先週のゴールド 小幅上昇の展開

金相場は小幅に上昇した。週明け8月16日は前週末に続いて上昇。米国債利回りの低下に加え、新型コロナウイルスがらみの懸念を受けた安全資産買いが入った。一方で、各中央銀行による金購入の増加傾向が金相場を下支えしているとの指摘が聞かれた。米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和の縮小観測が強まる中で築かれた大量の売り持ちが、解消されつつある。

8月17日は1週間超ぶりの高値から下落。新型コロナウイルスのデルタ株の感染者急増で、世界的に景気回復が脅威にさらされる中、一部では金よりも米ドルが買われた。ドル指数は上昇。米小売売上高が振るわず、世界的にコロナ感染が拡大した。アフガニスタンの騒乱もあり、株式などのリスク資産への選好度が低下する中、金よりも米ドルが選好された。

8月18日は反発。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の公開後にプラスに転じた。ただし、新型コロナウイルスのデルタ株拡大を受けて米ドルが堅調に推移し、安全資産としての金への資金流入は限定された。FOMC議事要旨によると、デルタ株の増加にも関わらず当局者は米国経済の回復を引き続き確信しているとし、量的緩和策を最終的に終了させることを引き続き計画しているとした。

8月19日は下落。米ドル高に加え、FRBによるテーパリングの早期開始観測が投資家心理の重石になった。ただし、新型コロナウイルス感染拡大で世界的に経済成長が鈍化するとの懸念もあり、下げ幅は限られた。FOMC議事要旨が年内のテーパリング着手をおおむね見込んでいることを示したことを受け、米ドル相場は9ヶ月ぶりの高値まで上昇した。

週末8月20日はほぼ横ばい。米ドル高で上値は限定的だった。新型コロナウイルスの急拡大で世界経済停滞への懸念が広がり、安全資産である金の下支えとなった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、8月13日の1,021.79トンから、8月20日には1,011.61トンに減少した。投資家の金買い意欲は引き続き低迷している。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、8月17日時点で19万1,542枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万3,136枚拡大した。買いポジションが7,177枚増加し、売りポジションが1万5,959枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が大幅に拡大した。前週の金相場が急落した際に売り込んだ投機筋は、その後の急伸に対して買戻しを強いられており、相応の損失を出している可能性が高いと言える。

円建て金相場は上昇した。米ドル建て金価格の上昇が後押しした。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:上値の重さに注意

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
-FRBの政策方針
-米ドル相場の動向
-円建て金相場は米ドル建て金相場の行方に注意

金相場は戻りを試しているものの、今のところ上値が重いと言える。上値が徐々に切り下がっているといったほうがより正確であろう。1,785ドルにあるレジスタンスを上回ることができず、徐々に上値が切り下がっているように見える。このまま上値を試すことができなければ、一旦は下向きになる可能性がある。

市場では、最近のFRB関係者や、先に公表されたFOMC議事要旨で、テーパリングへの移行が早まるとの見方が出ており、金市場には逆風が引きつつある。また、デルタ株が世界的に経済回復を妨げるとの見方があり、これが金相場を支えるかにも注目が集まっている。

FRBによるテーパリングの示唆を背景に、米ワイオミング州ジャクソンホールで、8月27日にオンラインで実施される毎年恒例の経済シンポジウムで、金融政策の戦略とスケジュールがより明らかになる可能性があり、市場の注目が集まっている。FRBが資産購入縮小の開始を公表すれば、金相場にとっての重要な障害物は消えるとの声がある。

しかし、実際には利上げのタイミングが見えてくるまでは、金相場は低迷するだろう。2013年5月のテーパリング示唆から2015年12月の利上げまでの金相場は、徐々に水準を切り下げ、低い水準でのレンジを形成した。このような過去の事例も参考にするのであれば、金相場はしばらくの間、1,700ドルから1,900ドルのレンジでの推移になると考えられる。2023年に利上げがあるとすれば、それまではそのような値動きを想定しておきたいと考える。

