先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸した。7月5日から始まる週の週初は米国債利回りの低下を背景に、節目の1,800ドルを上回った。

米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、参加者らが経済回復について「大幅な前進」という目標に達していないとの見解を示したことが明らかになった。

議事要旨にタカ派的発言による一段のサプライズはなく、市場予想に沿う内容だったことから、金に買い安心感が広がった。FOMCでは量的緩和を縮小する基準にはまだ達しておらず、物価上昇は主に一時的な要因によるものとの見方が維持された。

その後は米国債利回りが小幅上昇し、米国株が安値から一部値を戻したことを背景に反落した。ただし、米ドル安と米国の労働市場の回復に対する懸念から、3週間ぶりに高値付近で推移した。

米10年債利回りは4ヶ月以上ぶりの低水準付近となり、 金相場は一時6月17日以来の高値となる1,818.10ドルを付けた。週末7月9日は米ドル安に加え、インド由来の新型コロナウイルス変異株「デルタ株」の感染拡大が世界経済の回復を遅らせるとの懸念が安全資産として金買いを誘い、1,807.98ドルで引けた。

デルタ株の感染拡大に関しては、世界的に懸念が広がりつつある。米国だけでなく、世界中で経済の進展をかなり遅らせる可能性があり、それを嫌気する声もある。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、7月2日の1,042.58トンから、7月9日には1,040.19トンに減少した。投資家の買いは依然として入っておらず、小幅な動きにとどまっている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月6日時点で18万2,821枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万595枚拡大した。買いポジションが1万6,339枚増加し、売りポジションが4,256枚減少したことで、ネットポジションの買い越し幅が大幅に拡大した。投機筋は買いに傾き始めていることがわかる。

円建て金相場も続伸した。米ドル建て金価格の上昇が押し上げにつながった。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:上昇基調の持続性に疑問

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
-金利と米ドル相場の動向
-安全資産としての買い
-円建て金相場は高値圏維持

金相場は短期的な上昇基調を維持している。世界的に拡大が懸念され始めているデルタ株は心配の種ではある。現物市場ではインドや中国で金需要が後退したとの報道もある。反発基調にあることで、押し目買いを狙う買いが入りづらくなっている可能性がある。

これらのバーゲンハンターは、安値になれば買ってくるが、デルタ株が蔓延し、金相場が下げた場合でも買ってくるだろうか。冷静に見ておく必要がある。

一方で市場は、FRBの姿勢にも注目している。FRBは、インフレが一時目標を上回っても特に問題視しない姿勢を変えておらず、これが利上げを遅らせるとみられている。市場では、これが金相場の下支え要因として意識されているようだが、これまで米長期金利が低下していたことも金相場を支えていた。

ただし、米10年債利回りが4ヶ月超ぶりの低水準から上昇しており、これが金利の付かない金相場の上値を抑える可能性がある。

そもそも、米金利が低下していた理由をよく考える必要がある。市場では、米国債利回りの動向に関して、様々な見解がみられる。景気悪化を織り込んで金利が下がっているとの指摘もあれば、インフレは高まらず、それを織り込んでいるとの見方もある。さらには、むしろデフレになるとの見方も出てきているようである。

しかし、これまでの米金利の低下の背景は、単に資金が入っているからに過ぎないだろう。それだけ投資マネーが余っているということである。また、株価が高水準にあるため、ポートフォリオ分散の観点から、債券に振り向けるべき資金が相対的に多くなっていることも、資金を債券に向かわせている可能性が高い。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)の週間調査によると、7月7日までの1週間は、債券ファンドへの資金流入が継続した。米国債価格は上昇し、10年債利回りは1.3%を割り込んだ。

債券ファンドには、2月以降で最高の184億ドルが流入した。キャッシュファンドには105億ドル、株式ファンドには68億ドルがそれぞれ流入し、また金ファンドからは1億ドルが流出した。

