先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発した。週明け7月26日の金相場は続落。金相場の上昇につながる米ドル安が進んだものの、市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)への警戒感が強まった。

7月27日には米ドル安と米国債の実質利回り低下を背景に、節目の1,800ドル台を回復した。ただし、テーパリングに言及する可能性もあるFOMCを前に、投資家の慎重姿勢が上値を抑制した。米ドルが下落し、米10年物価連動国債(TIPS)利回りは過去最低となった。

7月28日は小幅続伸。FOMC後にパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」が米国経済にもたらすリスクが長引く可能性があると警告したことを受けて上昇した。

FOMCの声明は、新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず米経済は引き続き回復基調にあるとし、将来の量的緩和縮小をめぐる協議が続いていることを指摘した。ただし、パウエルFRB議長が記者会見で、デルタ株感染拡大は労働市場の回復にとって重石となる可能性があり、利上げを検討するには時期尚早との考えを示したことを受け、金相場は上昇に転じた。

7月29日は続伸。近く利上げする公算が小さいことを示唆したパウエルFRB議長の発言を投資家が歓迎し、一時1,832.40ドルと、7月15日以来の高値を付けた。

週末7月30日の金相場は反落。米ドル高で上値を抑えられた。また、6月の個人消費支出(PCE)物価指数のコア指数の上昇が若干予想を下回ったことや米ドル高が金の重石となった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、7月23日の1,027.38トンから、7月30日には1,031.46トンに増加した。小幅ではあるが、増加に転じており、投資家の買いが戻ってくるかに注目しておきたい。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月27日時点で19万9,388枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,416枚拡大した。買いポジションが3,624枚減少、売りポジションが7,040枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が拡大した。投機筋の買い姿勢が続いている。

円建て金相場も反発。ドル建て金価格の上昇が反発につながった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:レンジ抜けの動きに注目する

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
-FRBの政策方針
-米ドル相場の動向
-円建て金相場はもみ合いを抜けるかに注目

金相場はレンジ相場になっている。FOMCの結果を受けて、投機筋が買い上げている可能性もあるが、これまでの高値である1,830ドル水準で打たれており、これを超えられないと次の展開は見えてこない。

逆に1,800ドルを割り込むと下げやすい地合いにある。結局のところ、1,800ドルと1,830ドルのどちらに抜けるかを見極めることになろう。問題は、その材料が何になるかである。FOMCの内容は想定通りだったが、金市場にはポジティブだったと言える。FOMC直後の相場下落は「条件反射的」な動きだったが、その後は市場がパウエルFRB議長の発言を消化し、上昇している。

パウエルFRB議長は、景気支援策を縮小する前に、雇用市場にはまだ改善の余地があるとの認識を示している。FRBが雇用情勢を重視し、短期的に物価上昇を抑制しない意向であるため、インフレの過熱は進むとみられており、これが貴金属市場に好ましい環境になる可能性がある。

しかし、金相場は今後、不安定になる可能性がある。FRBは、経済は引き続き正しい方向に向かっているとしているが、重要なのは金融緩和維持の可能性が高い点であり、いずれ緩和が縮小されるにしてもそれは段階的に行われ、急展開することはないということである。これも金市場にとってはポジティブだと言える。

FRB関係者の間では、依然として考え方に相違がある。米地区連銀総裁たちは、インフレを懸念し、早期のテーパリング(量的緩和の縮小)と利上げの検討を訴える一方、FRBのコアメンバーであるパウエル議長やブレイナード理事、NY連銀のウィリアムズ総裁は、経済データの確認とテーパリングに関する慎重な議論の必要性を訴えている。

コアメンバーの頭にあるのは、やはり株価の安定である。地区連銀総裁とは監視している範囲が大きく異なることが、意見の違いに反映されている。今後も慎重な議論が行われることになりそうだが、いずれ利上げに関する議論が始まることを考えると、それまでは金相場もそう簡単には上昇できないだろう。今は1,800ドルと1,830ドルのレンジ相場だが、利上げが実施されるまでは1,700ドルと1,900ドルのレンジでの往来相場になるとみている。