現在の市場の関心は、ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の講演に向かっている。パウエル議長は、米東部時間8月27日午前10時に、年次経済シンポジウムで「経済見通し」について講演する予定である。毎夏恒例の同シンポジウムでは、2020年のFRB議長講演の主題が「金融政策の枠組み見直し」となっていたが、2021年はより抽象的である。

市場ではテーパリング開始時期の手掛かりを得られるかについて関心が高いが、現時点ではこの主題からヒントは読み取れないと言える。市場では、パウエル議長がジャクソンホールでテーパリングのロードマップについて踏み込んだ発言をすると予想しているようだが、実際には何も出てこない可能性もある。いずれにしても、講演待ちとなっており、今週の金相場は動きづらくなる可能性がある。

一部のFRB当局者が、最近の高インフレを根拠に主張する早期のテーパリング開始の検討に関して発言を繰り返している。このような発言を、パウエル議長はどこまで意識するかは疑問である。パウエル議長はこれまでも、「インフレは一時的」「雇用情勢は改善していない」と繰り返し、テーパリングの必要性はないとのスタンスを示してきた。無論、米地区連銀総裁の発言を無視するかのような発言を繰り返してきたのである。

この背景には、FRBの実質的な命題が、いまや株高基調を維持させることに移行していることを明確に表していると言える。したがって、ジャクソンホール会合でのパウエル議長の発言が、今後のFRBの金融政策に関してより踏み込んだものにならない可能性が高い。いずれにしても、実際の講演内容と市場の反応を待つしかないだろう。

このような状況でもあり、金への対応は投資期間によって変わってくるだろう。短期的な目線であれば、下落時に売りポジションを保有することで収益機会を得ることができる。長期的な投資を行う向きには、下落は押し目買いの好機になる。レンジ相場での推移が続くとみているが、このレンジ内での動きをどのように利用するかは、まさに投資スタイル次第である。

いずれにしても、いまは1,785ドル前後の水準がテクニカル面で重要なポイントになっており、これを明確に放れたほうに動くことになりそうである。上に放れた場合でも、1,810ドル前後にも重要なポイントが位置している。今の市場環境で、金がどんどん上昇していくのは難しいだろう。今後はテーパリングから利上げの議論が進むことになる。それまでは金相場は1,900ドルを超えるのは難しいと言える。レンジプレーに徹したほうが良いだろう。

もっとも、下落する場面では、消費大国であるインドと中国が買ってくるだろう。一方で、上値を買うのは欧米勢のトレンドフォロワーである。今の相場を支えているのは、前週の下落の買戻しを強いられた欧米勢の短期投機筋である。このような投機家が存在することで、金市場の流動性が維持されている。彼らのような市場参加者の動向も重要な投資情報となる。この点に関しては、毎週詳細を解説しているので参考にすると良いだろう。

円建て金相場も6,400円を目前に上値が重くなっているように見える。6,200円で底値を確認した後は順調に値を戻してきたが、これまでの下値だった6,400円を超えられないことは、現在の市場の上値の重さを示しているように見える。したがって、現時点では上値を買うことは避け、押し目買いのタイミングを待つのが賢明であろう。

繰り返し述べているように、今は100円単位の節目が重要なポイントになっている。取引をする上で参考になる水準であろう。その上で、6,100円が重要なサポートになると考えられるため、この水準では押し目買いを検討すると良そうである。

米利上げまでの今後2年程度は6,000円から7,000円のレンジで推移するとみている。今は、このレンジ下限にある。押し目買いを入れる一方、レンジ上限まで上昇すれば、利益確定売りを行い、レンジ相場に対応するのが良いだろう。今は長期的な上昇を念頭に置きつつも、レンジ相場を利用する取引を行うのも十分に検討に値すると考えている。

また、長期投資家は押し目を買うことを継続したい。金相場が本格的に上昇に向かった際には、大きな収益を得ることができるだろう。金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。この点を理解した上で、株式を購入する際に金も購入すれば、金融市場が不安定化したときにも十分に耐えられる。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておくと良いだろう。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済む。

