先週のゴールド:小幅続伸の展開

金相場は小幅に続伸した。週初は、新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株の急拡大への恐怖と米連邦準備制度理事会(FRB)の早期利上げ見込みの間で板挟みの展開だった。S&P500とナスダック指数が最高値を更新したことから、金相場の上昇は抑えられた。

6月29日には米ドルが強含んだことを受け、一時4月15日以来の安値となる1,749.20を付けた。

米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は、「FRBがテーパリングを始めるためのインフレ目標に向けて一段と大きな前進を遂げた」と発言。金利引き上げとそれに先立つテーパリングの前倒しに向けた兆候の増加で、金に対する下落圧力が強まった。米雇用統計が予想を上回る内容となることを予測し、早めに手仕舞い売りに出たとの観測も聞かれた。

6月30日には安値拾いの買いなどに支えられて反発した。短期的な売られすぎ感や、米10年債利回りの低下も金利を生まない資産としての金の買いを促した。7月1日日も続伸。新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」をめぐる懸念がくすぶる中、買いが入った。

7月2日は米ドル安を背景に続伸。この日発表された米雇用統計は強めの内容だったが、失業率が若干上昇したことで米国債利回りが低下し、米ドルが下落したことが金相場を押し上げた。一時は6月18日以来の高値となる1,794.86ドルまで上昇した。

6月の米雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比85万人増と、市場予想を上回る伸びを示した。ただし、失業率は5月の5.8%から5.9%に上昇した。週末は1,786.79ドルで引けた。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・トラストの保有高は、6月25日の1,042.87トンから、7月2日には1,042.58トンに小幅減少した。投資家の買いは入らず、小幅な動きにとどまっている。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX金先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、6月29日時点で16万2,226枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,988枚縮小した。買いポジションが1,053枚増加したものの、売りポジションが5,041枚増加したことで、ネットポジションの買い越し幅が大幅に縮小した。これで売りポジションの増加は5週連続となっており、新規売りのポジションを積み増す動きが続いている。

円建て金相場も続伸した。前週と同様に、米ドル建て金価格の上昇と為替相場が円安基調で推移したことが下値を支えた。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:反発基調の持続性を確認する

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
-短期金利と米ドル相場の動向
-FRBの政策スタンス
-円建て金相場は一旦は反発へ

金相場は安値圏から反発している。6月29日には一時1,749.20ドルまで下落する場面もあったが、その後は反発に転じている。ひとまず底値を確認したように見えるが、今後はどの程度の反発力があるかを見ていくことになる。

米雇用統計には注目が集まっていたが、今回の内容は金市場にはポジティブだったと言える。もっとも、株式市場にも同様にポジティブに作用しており、株価も金価格も上昇するというセオリーとは違う動きになっている点は気になる。実際のところ、米雇用統計の見方はそれぞれである。強気と弱気両方の見方があり、それにより市場は上下動している。

ただし、7月2日は米金利低下・米ドル安となっており、市場はFRBによる早期の利上げはないとみているようである。それで金が買われたことをどのように考えるかだが、この材料だけを取り上げれば買いとの判断になったのだろう。

しかし、今後インフレ基調が強まった時には、金利上昇となり、逆に金は売られることを意味する。おかしな話だが、市場はその時々で都合のよい解釈をする傾向がある。教科書通りにはいかないのだが、最終的にインフレが強まれば金は買われるだろう。

しかし、そのような状況に至るまでには、かなり長い道のりが必要になりそうである。FRBによるテーパリングから利上げが実施されるまで、金相場は2年程度上値の重い状況が続くだろう。これは、2013年5月のテーパータントラムで市場が混乱し、その後2015年12月に利上げが実際に開始されるまで続いた。

今回は2023年に利上げが想定されている。FRB関係者の想定通りになるのであれば、これから2年間の金価格は上値の重い中での上下動の動きにとどまる可能性がある。

ただし、前回のテーパリング時には、利上げ後に金価格は本格的に上昇し始めている。今回もそのような展開を想定するのであれば、2023年までにいかに仕込んでおけるかがポイントになるだろう。そう考えておけば、目先の動きに振り回されることもない。急落などで安値を付けた時などを狙って、粛々と安値を拾っておくと良いだろう。

