先週のゴールド:小幅反落の展開

金相場は小幅反落した。週明け7月19日の金相場は、不安定な値動きとなる中、小幅に上昇した。米国債利回りが2月以来の水準に低下したものの、米ドル高の影響で上値は重かった。その後は新型コロナウイルス流行への懸念が高まり、安全資産とされる金への投資妙味を高めたものの、米ドル高が重石となり資金流入が抑えられた。

また、その後の米長期金利の上昇も重石となった。リスク選好ムードが広がる中、米10年債利回りが1.29%台に上昇。金利を生まない金の圧迫要因となった。7月22日には反発した。米雇用指標の悪化や米長期金利の落ち着きを支えに、安全資産としての買いが入った。

この日発表された米週間新規失業保険申請件数は、前週比5万9,000件増の41万9,000件と、改善予想に反して2週ぶりに悪化した。これを受けて、軟調に推移していた金はプラス圏に切り返した。米10年債利回りが低下したことも支援要因だった。欧州中央銀行(ECB)が粘り強く金融緩和を続ける姿勢を示したことも、金利を生まない金の投資妙味を強めた。

週末7月23日は下落。米ドル高や米金利と株価の上昇が金投資への妙味を薄め、一時1,789.98ドルまで下落した。週間では0.7%安だった。新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大に対する懸念が和らぐ中、株価が上昇基調を強め、リスク資産への投資意欲が高まったたことで、金を含めた安全資産が売られた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、7月16日の1,028.55トンから、7月23日には1,027.38トンに減少した。小幅ではあるが減少しており、投資家の買いは依然として入っていないといえる。徐々に手仕舞い売りが出てきていると思われる。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月20日時点で19万5,972枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,136枚拡大した。買いポジションが1,769枚増加し、売りポジションが3,367枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が拡大した。投機筋の買い姿勢は変わっていない。

円建て金相場も反落した。米ドル建て金価格の上昇の下落が下げにつながった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:調整リスクを念頭に置く

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
-FRB(米連邦準備制度理事会)の政策方針
-米金利上昇による保有コスト高
-円建て金相場は下落の可能性

金相場は上値の重い日々が続いているが、週末時点では辛うじて1,800ドルを維持している。まだ崩れてはいないが、1,800ドルを割り込むと下げやすい地合いになっているように見える。株式市場が一時崩れかけたが、その後は息を吹き返しており、リスクオンになりつつある。こうなると、金は上がりにくくなる。米ドル高基調もいつまで続くか、よく見ておくことが必要である。

また、金利が反転して上昇すると、これが金相場を直撃する可能性がある。いずれにしても、今週は1,800ドルを維持できるかを見ておくと良いだろう。ただし、徐々に上値が重くなっており、下落リスクを念頭に置きながら、今週の値動きを見ておきたい。

現在の金の理論値は、米10年物・物価連動債利回りから見れば1,900ドル程度である。実勢値はそれに比べるとかなり割安になっている。しかし、だからと言って必ず金相場が上がらなければならないというわけではない。したがって、安易に上昇するなどと考えないほうが良いだろう。短期的にはボラティリティが高まる可能性もありそうだが、その際には金は売られることになるだろう。

ただし、その前に株価は先に下落に転じているだろう。したがって、株価の動きはよく見ておく必要がある。ただし、株価が下げて金もつれて下げるような動きになれば、慌てずに押し目をしっかりと買うのが良いだろう。株安で金も売られた後は、金が先に上昇することが多い。このことを知っておけば、何も心配はいらない。

むしろ、金相場にとって厳しい状況になるのは、株価が上昇し続けるときであろう。そうなると、投資家は株式市場を中心に投資を検討するはずである。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)が7月23日に公表した週間調査によると、7月21日の週までに金のファンドから10億ドルが流出し、3月以来の大幅な減少となった。7月19日には株価が急落したが、その後は急速に持ち直しており、投資家の金への関心は低下したと言えそうである。一方で、世界の株式ファンドに33億ドルが流入した模様である。投資家はまだまだ株式に強気なようである。