今後10年間は、金が極めて重要な資産になるとの考えは変わらない。過去の上昇ペースから見ると、2027年ごろまで金価格は長期的に上昇する可能性が高い。FRBが利上げを開始するまでは、利上げを織り込む過程で上値が重くなるが、それ以降は上昇基調に入るだろう。長期投資家は、長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと買っておけば報われると考える。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。目立った材料のない中、テクニカル面で重要な水準を超えられなかったことから、売りが優勢となった。8月17日には一時1,030.39ドルまで上昇する場面があったが、その後は週末にかけて下落し、8月19日には一時958ドルまで下落する場面があった。週末はそこからは反発し、996ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、8月17日時点で8358枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,539枚拡大した。買いポジション557枚増加し、売りポジションが1,982枚減少したことで、ネットの買い越し幅が拡大した。

プラチナは材料不足であり、上値の重い展開にある。チャート上で重要なレジスタンスになっている1,040ドルを超えることができず、上値を切り下げる展開にある。現段階でプラチナ相場は切り返し、上値を試すようには見えない。材料不足であることは、少なくとも上値を狙うのは難しいことを示している。

また、米国株がやや不安定になっていることも影響している可能性がある。さらに、最大の需要先である自動車産業の構造変化も大きく影響してると言えそうである。将来的なプラチナ需要の増加を想起しづらい状況にあることは、今後も相場の重石になるだろう。

また、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドが、対米ドルで急落していることも大きく影響しているものと考える。このように、現在のプラチナ相場を取り巻く環境はかなり厳しいと言える。そのため、直近安値の958ドルを割り込むようなことになれば、900ドル割れから2020年後半の安値水準である830ドル台まで下落する可能性も否定できない。今は慎重に見ておくべきであろう。

円建てプラチナ相場も軟調に推移し、一時重要な水準である3,500円を下回る場面があった。3,700円超えに失敗したことで、上値が切り下がっている。これで3,500円を割り込むようだが、さらに水準を切り下げることになりそうである。今は安易に押し目を買うことは避け、慎重に見ていきたい。3,700円超えを確認してから買いを検討しても遅くはないだろう。

また、押し目を買う場合には、早めに利益確定を行ったほうが良いだろう。持続的な上昇基調に入るには時間が必要と考える。長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと買うスタンスを維持すれば、将来の反発局面で収益化することは十分に可能であろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続落の展開

シルバーは続落した。戻りを試すことなく、週末にかけて一貫して下落し、8月20日には一時22.85ドルの安値を付ける場面もあった。週末は23.01ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、8月17日時点で2万1,220枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,254枚縮小した。買いポジションが989枚減少し、売りポジションが2,265枚増加した。投機筋は引き続き売り姿勢を強めていると言える。

銀相場は金やプラチナに比べると、明らかに弱い動きにある。銀市場への関心が低下が懸念される。銀相場は投機的な動きをすることが多いが、今はそのような買いも入ってきていない。特段の材料がないだけに、現状では反発が期待しづらい状況にある。銀需要の大半が工業用向けであることから、株価が戻せば多少の買戻しも入りそうだが、現時点ではそのような動きも見られない。

したがって、株価の動きには敏感になっておいた方が良さそうである。現時点では安易に割安などと考えず、トレンドが上向きに転換するのを確認したほうが良いだろう。その上で、追加的なファンダメンタルズ材料が出てくるのを待ちたいところである。今後も金相場と株式市場の動向を見ながら、慎重に値動きを見極めるようにしたい。

円建て銀相場も軟調に推移している。短期的な下値とみていた84円を割り込んでおり、軟調である。現状で押し目買いを検討するのは危険なように見える。まずは反発するのを確認したい。その上で、上昇基調への転換が確認できれば、その時点で買いを検討できるだろう。

今は安いという理由だけで、買うことは避けたい。少なくとも86円を回復すれば、その動きをとらえながら慎重に買うことを検討しても良いだろう。ただし、その場合でも、短期的な取引と割り切り、90円前後まで上昇した場合には、早めに利益確定を行いたいところである。

また、繰り返し述べているように、長期的には徐々に押し目を買っていけば良いが、その場合でも慎重に時間と資金を分散した上で、ゆっくりと行うようにしたい。また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良い。これは銀相場への対処において、極めて重要なポイントである。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券