この動きを見ると、現在の投資市場では、株式への資金流入額の2倍以上の資金が債券に流れ込んでいる。この傾向はこの数週間確認されている。依然として金余り現象にあることがわかるのだが、それにしても債券への資金流入ペースはすさまじいものがある。

それでも、大局的に見れば、ファンドマネージャーの債券への資金配分は過去最低水準である。まだまだ債券に資金が流入する可能性があり、これが金利を抑制することも想定される。

このように、債券市場への資金流入により、金利は低下している。これが金相場を支えるのであれば結構なことではあるが、所詮は資金の動きの問題であり、本質的な材料ではない。

一方で、投機筋は債券価格がピーク(金利がボトム)と見ているようである。先週から、投機筋は債券先物のショートを大きく増やしている。これは、債券価格の下落(金利の上昇)を見込んでいるということになる。投機筋が想定するように、今後金利が上昇するようであれば、金相場への影響も相応のものになるだろう。

もっとも、FRBはインフレ率は2%を超えた状態を想定している。そうなれば、市場もいずれインフレを意識し、それが米実質金利の低下につながり、金相場を支えることになるだろう。

一方、英規制当局は、ロンドンで金取引の清算を行う銀行は、2022年1月に予定される資本規制強化に際し、適用除外を申請できるとの方針を明らかにした。資本規制強化に関しては、 金市場の機能を脅かすと懸念する声があったが、懸念要因が取り除かれることになる。

これにより、ロンドンで金取引の清算を行う銀行は、追加の資本積み増しをしなくてもよくなる。これは銀行収益にとってだけでなく、金市場にとって朗報といえる。金市場で最も気にされていた材料の1つであっただけに、一安心である。

さて、目先の金相場では、1,825ドルは重要なレジスタンスと判断できるだろう。これを超えられなければ、まだ本格的な上昇基調には入れないだろう。米実質金利から見れば、理論値は1,875ドル前後だが、ここまで上げるほどの材料も力強さもない。今の段階で力強い上昇基調に戻すのは簡単ではないだろう。

繰り返しになるが、金がFRBによるテーパリングから利上げが実施されるまで、金相場は2年程度上値の重い状況が続くとみている。そのため、良い意味で期待せずに、レンジでの上下動を意識しておきたい。1,700ドルから1900ドルが1つの基準になるだろう。その動きを利用して、上手く対応していくことが肝要である。

円建て金相場は6,400円を維持して推移しており、ひとまず下値堅い展開に見える。もっとも、上値も6,500円で打たれており、これを超えるかどうかで今の相場の強さを確認できるだろう。大枠では6,300円から6,000円でのレンジであり、上記の6,400円から6,500円のレンジの拡大版と捉えると良いだろう。

つまり、上値も限定的であり、一方で下値も限定的といえる。押し目があれば買いを入れておきたいところだが、6,500円から6,600円あたりでは早めに利益確定を行うトレードを行っても良さそうである。当面はレンジ相場を想定しており、高値を買っていくことは避けたいところである。押し目を待って買い、ある程度の利益で収益を確定させる取引を繰り返したほうが、今は賢明であろう。

長期投資家は押し目を買い続ければ良いが、上記でも解説しているように、金相場が本格的に上昇に向かうには時間がかかるリスクがあると見ている。相場展開が変われば別だが、現段階では保守的な運用を心がけたほうが賢明であろう。

もっとも、長期的にはポートフォリオのヘッジの観点からも、金を買い増しておくことが重要であるとの考えは変わらない。今後10年間は、金が極めて重要な資産になるだろう。過去の上昇ペースから見ると、2027年ごろまで金価格は長期的に上昇する可能性が高いと見ている。長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと買っておくことが肝要であろう。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発した。7月6日は一時1,119.24ドルまで上昇する場面が見られたものの、買いは一時的なものになり、その後は下落に転じて7月8日には1,065ドルまで下げる場面があった。ただし、週末には反発し、1,104ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、7月6日時点で1万3,576枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,168枚縮小した。買いポジションが1,751枚減少し、売りポジションが583枚減少したことで、ネットの買い越し幅が縮小した。