金利を生まない金は、不確実な時期に安全資産とも見なされるが、金利が上昇すると投資家の人気を失う傾向にある。新型コロナウイルスの変異株、デルタ株の感染拡大の懸念が広がってきており、安全資産との観点から金市場では買い入れが若干戻りつつある。

一方で、FRBの資産購入プログラム縮小に関する最近の一連の発言から、相場上昇が継続しづらい状況でもある。FRBが6月16日に金融緩和縮小時期の前倒しを示唆した際、金相場の日中下落率は5ヶ月間で最大となっている。それだけ、今の金市場は金利上昇に敏感になっている。

市場では、FRBの金融引き締めの見通しについて色々な見方がある。FRB当局者らの中でも、一部の地区連銀総裁たちは最近になって、各々の地区の経済実態を反映し、FRBが2021年内に資産購入の縮小を開始すべきとの考えを示唆する発言を行っている。

一方で、FRBの中核メンバーであるパウエル議長、ブレイナード理事、NY連銀のウィリアムズ総裁は、そのような見方を否定するかのような発言を行っている。地方の状況を強調する地区連銀総裁と、市場全体の安定を図りたい中核メンバーの中で、大きな感覚の差があることが浮き彫りになっている。立場の違いといえばそれまでだが、中核メンバーがいつまで経済実態を無視し続けられるのか、疑問も残る。今回の米雇用統計の内容が、FRBに量的緩和策の縮小や利上げ開始を急がせるとは考えにくい。その一方で、新型コロナウイルスの変異株「デルタ株」の感染拡大で、アジアと欧州の一部の国々で経済再開の動きが後退している。これらの懸念に加え、米国の幾つかの地域でワクチン接種率が伸び悩んでいることで、一部の投資家はFRBが利上げに慎重になっている可能性があり、これが金の支援材料になるとの見方もある。

目先は底打ちから上昇に転じる可能性もありそうだが、節目の1,800ドルやテクニカル的に重要な1,820ドル前後を明確に超えるかを見ていくことになるだろう。また引き続き、FRB関係者の発言や米経済指標の内容を注視しながら、金価格の動きを見ていくことになるだろう。

円建て金相場は一旦下げ止まった水準の6,300円を再び試すことになったものの、これを維持して反発して引けている。その後、これまで重かった6,400円を超えており、このまま上昇するかを見ていくことになる。

「6,300円割れから6,000円までの下落となれば、その流れの中で安値を買い下がっていくと良い」としていたが、その機会はなかったことになる。もっとも、上昇するところを無理に買う必要もない。すでに買っている向きは、押し目を待った方が賢明であろう。今後も長期的に金を保有することを目的に、ここからの安値をしっかりと拾っておくことを優先すると良いだろう。6,000円まで下げても資金が枯渇しないように、十分に分散した上で購入するようにしたい。

また、余裕資金がある向きや、まだ金を購入していない投資家は、徐々に積み増しても良いだろう。毎回の繰り返しだが、ポートフォリオのヘッジの観点からも、金を買い増しておくことは重要である。今後10年間は、金が極めて重要な資産になるとの見方は変わらない。過去の上昇ペースから見ると、2027年ごろまで金価格は長期的に上昇する可能性が高い。長期的な視点を失わず、押し目をしっかりと買っておくことが肝要である。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落した。週初の6月28日は一時1,117.50ドルまで上昇する場面がみられたものの、ここが高値となり、その後は一時1,049.50ドルまで急落する場面がみられた。その後は反発し、週末は1,090ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新の大口投機筋のポジションは、6月29日時点では1万4,744枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,804枚拡大した。買いポジションが1,689枚縮小したものの、売りポジションが3,493枚縮小したことで、ネットの買い越し幅が拡大した。ただし、新規買いが入っているわけではないことや、週末にかけて下げていることから、その後の投機筋が再び売り込んだのか、最新のデータで確認したい。

プラチナは戻りを試したものの、上値を抑えられている。テクニカル的に重要である1,100ドル水準を超えるかが重要なポイントになっている。今週はこれをまずは確認することになるだろう。これを超えると、1,170ドル前後を目指す動きに転じることができるだろう。

