先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸した。週明け7月12日は対ユーロでの米ドル高が重石となり反落した。一時は1,790.49ドルまで下げたが、安値圏では買い戻された。7月13日に発表された米消費者物価指数(CPI)がほぼ13年ぶりの高い伸びを示したものの、米連邦準備制度理事会(FRB)が早期に金融緩和縮小に乗り出す公算は小さいとの見方が下支え要因となった。

一方で米ドル相場高に圧迫され、上値は抑えられた。米CPI上昇率は前月比0.9%と、市場予想の0.5%を上回った。ただし、これをもって早期の金融引き締めにつながることはないとの見方が金相場を支援した。

7月14日は上昇した。パウエルFRB議長が議会証言で、 インフレ率が上昇する中でもFRBは緩和的な金融政策を維持する方針を示し、安心感が広がった。パウエルFRB議長は米国の雇用について、FRBが景気支援策を縮小する前に確認したい進展から「依然として遠い」との認識を示した。一方で、現在の高インフレ率は向こう数ヶ月間で低下すると予想した。

7月15日はFRBが緩和的な金融政策を当面続けるとの見方が広がる中、インフレヘッジとしての金の魅力が高まり、買いが優勢となった。ただし、この日は対ユーロで米ドルが上昇した。米ドル建てで取引される金などのコモディティの割高感につながり、金の圧迫材料となった。

週末7月16日の金相場は反落した。米ドル高を受けて金の投資妙味が低下し、一時1ヶ月ぶりの高値を付けた前日の水準から値を下げた。週間では0.3%高だった。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、7月9日の1,040.19トンから、7月16日には1,028.55トンに減少した。投資家の買いは依然として入っておらず、むしろ徐々に手仕舞い売りが出てきている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月13日時点で19万836枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が8,015枚拡大した。買いポジションが4,998枚増加し、売りポジションが3,017枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が大幅に拡大した。投機筋は再び買い姿勢を強めている。

円建て金相場も続伸した。米ドル建て金価格の上昇が押し上げにつながった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:高値からの反落リスク

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
金利反転と米ドル高リスク
株安リスクと現金化による手仕舞い売り
円建て金相場は調整を想定

金相場は目先の高値を付けた可能性がある。先週末の動きを見ると、結果的に重要なポイントだった1,830ドルを超えられずに下げている。今週は1,800ドルを維持できるかを見ていくことになるが、このまま調整に向かう可能性が高いように思われる。

今は金がどんどん上げていく相場環境ではない。しかし、最終的には上げていくと考えている。そのフェーズに入るには2年程度はかかるだろう。また利上げまでは厳しい環境が続くことになるだろう。その間に、いかにテーパリングと利上げを織り込み、底値を形成できるかがポイントになる。

当面は、自身の投資スタンスを再確認し、金・貴金属に対して長期投資なのか、あるいは短期トレードなのかをよく考え、その上で投資戦略を決めるようにすると良いだろう。

今は金相場に大きな期待をしないほうが良いと考えている。2年程度は上昇と調整を繰り返して変動する可能性が高いと考えている。もっとも、金に大きな変動を期待するのはあまり賢明ではない。もともと金のボラティリティは高くない。そして、そもそも金は短期売買に最も向かないコモディティである。

短期的なトレンドを追いかける運用手法を生かすのであれば、他のコモディティ市場に向かうほうが賢明であろう。

さて、金相場の目先の方向性を占う上で重要と思われるのが、7月27・28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)である。FRB関係者はテーパリングの議論を行う予定である。これは、先週のパウエルFRB議長の議会証言でも確約されたことである。

つまり、FRB関係者がテーパリングに関して、現時点でどのような考えを持っているかがより明確になるだろう。それまでに株価が急落などしていれば、FRBは株価を支えるための発言を行ったり、あるいはそのようなスタンスを示すかもしれない。

新型コロナウイルスのデルタ株の感染が広がることへの不透明感から、FRBは緩和的姿勢を明確にする可能性もある。しかし、それでは本末転倒である。FRBは現在の経済環境や市場動向を冷静に分析し、本来すべき作業であるテーパリング開始時期について、真剣に議論すべきである。

また、なぜインフレ率が今後は上昇しないと言い切れるのか、明確なデータをもって示すべきであろう。しかし、それはできない。というのも、実際にはそうではないからである。インフレ率は確実に上がっていく。しかし株価を支えるためにも、それをいま認めるわけにはいかないのである。

FRBの仕事は、本来の「雇用の最大化とインフレ率の抑制」という2大命題から大きくずれており、株価を支えることが最大の責務になっている。

しかし、FRBはそれを間違っていると認めるわけにはいかない。そうすれば、FRBの権威は失墜し、信用は大きく低下するからである。このような状況で、FRBがまともな金融政策などすでにできない状況にあることは認識しておくべきである。その中で、金相場がコントロールされていくことになる。