ロイターは38人のアナリストやトレーダーを対象に実施した、金相場についての調査を発表した。それによると、2021年7―9月期には平均で1,835ドルと現在の水準を維持し、10―12月期には1,841ドルと小幅に上昇するが、2022年は世界経済の回復や各国の中央銀行が金融政策引き締めに着手するため、平均1,785ドルと小幅に下落するとしている。

金は伝統的に安全資産とみられ、コロナ禍では当初2,000ドルを上回る記録的水準まで高騰したが、経済が再開するにつれ下落した。今後は、各中央銀行は利上げに向かう可能性があり、国債利回りは現在の底値レベルから上昇し、利子が付かない金の魅力が低下する恐れがある。

ただし、短期的には宝飾品としての需要回復や、新興市場の反発に伴い米ドルが下落する可能性があり、金相場は買い支えられると考えられる。 また、最近のインフレ加速も、インフレヘッジとしての金買いを促す可能性がある。

一方、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、第2四半期の世界の金需要が、1年ぶりの高水準となったとした。中央銀行や投資家による買いが膨らんだとしている。ただし、宝飾品の加工は、依然として新型コロナウイルス流行の影響を受けており、2021年上期の金の利用は、上期としては2008年以降で最低となった。

第2四半期の世界の金需要は955.1トンである。前年同期の960.5トン、2019年第2四半期の1,132.1トンを下回った。上期の需要は1,833.1トンであり、前年同期の2044トン、2019年上期の2195.5トンを下回った。

ただし、今後の新型コロナウイルスの状況次第では、世界の二大金消費国である中国とインドの需要が回復する可能性は十分にある。実際に、傾向的にはその方向にある。また、これらの国はいわゆる「バーゲンハンター」であり、価格が下げた時に買いを入れてくる傾向が強い。これらの買いが下げた場合の下値を支えるものと思われる。

市場は今後、FRBのバランスシート縮小を織り込み始める可能性がある。これが金利上昇の引き金となり、金相場が下落に転じる可能性を念頭に置いておきたい。ただし、欧州中央銀行(ECB)やFRBの緩和的な姿勢や大規模な財政出動、インフレ率の上昇などを背景に、金相場の持続的な下落にはつながらないだろう。今後、調整が起きたとしても、それはあくまで一時的なものと考えておく。

今後は1,700ドル前後が下値になろう。現在の金の理論値は1,800ドル程度であり、実勢値はほぼその水準にある。一方で、短期的にはボラティリティが高まる可能性もありそうだが、その際には株価が調整し、金にも売りが出るときであろう。そのような動きになったときでも、慌てずに押し目をしっかりと買うことが重要であると考えている。

円建て金相場もレンジを形成している。6,500円を上値に、下値は6,400円となっている。これを下回った場合でも、6,300円が下値になるだろう。米利上げまでの今後2年程度を考慮すれば、レンジは6,000円から7,000円を念頭に置いておきたい。

レンジ下限まで下げた場合には、押し目買いを入れる一方、レンジ上限まで上昇すれば、早めに利益確定売りを行い、レンジ相場に対応するのが良いだろう。今は長期的な上昇を念頭に置きつつ、またレンジ相場を念頭に置きつつ、その動きを収益化することを考えても良い時期である。

もっとも、長期投資家は押し目を買い続ければ、いずれ金相場が本格的に上昇に向かった際には、大きな収益を得ることができるだろう。そもそも、金を保有する意味は、将来のインフレヘッジであり、株価のリスクヘッジである。この点を間違わなければ、株式を購入する際に金も購入することで、金融市場が不安定化したときにも耐えられるだろう。保有する株式に対して、最低でも10%程度の金を保有しておくと良いだろう。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むだろう。

今後10年間は、金が極めて重要な資産になるとの考えも変わらない。過去の上昇ペースから見ると、2027年ごろまで金価格は長期的に上昇する可能性が高いとみている。長期投資家は、長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと買っておけば報われるだろう。また、上昇基調がより明確になるまでは、上記のようなレンジを利用した取引も有効であろう。これまで同様に、今は臨機応変に対応するようにしたい。