従前から、夏場は金にとってあまりよい季節ではない。もみ合うことが少なくない。しかし、8月から上昇に転じやすくなる。これは不思議なことに、徐々に水準を切り上げていくのである。この点も念頭に置いておくと良いだろう。

一方、株式市場はこの時期から徐々に調整色を強め、9月から10月まで調整が続くことがある。2021年もそうなるかは不明だが、その場合には、調整が大きくならなければ、金市場もそれほど下がることはないだろう。

ただし、繰り返すように、今後のテーパリングのスケジュールが気になるところである。7月27・28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、テーパリングに関する議論が始まる模様である。その内容に注目せざるを得ないだろう。

現時点で、米連邦準備制度理事会(FRB)のコアメンバーが、テーパリングを急ぐようなことはしないだろう。株価を下落させるわけにはいかないことを考えれば、性急な議論はされないだろう。

もっとも、地区連銀総裁からは利上げの議論まで踏み込むべきとの声が上がるだろう。その場合、FRB内部の意見の相違が市場を不安定にさせる可能性は否定できない。今のFRBコアメンバーは、明らかに株価を意識した発言に終始しており、これがいつまで通用するかは不透明である。この点は、今後の市場の重要な材料になってくる。そのため、今後もFRB関係者の発言には注意が必要である。

円建て金相場についても、下落リスクを念頭に置いておきたい。今後2年間は米ドル建て金相場がレンジ相場を形成する可能性があるとの見方は変わらない。その中で、6,400円を維持できるかを見ておくと良いだろう。大まかに言えば6,000円から7,000円を念頭に置いておくが、目先が6,400円を割り込むと6,300円、そして6,200円と下げていくことになるだろう。

大枠では6,300円と6,800円のレンジを見ておくが、レンジ下限まで下げた場合には、押し目買いを入れる一方、レンジ上限まで上昇すれば、すかさず利益確定売りを行いたいところである。今は長期的な上昇を念頭に置きつつも、レンジ相場を念頭に置きつつ、その動きを収益化することを考えても良いだろう。そのようにしながら、トレンドが出るのを待つと良いだろう。

長期的には金相場は上昇していくとの考えは変わらない。ただし、それまで押し目買い一辺倒で持ち続けるだけでは、収益機会を見送ることになる。そのため、当面は押し目買いと利益確定を繰り返すことで、収益確保を繰り返したいと考えている。

長期投資家は押し目を買い続ければ、いずれ金相場が本格的に上昇に向かった際には、大きな収益を得ることができる可能性がある。そのようなポジションも維持しつつ、短期的に取引することもぜひ検討すると良いだろう。

とにかく、上昇したときに買わず、押し目を買うようにすれば、損失を抱えるリスクは少なくなる。無論、長期的なポジションに移行すれば、むしろ収益に変えられる可能性もある。

いずれにしても、いまは保守的な運用を心がけたほうが賢明であろう。もっとも、長期的にはポートフォリオのヘッジの観点から、金を買っておくことは不可欠であると考える。保有する株式に対して、最低でも10%、できれば15%から20%程度の金を保有しておくと良いだろう。そうすれば、株式市場が不安定化した場合でも、ポートフォリオの痛みは少なくて済むだろう。

今後10年間は、金が極めて重要な資産になるとの考えも変わらない。過去の上昇ペースから見ると、2027年頃まで金価格は長期的に上昇する可能性が高いとみている。長期投資家は、長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと買っておくことが肝要であろう。また、上昇基調がより明確になるまでは、上記のようなレンジを利用した取引も有効になるだろう。臨機応変に対応するようにしたい。

プラチナ:大幅続落の展開

プラチナは大幅続落となった。先週末の急落から流れが変わらず、そのまま下げ基調が続いた。週初に急落し、その後は週末に掛けて戻りを試す場面もあったが、結局は戻り切れずに急落し、週末7月23日には一時1,042.67ドルまで下落する場面がみられた。週末は1,061.50ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月20日時点で1万2,113枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,248枚縮小した。買いポジションが465枚減少し、売りポジションが2,783枚増加したことで、ネットの買い越し幅が縮小した。