このような考えを示すと、本来の市場分析から離れていくように思われるだろう。しかし、実際にはこのような発想は、市場分析において極めて重要である。このような認識を持ちつつ、その上で金を資産運用にどのように組み込むかを考えると良いだろう。

金相場に関しては、利上げ開始までは1,700ドルから1,900ドルのレンジが1つの基準になりそうである。このレンジを意識しながら市場を見ておくことにする。レンジ下限に向かえば、インドや中国などのバーゲンハンターが購入するだろう。上昇すれば、逆に彼らが利益確定売りを出すことで、上値は抑制されるだろう。

このような動きを2年程度繰り返す中で、FRBの金融政策の方向性が見えてくれば、金相場も上昇に向かうことになろう。テーパリングと利上げのスケジュールがより明確に出てくれば、今後は投資戦略もより立てやすくなるはずである。

無論、短期トレードを好む向きは、その中でトレンドが出てくれば、そこで勝負しても良いだろう。収益機会はそれほど多いとは思えない。しかし、まったくトレンドがないわけではない。ただし、ボラティリティが低いため、リターンも低いことは理解しておくべきであろう。

現在の米実質金利から見た金の理論値は1,890ドル前後とかなり高い。しかし、市場価格はかなり下である。投資家行動を見るまでもなく、今は金に資金が入ってきていない。投機筋は先物市場で買い姿勢を強めているが、現在の金市場への影響は小さいといえる。

また、米CPIは極めて強い内容だったが、市場はFRB関係者の話術に惑わされているようである。したがって、インフレ期待は高まらず、金利は上昇しづらい状況が続いている。

もっとも、ここ最近の債券利回りの低下は、投資マネーの債券市場への流入が原因である。これが落ち着いてくれば、金利低下に歯止めがかかるだろう。その兆候はすでに見られ始めている。そうなると、米ドルが上昇し、金は買われにくくなる可能性がある。この点には要注意である。

このような状況もあり、目先は調整する可能性が高そうである。もっとも、所詮はレンジ相場である。下げればアジアの実需筋が買ってくるため、下値も限られるだろう。繰り返しだが、このようにレンジ相場を形成し、上下動する期間が続くことになると考えている。この前提を変更する必要が出てくるまでは、押し目買いと戻り売りを繰り返すのが賢明といえそうである。

円建て金相場についても、同じようにレンジ相場を念頭に置いておくと良いだろう。今後2年間は米ドル建て金相場がレンジ相場を形成する可能性がある。これを前提に、円建て金相場にもついても念頭に置いておくことにする。

円建て金相場に関しては、大まかに言えば6,000円から7,000円を念頭に置いておく。その上で、さらに小さいレンジを想定しておく。6,300円と6,800円のレンジが良いだろう。その中で押し目買いと戻り売りを念頭に置きながら、そして利益確定も入れながらトレンドが出るのを待つと良いだろう。

長期的には金相場は上昇していくと考えているが、ある程度の利益で収益を確定させる取引を繰り返したほうが、今は賢明であろう。

長期投資家は押し目を買い続ければ良いが、金相場が本格的に上昇に向かうには時間がかかるリスクがあるとみている。相場展開がより明確に上向いてくれば良いが、現段階では保守的な運用を心がけたほうが賢明と考えている。

最も、長期的にはポートフォリオのヘッジの観点からも、金を買い増しておくことが重要であるとの考えは変わらない。今後10年間は、金が極めて重要な資産になるとの考えも変わらない。過去の上昇ペースから見ると、2027年ごろま金価格は長期的に上昇する可能性が高いとみている。

長期投資家は、長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと買っておくことが肝要であろう。また、上昇基調がより明確になるまでは、短期目線で上記のようなレンジを利用して取引することも検討しても良いだろう。


プラチナ:小幅反落の展開

プラチナは小幅に反落した。7月13日こそ下げたものの、7月12日の週を通してほぼ一貫して上昇し、7月15日には一時1,146ドルの高値を付ける場面がみられた。しかし、週末7月16日に急落し、一時1,095.89ドルまで下落する場面がみられた。週末は1,102.50ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月13日時点で1万5,361枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,785枚拡大した。買いポジションが604枚増加し、売りポジションが1,181枚減少したことで、ネットの買い越し幅が拡大した。

プラチナは戻りを試したものの、週末に戻り切れずに大きく調整した。値動き自体は調整に向かいそうにみえる。重要なサポート感が得られる1,095ドルを割り込むと、売りが優勢になりそうである。そうなると、6月21日に付けた安値1,019ドルからのアップトレンドが崩れることになり、さらに売り圧力が強まる可能性がある。この点には要注意である。

