドルのレンジを軸に2023年までみていくことが基本線になるものと考えている。

円建て金相場は重要なポイントである6,400円を超えるところまで上げている。これを明確に超え、さらにこの水準を維持するようであれば、相場はかなり強くなるだろう。そうなれば、短期的には上目線で見ていくことになる。短期的な上昇を狙って買いを検討しても良いだろう。

米ドル建て金相場が1,830ドルを超え、1,900ドルを目指すような展開になれば、円建て金相場も6,400円を明確に上放れ、6,700円を目指すことになろう。

もっとも、戻してもこのあたりが限界であろう。そのように考えておけば、ある程度の上昇で利益を確定することができるだろう。一方で、下落に転じた場合には6,200円から6,100円あたりを底値のターゲットに据え、押し目買いを検討すればよいだろう。

いずれにしても、米利上げまでの今後2年程度は6,000円から7,000円のレンジで推移するとみている。今は、このレンジ下限にある。押し目買いを入れる一方、レンジ上限まで上昇すれば、利益確定売りを行い、レンジ相場に対応するのが良い。このスタンスは変わらない。

今は長期的な上昇を念頭に置きつつも、レンジ相場を利用する取引を行うのが有効であると考えている。

繰り返し述べているように、長期的な目線で押し目を買うこともぜひ継続したい。金相場が本格的に上昇に向かった際には、大きな収益を得ることができるだろう。金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにポートフォリオが保全される。

保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておきたい。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むだろう。

今後10年間、金は重要な資産になるだろう。FRBが利上げを開始するまでは、利上げを織り込む過程で上値が重くなりやすいが、利上げが始まれば長期的な上昇基調に移行するだろう。長期投資家は、長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと金を買っておけば、最後は報われると考える。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。目立った材料のない中、金相場の上昇につれる形で8月24日には一時1,025.01ドルまで上昇する場面がみられた。しかし、その後は伸び悩み、値を下げたものの、週末には再び金相場の上昇につれる形で値を上げ、週末は1,007.76ドルで引けた。ただし、週間の高値を超えることはできなかった。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、8月24日時点で9,143枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が785枚拡大した。買いポジションが918枚増加し、売りポジションが133枚増加したが、ネットの買い越し幅は拡大した。この数週間は新規買いが増えており、徐々に買いが入っている様子が確認できる。

プラチナは引き続き材料不足であり、目立った動きは見られない。トレンドも下向きであり、今のところ強い動きには見えない。直近高値の1,030ドル前後を上抜き、さらに水準を切り上げると基調が上向き、1,100ドルを目指す可能性も高まりそうだが、とにかく材料が不足している。

普段から注目される銘柄ではないだけに、日々の値動きの材料を探しても何も出てこないのがプラチナ相場の厄介なところである。一部の現物筋などの売り買いによって値動きが出ることもあるが、その程度であり、明確な材料で動いているわけでないことは理解しておく必要がある。

その中で、連動性の高い金相場などの動きを注視しておくのが得策であろう。いずれにしても、直近安値の960ドル前後を割り込まずに推移することができれば、反発基調の継続の可能性も出てこよう。

また、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの動きには引き続き注目しておきたい。8月20日に対米ドルで15.3912ランドの安値を付けた後は反発に転じている。この動きがより顕著になり、市場参加者がこの点に注目すれば、プラチナ相場は上昇に転じる可能性もあるだろう。

円建てプラチナ相場は3,700円水準が重く、その後は下落して3,600円水準でもみ合っている状況である。3,700円を超えられない動きをみると弱そうに見えるが、一方で下値も3,500円を割り込むような雰囲気にも見えない。

もっとも、この水準を割り込んで下落するようだと、状況は大きく悪化するだろう。3,600円前後が堅いサポートになり、反発基調に入れば買いを検討したいが、今は安易に押し目を買うことは避け、引き続き慎重に見ていきたい。3,700円超えを確認してから買いを検討しても遅くはないだろう。

また、押し目を買う場合でも、早めに利益確定を行ったほうが良いだろう。持続的な上昇基調に入るには時間が必要との考えも変わらない。一方、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと買うスタンスを維持すれば、将来の反発局面で収益化することは十分に可能であろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーは反発した。前週の安値を割り込むことなく上昇し、週末8月27日には一時24.12ドルまで上昇する場面がみられた。週末は23.99ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、8月24日時点で2万1,861枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が641枚拡大した。買いポジションが79枚減少したが、売りポジションが720枚縮小したことで、買い越し幅が縮小した。

銀相場は引き続き安値圏での推移が続いている。この流れが断ち切れるのかを見ていくことになる。金相場は相対的に値位置は高いが、銀相場は依然として低位である。6月以降の下落トレンドから脱するには、少なくとも25ドルを超える必要があろう。そうすれば、27ドルから28ドルを試す素地が出来上がるだろう。

しかし、材料がないだけにそれは簡単ではないだろう。もっとも、今は株式市場は堅調に推移している。銀需要の大半が工業用向けであることを考慮すれば、株価の上昇は一定のサポート要因になるだろう。いずれにしても、トレンドが明確に上向くまでは、慎重に見ておくのが得策である。その上で、追加的なファンダメンタルズ材料が出てくればそれに乗れば良いだろう。今後も金相場と株式市場の動向を見ながら、慎重に値動きを見極めるようにしたい。

円建て銀相場も86円を天井に上値の重い展開にある。下値も84円で支えられており、今はこのレンジで推移していると判断できる。86円を明確に超えていけば買いやすいが、それまでは84円までの押し目を慎重に買い、戻したところで早めに利益確定を行うのが良いだろう。86円を明確に超えれば、その流れに乗る形で徐々に買っていっても良いだろう。ただし、その場合でも90円前後では早めに利益を確定したほうが良いだろう。

繰り返し述べているように、長期的には徐々に押し目を買っていけば良いが、その場合でも慎重に時間と資金を分散した上で、ゆっくりと行うようにしたい。また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良い。これは銀相場への対処において、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券