プラチナは急落して6月21日に安値の1,019ドルを付けた後は何度か戻りを試しているものの、上値を打たれる動きが続いている。その結果、レンジを形成しつつあるように見える。

もっとも、安値を更新せずに徐々に下値を切り上げており、崩れる可能性は低下しているように感じられる。したがって、1,100ドルを明確に上回っていけば、上値を試す流れが形成される可能性が高いと考えられる。

とはいえ、その場合でも1,170ドル前後のレジスタンスで打たれる可能性がある。今は特段の材料がないため、金相場の動き次第になりそうであり、引き続き金相場の動きをよく見ておくことが肝要である。

逆に戻り切れずに下落し、1,050ドル水準を割り込むようだと、再び下値を試す展開も想定される。そうなれば、再び大きく崩れる可能性も否定できない。明確な強材料がないだけに、注意は必要であろう。

円建てプラチナ相場は下落した。4,100円が重くなっており、これを超えないと上向く可能性は高まらない状況にある。一方で3,900円が堅いサポートになっており、ひとまずレンジを形成している格好である。したがって、まずは4,100円を超えて上値を試す動きになるかを確認したい。押し目買いをする場合には、3,900円までの下げで慎重に行うべきであろう。

今はまだ明確な方向性が出ていない。そのため、押し目買いを行った場合でも、ある程度の戻り局面で利益確定売りを行うほうが良いだろう。

長期的にはプラチナはインフレヘッジとしても利用価値があると考えられるが、今は投資家の関心が低いようである。長期的に対応できる場合には、押し目買いを繰り返すことで、将来の反発局面で収益化することは可能と考えるが、その場合でも慎重に買い下がることが求められよう。

相場の底値をあらかじめ予測することは不可能である。したがって、買いはゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。そうしておけば、将来の反発局面で収益化できるときがくるだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:反落の展開

シルバーは小幅反落した。7月6日には一時26.76ドルまで上昇する場面もあったが、買いは続かず、その後は週末にかけて下落し、26.08ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、7月6日時点で4万4,488枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,011枚拡大した。買いポジションが4,935枚増加し、売りポジションが1,924枚増加した。買い手・売り手ともにポジションを増やしているが、現時点では買い手の勢いがやや勝っている状況である。

銀相場は膠着状態にある。まったく方向感がなく、25.50ドルを下値に、上値は26.50ドルの狭いレンジでの推移となっている。いずれ動き出すものと思われるが、銀市場独自の材料がないだけに、金相場の動きを見ながらの対処になりそうである。もっとも、26.50ドルを超えると相応の動きになりそうである。そのような展開になるのを待つのが賢明であろう。

ただし、上抜けた場合には、26.90ドルにあるレジスタンスを超えるかを確認したい。その上で、トレンドが形成されれば、相応に強い相場に発展するだろう。

逆に25.50ドルを割り込むと、この相場は一旦やり直しになるだろう。相当の調整も覚悟する必要がある。その可能性は現時点では低いと見ているが、今はボラティリティが落ち着いているだけに、注意したいと考える。

いずれにしても、レンジ相場はそう長くは続かない。近日中に大きく動き出す可能性を念頭に置いておきたい。

円建て銀相場は高値を試したものの、その後は下げている。97円を試したが、超えられなかったことから売りが出ており下げている。もっとも、93円水準を割り込まずに、直近安値は維持している。したがって、このまま下値を固めることができれば、再度上昇を試す可能性も出てくるだろう。97円を超えると上昇に勢いがつきそうであり、むしろ買いやすいだろう。

上昇に乗る形での買いも検討できる。もっとも、93円を割り込むと下げが厳しくなりそうである。その場合には、押し目買いは相当慎重に行うべきであろう。

銀相場は他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。その上で、時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。この点は常に変わらない。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券