プラチナはいかにも弱い動きにある。結果的に1,160ドルを超えられずに下げ基調になっており、徐々に下値を切り下げている。これで節目の1,050ドルを割り込むと、下げ基調がさらに強まりそうな雰囲気である。

その場合には、6月21日につけた安値1,019ドルがターゲットになるが、それを割り込むと節目の1,000ドルが意識されるだろう。そこで下げ止まらないようだと、相当弱い動きになることになる。その場合には、950ドル、900ドル、850ドルといった具合に50ドルごとの水準が意識されやすい。そこまで弱い動きを想定していないが、今のような弱い動きを改善させるには、相当の材料が必要であろう。

今はファンダメンタルズ材料がないだけに、プラチナ市場に資金が流入するようなイメージは持ちづらい。このような状況で、主導的な金相場が下落に転じるようだと、プラチナ相場は底抜けの状態にある可能性も否定できない。

今のプラチナ相場は850ドルは堅いと考えられるが、そのあたりまでの調整リスクは念頭に置いておきたい。ただし、これはあくまで「最大のリスク」としての認識である。今は明確な強材料がないだけに、下落基調が続いても問題が起きないようにしておくことが肝要であろう。

円建てプラチナ相場は下落した。節目の4,100円を再び割り込んで、3,900円も割り込んだ。この水準は短期的なサポートだったが、これも割り込みそうな雰囲気である。今は短期的なレンジを3,700円と4,100円とみておき、3,700円までの押し目での買いを検討したい。

その上で、反発基調になれば、3,900円から4,100円の水準では早めに利益確定することを考えたい。一方で、3,700円を割り込むと、基調は完全に下向きに転じることになる。

その場合には、安易な押し目買いは避け、下値を確認することをまずは確認したい。無論、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。その場合でも、高値を買わないことが肝要である。そうしておけば、将来の反発局面で収益化できるときがくるだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続落の展開

シルバーは続落した。7月21日には一時24.73ドルまで下落し、その後は反発したものの、週末7月23日には再び下げ、週末は25.16ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、7月20日時点で3万7,475枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が6,214枚縮小した。買いポジションが3,961枚減少し、売りポジションが2,253枚増加した。下げ基調になる中、投機筋は売り姿勢を鮮明にし始めているように見える。

銀相場は6月中旬以降の急落後、25.50ドル台がサポートになっていたが、それを割り込んでおり、基調は弱い。これを回復すれば、再び上昇を目指す体制に移行することができると考えられるが、今週はそのような動きになるかを見極めることになる。できるだけポジティブに見ていきたいと考えているが、ここまでの下げを見る限り、あまり強いとは感じない。

しかし、株式市場が急落から持ち直しており、これがサポート要因になる可能性がある。その上で、25.50ドルを回復し、さらに26ドル台を回復できれば、上昇基調に移行することができそうである。その上で、26.80ドルを超えるようだと、基調はより明確に上向くことになろう。

逆に、節目の25ドルを割り込むようだと、基調は完全に下向きになる。そうなった場合には、24ドルまでの下げを想定せざるを得ないだろう。今はファンダメンタルズ材料が相場をサポートするようなイメージはない。したがって、金相場と株式市場の動向を見ながら、慎重に値動きを見極めるようにしたい。

円建て銀相場はこれまでの重要なサポートだった92円を割り込んでいる。これにより、基調は明らかに弱くなっている。節目の90円も割り込むようだと、基調は完全に崩れることになる。したがって、押し目買いは慎重に行いたいところである。むしろ、92円を回復したことを確認した上で、買いを検討したほうが良さそうである。

また、押し目買いをするにしても、時間と資金を十分に分散した上で、ゆっくりと行いたいところである。

繰り返すように、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いと考えている。その上で、時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。この点は常に変わらない。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券