ただし、新規のファンダメンタルズ面での買い材料がないことを考えると、あくまでテクニカル的な動きにとどまる可能性もある。目先は1,050ドルを割り込まなければ、上昇の可能性は残るだろうが、最終的には投資家が買いを入れてくるかどうか次第の状況にあることは理解しておきたい。

もっとも、同じ白金族系メタルで、大きく調整していたパラジウムは安値から急激に値を戻している。6月18日には2,451ドルまで下げていたが、先週末には2,785ドルまで戻している。これがプラチナ相場の支援材料になるかを見極めることになるだろう。

また、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの動きにも注目しておきたい。対米ドルで下落基調が続いていたが、底打ちから反発に向かう可能性が出てきている。

米ドル相場が対新興国通貨で下落すれば、相場水準の訂正的な動きにつながる可能性はあるだろう。前回安値を下回らずに反発していることも、一旦上値を試しやすい地合いにつながっている可能性もある。ただし、今は楽観的にならずに、慎重に見ていきたいところである。

円建てプラチナ相場も一旦押したものの、反発している。4,100円を超えてくると、一旦は上向く可能性があるだろう。もっとも、まだまだ基調は弱い。4,100円を超えたとしても、100円ごとの上値が節目となっており、一気に上抜けていけるかは不透明である。

ただし、長期的にみれば、将来のインフレに備える上で金とともに買われやすいと考えられる。したがって、安値のうちに少しでもポジションを保有しておきたいとの考えに変わりはない。

プラチナは、金などに比べると流動性が低いため、値動きが激しくなりやすい。そのため、急落な下げになると慌てる向きも少なくないだろう。したがって、購入する際には、すべての資金を投入せず、徐々に買い下がるようにしたい。

相場の底値をあらかじめ予測することは不可能である。再び下落に転じるリスクもあるだろう。したがって、買いはゆっくりと行い、十分に時間的な分散を図るようにしたい。そうしておけば、将来の反発局面で収益化できる時がくるだろう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸した。6月29日には一時25.51ドルまで下落する場面もあったが、その後は値を戻し、7月1日には一時26.56ドルまで上昇した。週末は26.43ドルで引けた。

米商品先物取引委員会(CFTC)が公表するCOMEX銀先物市場における大口投機筋のポジションは、6月29日時点で4万1,477枚の買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,606枚拡大した。買いポジションが1,986枚減少し、売りポジションが3,592枚減少した。手仕舞い売りが出る一方で、買戻しも入っており、ポジション全体が縮小している。

銀相場は下げ渋る中、徐々に値を戻している。金やプラチナに比べると、下げは小さくなったこともあり、反発に転じる可能性が高いようにも見える。テクニカル的に重要な26.60ドルから26.80ドル前後の水準を超えるかを確認することになる。これらの水準を超えていくと、基調は大きく上向くことになりそうである。

もっとも、このまま上昇できるかは不透明である。米ドルの動きがポイントになるだろう。金相場の動向と併せてみておくことが肝要である。一方で、戻りがいっぱいとなれば、再び下値を試す可能性もある。25ドル台半ばを割り込み、安値を更新するようだと、回復基調は完全に崩れることになる。その可能性は今は高くないとみているが、注意だけはしておきたい。

いずれにしても、銀独自の動きにはなりづらく、引き続き金などの動きにつれる展開になるだろう。また、今は比較的ボラティリティが落ち着いている。しかし、銀相場は本来はボラティリティが高い。したがって、今の値動きが小さい展開は、そう長くは続かないと考えておきたい。

円建て銀相場は徐々に下値を切り上げ、順調に回復している。下値も切り上がっており、まずは上値を試す展開になりそうな動きに見える。96円を超えると上昇基調への転換の可能性が高まりそうである。このまま上げていくようであれば、慎重に買い進めても良さそうである。逆に92円を割り込むと急落となる可能性もある。この点には要注意である。銀相場は下げに転じると大きくなる傾向がある。その場合、押し目買いは慎重に行うべきであろう。

また銀相場は、他の貴金属と比較してボラティリティが高いため、保有量は金の3分の1あるいはそれ以下に抑えたほうが良いだろう。その上で、時間と資金を分散し、ポジションを構築していくことが肝要である。この点は常に変わらない。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券