一方で、反発した場合には、1,170ドル前後のレジスタンスが意識されることになろう。その場合、これを上抜けるのは簡単ではないだろう。今のプラチナ市場には、買いが入ってくる勢いが感じられない。特段の材料もなく、以前から取り上げている水素燃料関連の材料も、今は下火になっている。こうなると、金相場次第の展開になる可能性がある。

万が一、相場が崩れた時にどの程度まで下げる可能性があるかをよく理解しておくことが肝要であろう。節目の1,000ドルは意識されやすいが、一方で割り込んでしまうと950ドル、900ドル、850ドルといった具合に50ドルごとの水準が意識されやすいだろう。

今のプラチナ相場は850ドルは堅いと考えられるが、そのあたりまでの調整リスクはあくまで最大のリスクとしてであるが、認識して念頭に置いておくと良いだろう。繰り返すように、今は明確な強材料がないだけに、下落に対する備えをしておくべきであろう。

円建てプラチナ相場は上昇した。節目の4,100円を超えてきたが、週明け以降もこの水準を維持できるかを見ていくことになろう。割り込むと下げやすくなるだけに、今の水準での買いは慎重になりたいところである。

無論、このまま上げていくと買いそびれることになるが、それは押し目を再度待てば良いことである。いま慌ててすぐに買う理由はない。4,000円を割れを狙うつもりで、ゆっくりと買いを検討すると良いだろう。

できれば3,800円前後での買いを検討したいところである。その上で、戻りがあれば利益確定売りを行うようにしたい。金相場同様に、当面はレンジ相場になる可能性がある。それを今は前提に見ていくことにする。目先のレンジは3,700円から4,500円であり、中心が4,100円である。このように見ておくとわかりやすいだろう。

無論、長期投資家は徐々に積み増していくと良いだろう。実際には相場の天底やトレンドをあらかじめ予測することは不可能である。とはいえ、ある程度の方向性を見極めながら対処することも必要である。

その上で、レンジでの下値を買い、戻りを売ることも十分に機能すると考える。無論、長期投資家は買いをゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。そうしておけば、将来の反発局面で収益化できるときがくるだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続落の展開

シルバーは続落した。上昇を試す場面もあったが、週末7月16日には25.57ドルまで下落する場面もあった。週末は25.66ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、7月13日時点で4万3,689枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が799枚縮小した。買いポジションが2,543枚減少し、売りポジションが1,744枚減少した。買い手・売り手ともにポジションを一転して減らしていることが確認できる。

銀相場は6月中旬以降に急落して以降、25ドル台半ばから26ドル台半ばのレンジでの推移が約1か月間続いている。しかし、先週末には急落し、レンジ下限まで下落している。今週は25ドル台半ばのレンジ下限を維持できるかを確認することになろう。銀市場独自の材料がない状態は変わっていないだけに、引き続き金相場の動きを見ながらの対処になるだろう。

今のところ、レンジ上限を超えて上値を試す可能性がやや低下しているように見える。レンジ上限を上抜けた場合には、26.90ドルにあるレジスタンスを超えるかを確認することになるが、現段階ではかなり重そうである。むしろ、25ドル台半ばを下回り、下落基調に向かうリスクを念頭に置いておきたい。

レンジ相場を形成してきただけに、現在はボラティリティが低下している。したがって、下げ始めるとボラティリティの上昇を伴って大きく下落するリスクがある。そうなると、24ドル程度までの急落となる可能性もあろう。今週はこのような下落リスクを意識しておきたい。

円建て銀相場は高値を試したものの、戻しきれずに週末にやや下げて取引を終えている。円建て銀相場も93円から97円のレンジを形成しているが、上値を追いきれなかったこともあり、目先は下値を試す可能性がある。その場合、93円水準を割り込まずに維持できるかがポイントになろう。

93円で下げ止まらなかった場合には、相場が大きく崩れる可能性がある。今は押し目買いは慎重に行いたいところである。97円を超えると上昇に勢いがつきそうであり、むしろ買いやすいだろう。上昇に乗る形での買いを検討したい。もっとも、今は下落リスクを念頭に置いておきたいと考えている。

93円を割り込み、92円も割り込むと下げが激しくなる可能性がある。長期投資の積み立てであれば、粛々と買い下がっていけば良いが、短期的な値上がりを想定して買いを入れる場合には、底打ちをして反発する動きが確認できるまで、相当慎重に値動きを見極めた上で行うべきであろう。

繰り返すように、銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。その上で、時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。この点は常に変わらない。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券