プラチナ:続落の展開

プラチナは続落した。目立った材料のない中、前週からの下落の流れを引き継いで上値の重い展開となった。7月29日には一時1,082ドルまで上昇する場面もあったが、その後は売られ、週末は1,049ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月27日時点で1万1,795枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が318枚縮小した。買いポジションが1,990枚増加したものの、売りポジションも2,308枚増加したことで、ネットの買い越し幅が縮小した。買いと売りの両方のポジションが増加していることから、投機家のプラチナへの見方は強弱感が対立していると言える。

プラチナは徐々に下値を切り下げており、弱い展開が続いている。1,080ドル前後には重要なレジスタンスが控えているが、これを上抜けることができなかったことからも、上値の重さを感じる展開となっている。目新しい材料がないこともあり、手を出しづらい状況にある。

まずは、6月21日につけた安値である1,019ドルを割り込まずに推移することができるかを見極めることになりそうである。万が一、この水準を割り込むと、下げが加速しかねない状況である。節目の1,000ドルが意識されるものと思われるが、この水準で下げ止まらない場合には、950ドル、900ドル、850ドルといった具合に50ドルごとの水準が意識される形で調整することが想定される。今はファンダメンタルズ材料がないだけに、値動きには要注意である。

一方、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドは、対米ドルで一時下落基調が鮮明となっていたが、これが反転するとプラチナ相場にも好影響が出る可能性がある。この点も注視しておきたい。もっとも、プラチナ相場のリスクは株安であろう。工業用需要が需要の大半を占めることを考えると、株価が不安定な値動きになった場合には相応の注意が必要であろう。一方で、1,085ドルを超えてくると、地合いは好転し、1,150ドル程度までの上昇となる可能性も出てくるだろう。

円建てプラチナ相場も下落した。もみ合っていた3,900円を下抜けており、弱い動きにある。これで直近安値の3,700円水準を下回ると、大きく値を下げることになりそうである。まずは下げ止まりを確認したいところである。その上で、押し目買いを検討したいと考える。3,700円前後で下げ止まると、買いやすいだろう。

逆に4,100円を超えてくると、上昇に勢いがつきそうである。今は安易な押し目買いは避け、下値を確認することをまずは確認したい。無論、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。高値を買わず、じっくりと買うスタンスを維持すれば、将来の反発局面で収益化することは十分に可能であると考える。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反発の展開

シルバーは反発した。7月27日には一時24.46ドルまで下落し、直近安値を下回る場面もあったが、その後は週末に掛けて反発し、7月29日には一時25.80ドルまで上昇する場面も見られた。週末7月30日は25.46ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、7月27日時点で3万1,217枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が6,258枚縮小した。買いポジションが3,553枚減少し、売りポジションが2,705枚増加した。前週と同様に、投機筋は売り姿勢を強めている。ただし、週末に掛けて値を戻しており、投機筋がスタンスを変えているかに注目したい。

銀相場は週末に反発したものの、基調は依然として下向きである。ただし、25.60ドルを明確に上抜けると、基調が上向く可能性がある。ダウントレンドも上抜くことになるため、今週はこの水準を注視しておきたい。特段の材料がないだけに、引き続き金相場の動きを見ながらの値動きになりそうである。

また、銀需要の大半が工業用向けであることから、株価動向にも注意しておきたい。株価が崩れると下げやすい点には要注意である。もっとも、株価が堅調に推移すれば、上げやすいだろう。26.65ドルを超えると、上昇に勢いがつき、トレンドは明確に上向くことになろう。そのような動きになるかを注視しておきたい。

繰り返すように、今は銀市場にとって明確なファンダメンタルズ材料が見当たらないため、金相場と株式市場の動向を見ながら、慎重に値動きを見極めるようにしたい。

円建て銀相場は一段安となる場面があったが、辛うじて崩れずに反発した。これまでは92円が重要な節目になっており、これを割り込んでから下げているため、この水準を回復できると基調も上向きやすい。そのため、そのような動きになるかを注視しておきたい。

今は、押し目買いは慎重に行いたいところである。むしろ、92円を回復したことを確認した上で、買いを検討したほうが良いだろう。また、押し目買いをするにしても、時間と資金を十分に分散した上で、ゆっくりと行うようにしたい。

また、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。その上で、時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券